家で過ごすことが増えたいま、
充電のために時間をつかいたいと
思っていらっしゃる方が
増えているのではないかと思います。
そんなときのオススメはもちろん、
ほぼ日の学校 オンライン・クラスですが、
それ以外にも読書や映画鑑賞の
幅を広げてみたいとお考えの方は
少なくないと思います。
本の虫である学校長が読んでいる本は
「ほぼ日の学校長だより」
いつもご覧いただいている通りですが、
学校長の他にも、学校チームには
本好き・映画好きが集まっています。

オンライン・クラスの補助線になるような本、
まだ講座にはなっていないけれど、
一度は読みたい、読み返したい古典名作、
お子様といっしょに楽しみたい映画や絵本、
気分転換に読みたいエンターテインメントなど
さまざまな作品をご紹介していきたいと思っています。
「なんかおもしろいものないかなー」と思ったときの
参考にしていただけたら幸いです。
学校チームのメンバーが
それぞれオススメの作品を
不定期に更新していきます。
どうぞよろしくおつきあいください。

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no.21

映画『リメンバー・ミー』

「非接触」で通じる愛に学びたい。

  


『リメンバー・ミー』
2000年韓国(日本公開2001年) 
キム・ジョングオン監督作品
出演:キム・ハヌル/ユ・ジテ   

「愛しているのに離れている、
愛しているから離れている」
なんとも歯がゆいけれど、
今タイムリーな愛のカタチ。
非接触系の愛のカタチ、第2弾です。

『イル・マーレと同じ2000年公開。
また古い映画ですいません。

2000年前後のものに、
好きな映画がなぜか多いのです。
『八月のクリスマス』(98)、
『シュリ』(99)、
『JSA』(2000)、
『ペパーミントキャンディ』(2000)、
『猟奇的な彼女』(2001)など。

韓国は、32年間も続いた軍事政権が
93年に終わったものの、
97年には、「IMF危機」といわれる
国家破産を経験しました。
2000年前後というのは、
国民が経済破綻のみならず、
国家として失った自信を
取り戻す過程でもあったのです。

1998年から2003年までの大統領は、
金大中さん。
韓国ではタブーであった日本の大衆文化の
開放をおこなった人でもあります。

今思えば、この時代の日韓関係は良かったな〜。
今のように、日本の劇場で韓国映画が
商業的に上映されるようになったのは、
『シュリ』ぐらいからかもしれません。
そういえば、空前の「ヨン様ブーム」を生んだ
『冬のソナタ』も、日本のテレビ放映開始は
2003年でした。そんな時の映画です。

『リメンバー・ミー』も、前回と同じく、
タイムパラドックスみたいな映画です。
韓国には多いのです。僕も好きですけど。

この映画、実に切ない、静かな恋の物語です。

ひょんなことから、
アマチュア無線の同好会の部室から、
壊れた無線機をもらってしまい、
家に持ち帰ることになった女子大学生
ソ・ウン(キム・ハヌル)。その日は皆既日食の夜。
突然、無線機から交信を求める男の声がする。
男子大学生チ・イン(ユ・ジテ)です。
やりとりしているうちに同じ大学の学生とわかり、
翌日、キャンパスの時計台の前で
初心者の彼女に無線の入門書を貸す約束をする。
待ち合わせの場所で彼女は待つ。
しかし彼は来ない。
彼も待つ。しかし彼女は来ない。その夜、
二人は互いを責めるのだが、なぜか噛み合わない。
それから何夜か、混乱した交信が続くのだが、
やがて、二人は一つの結論に至る。
彼女は1979年、彼は2000年の大学生だと。
二人は、21年の時空を越えた関係なのです。

彼女は軍隊を除隊したばかりの先輩に
ドキドキするような憧れを抱いている。
そんな彼女の気持ちを知ってか知らいでか、
先輩と彼女のデートが始まる。
やがて、彼女の憧れは
一途な恋愛感情に変わっていきます。
そんな思いは誰にも打ち明けられないが、
21年も離れているチ・インになら話せる。
古風なまでにピュアで、ひたむきに、
先輩を愛するソ・ウンに彼は魅了されていく。

主演のキム・ハヌルは、純情な
70年代女性を好演。
どアップの眩しいこと。
ユ・ジテは、めちゃイケメンではないけれど、
優しさと包容力を持つ、笑顔のいい俳優だ。

そしてある時、彼は「そういえば、
僕の両親も僕たちと同じ大学の卒業生なんです!
確か、あなたと同じ学年では?!」と、
その奇縁を小躍りするように喜ぶのだが、
その事実が、彼女の恋を
ある結末に導いていく……

1979年、韓国では、軍事独裁政権に反対する
民主化運動が全土で燃え盛っていました。
戒厳令が発布され、夜間0時から朝4時まで
外出禁止でした。今でいう、ロックダウンですね。
しかし、ソ・ウンはそんな状況に目もくれず、
先輩への想いを募らせていたのです。
当時の学生たちの躍動は、彼女の目には
ただの風景でしかありませんでした。
同時代のことだけど、
どこか遠くの時代の出来事のように。
2000年の大学生、チ・インからすれば、
親たちの青春時代、20年以上前は
とてつもない異世界に見えたでしょう。

でも、人を想う、愛することの
本質は変わりません。
21年もの歳月、時空を超えてでも
伝わる愛情があり、
わずか数ヶ月の思いつめた恋が
永遠の香りを失わないことがある。
胸がじんわり熱くなるラストシーンは、
そんなことを教えてくれます。

会いたい人に会えない、手が届かない、
うまく想いが伝えられない……
今、そんな状況があるかもしれません。
でも、時間も、距離も乗り越える愛はある。
切なさのなかに、
そんな励ましも込められた映画です。

(つづく)

2020-05-15-FRI

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