古典を学ぶ場「ほぼ日の学校」の学校長の河野通和は、
もともとは編集者、そして大の本好き。
あらゆるジャンルの本を読み尽くしてきました。
その、学校長がコツコツ口説いてきた本屋さん、
この場限りでオープンする本屋さんなど
「おもしろい本屋さん」8店舗が、
2月22日〜24日の3日間だけこの場にあつまります。
しかも、日替わりママの「バー・X」も開店。

このイベントの詳細と、
「おもしろい本屋さん」の1軒ずつを、
これまた本屋好きの作家の
浅生鴨さんとご紹介していきます。
紹介の順番は取材の順番です。

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no.7 ミシマ社の本屋さん

本、展示、たべもの、お坊さん。

「双子のライオン堂」のその次は、
「ミシマ社の本屋さん」のご紹介です。
場所は、自由が丘。
住所を頼りにてくてくと冬の町を歩く三人組。
(浅生鴨さん、学校チームのフジーとモギ)
間違った角をまがったりなどして、
なかなか到着できません。
看板を見つけたときには、
すでに、浅生鴨さんがぐったりしておられて。

というのは、ちょっと作りました。
迷ったのは本当です。
社屋は、一軒家。
昭和のあの頃に友達の家に
遊びに来た感があふれていました。
もともとは、下宿屋さんだった建物だそうで、
とても日当たりの良い会議室にお通しいただきました。
ポカポカしていて、うららかな昼下がりで、
「お昼寝してもいいですか!」と思いました。

ミシマ社は、2006年にはじまった出版社さん。
通常の出版社とは違って、
本屋さんと直接取り引きをされていたり、
社内に編集プロダクションの機能をもっていたり、
京都で本屋さんをオープンしていたり、
いろいろな試みをされています。
そして、学校長・河野通和の著作
『言葉はこうして生き残った』
ミシマ社刊でございます。
今回の取材は、
営業チームの池畑索季(いけはたもとき)さんに
お話をお伺いしてきました。

「ミシマ社」Tシャツを着ている営業チームの池畑さん。 「ミシマ社」Tシャツを着ている営業チームの池畑さん。

この度は、ありがとうございます。
なぜ、OKをしてくださったのでしょうか?
池畑
「ほぼ日の学校」の校長先生に‥‥
だまされましたか?
(くいぎみに突っ込む鴨さん)
池畑
いえいえいえいえ(笑)。
河野さんには、ミシマ社からも本を出していただいていて、
お世話になっているのはもちろんなのですが。
でも、それだけではなくて、
「ほぼ日」を読んでいるお客さんたちは、
本だけに興味があるのではなくて、
広くアンテナをひろげているのではないかなと思っています。
なので、いつもの「ブックフェス」のようなイベントでは
お会いできない方々に会えるチャンスなんではないかと。
正直なところを言うと、
僕らも、どんなお客さんが来てくれるのかが
ちゃんとわかっているわけではないんです。
イベントは、ほぼ日の読者の方とは
親和性があるかもしれないのですが、
PARCOに遊びにきているお客さんが、
ふらっと立ち寄ってくださったときに、
どんな本が受けるのかということは、本当に未知数です。
そんな雲をつかむような状況ですが、
持っていく本は、
もう決めておられるのですか?
池畑
本のほうは、既刊130冊余りのなかから選んでいくんですが、
どれを、ということはまだ決められていません。
この取材のあとで、スペースなどを詳しくお聞きして、
みんなで考えようと思っています。
決まっているのは、本以外のことで。
これです。

『ちゃぶ台』
池畑
こちらは、ミシマ社の雑誌のシリーズです。
代表の三島邦弘(みしまくにひろ)自身が、
取材先を探してくるところから、
ほとんど一人でやっていまして、
作家さんなどのいわゆる書き手の方々からの寄稿のほかに、
創刊のきっかけにもなった
周防大島の農家さんや生産者さんには毎回、
取材やご寄稿などで登場していただいています。
これ、僕も読んでいると、どうしても紹介されているものを
食べてみたくなっちゃうんです。
お客さんにもぜひ食べてもらいたくて。
毎号登場している養蜂家・内田健太郎さんのはちみつや、
農家兼バンドマン兼僧侶の
中村明珍さんのところ(寄り道バザール)
お野菜なんかも持っていこうと思っています。
それは、おもしろいですね!
本以外を持ってこられるお店は、
次に紹介する、「十二国記屋」さんが
絵を持ってこられるんですが、他には?
フジー
双子のライオン堂さんも「お米」とおっしゃってました。
お知り合いが作っているというやつかな?
そういえば、僕は昨日店主の竹田くんと一緒だったんですが、
「これいいかも」といって、
ポストカードを仕入れているのもみました。
他にも、パルコに持っていく本をゴソゴソと仕入れをしていました。
僕は一部をみましたが、
今回もとんがった選書をしてくれると思います。
池畑
以前は、竹田さんはうちにも直接仕入れにきてくれていました。
そうなんですね!
あ、ごめんなさい、話がそれちゃった。
本以外のものをもってきてくださるの、いいですね。
お祭り感がでてきます。
ところで、僕はミシマ社は京都にあると思っていましたので、
東京にもオフィスがあるのを初めて知りました。
池畑
京都の出版社というイメージが
強くなっているかもしれないですね。
でも、東京が最初なんですよ。
13年前から自由が丘にあります。
そうだったんですね。全然存じ上げませんでした。
ここ4〜5年、一人でやっているような小さな出版社が
いくつもでてきて話題になっているように感じるんですが、
僕はその筆頭がミシマ社じゃないかと思うんですよ。

池畑
いやいやいや。ありがとうございます。
ただ、ミシマ社も小さくなくなっている感じがありまして。
年間5、6冊の刊行ペースが、気づけば月に1冊は出しています。
ちょうど14年目で、メンバーは14人。
刊行点数と創業年数とスタッフ数がなぜかそろっているんですね。
会社を大きくしない、といいながら結果的に人数は増えています。
小さな出版社にくくっていただいてありがたいと思う反面、
そろそろ「新米です」という顔もしていられないなと
思っているところです。
もう、中堅。
池畑
ぜんぜん! そこまででは全然ないのですが、
ルーキーだから、自分たちのことだけを一生懸命にやっていれば
温かく見守ってもらえる、という段階では
もうなくなっているのかなと思います。
実はいま、「一冊!取引所」という
新しいシステムを立ち上げようとしています。
まさに、いま話題に出た小さな出版社さんと書店さんの
取引を支援するようなものなのです。
いまも、出版社を立ち上げたいので話を聞かせてください、
ということで訪ねてきてくださる方がいるんですが、
少人数でやっておられるところは、
営業に人も時間もとれないということで
困っている方が多いなと感じます。
書店さんからしても、小さな出版社1社1社と
個別にやりとりするのは大変です。
そこで、「一冊!取引所」のサイトを使って、
それぞれの出版社が本の情報や取引条件を登録すれば、
書店さんはそこ一か所で情報を得て、
ほしい本を注文できるという仕組みをつくろうとしています。
ふむふむ。
池畑
新しく出版社をはじめたいという人も、
本を出したいという人も、敷居が下がるのではないかと考えています。
本を作れる人はいるけど、
売るところまで考えられてないということがありますからね。
池畑
営業ができないから、
本のことが書店さんに伝わってなくて、
仕入れてもらえないという状況は、もったいなさすぎますし、
書店さんも能動的に選書・仕入れができる仕組みがあると
本棚の自由や書店自体のおもしろみも
変わっていくのではないでしょうか。
14年目にはいって、
自分たちのことだけじゃなくて、
周りと一緒になってやりたいということが出てきました。
目下、準備中なんです。

うーん。すごい。
ほかにもありますよね?
きっと。
池畑
はい。
去年たちあげた、
「ちいさいミシマ社」という出版レーベルがあります。
これは、出版社として少部数初版の本をもっと出したかったこと、
そしてもうひとつには本屋さんの利幅を少しでも増やそう
という思いから生まれたレーベルです。
本って、どうも値段の相場がきまっていて、
そこにおさめるために、
必要以上に部数を多く刷らなければならないということがあります。
ちいさいミシマ社では特に、多少価格を上げてでも、
大量生産・大量消費ではない本づくりをしていきたいんです。
あ、僕の同人誌にも書いてくれた
高橋久美子さんもここから本を出されていますね。

池畑
そうなんですよ。
『今夜 凶暴だから わたし』ですね。
ちなみにこのレーベルでは、
本屋さんへの卸し掛率も55%にして、
通常流通している本の倍以上の利幅が
本屋さんにある設計にしています。
「薄利多売」が成り立たなくなって潰れる本屋さんが増えるいま、
きちんと選書して、手をかけて1冊売れば、
それで成り立つ形へとシフトすることが必要なのかなと思います。
このレーベルが、少しでもそのきっかけになればと思ってやっています。
その分、うちの利幅はちいさくなるのですが…
イベントでは直接自分たちで手売りするので、
たくさん売りたいです!(笑)
相変わらずおもしろいことをかんがえている、
ミシマ社だ!
池畑
(フジーに向かって)
あのー。会場で、壁ってもらえますか?
実はいまお話したような、
本のことを紹介できるような展示をしたいのです。
フジー
リクエストをいただいたら、壁を出します。
いえ、壁は出すことはできませんので、
壁が使える場所にお店を出していただけるように
配置します。
池畑
ぜひ、お願いします。
それから。
それから!
池畑
イベント当日は著者さんや関係者さんにもきていただいて、
楽しくミニトークなどしていただこうと。
先ほどの高橋久美子さん、代表の三島、
そして学校長の河野通和さんにも…。
ちょうど、新刊が2月20日に発売になる白川密成さんにも。
「坊さん。」だ。
池畑
はい、「ほぼ日」さんでの連載がもとになった
密成さんの坊さん」シリーズの、
3冊目、『坊さん、ぼーっとする。』です。
密成さんにははるばる四国からお越しいただき、
2月22日は会場でいろいろなことをしていただく予定です。
あ! もしかして人生相談ですか?
ちょっとお聞きしていたのですが。
池畑
はい。坊さんの人生相談もやる予定です。
時間制限付き、相談料の代わりに
本をお買い上げいただければ。
お坊さんが会場にいるって、なんかいいですよね。
僕もコスプレしましょうか。
白衣を着て医者になるとか。

「鴨さん、それは違う。」と全員が思った。 「鴨さん、それは違う。」と全員が思った。

池畑
‥‥‥。
河野さんと密成さんのトークイベントとかもありですか?
フジー
いいですね。
(河野の都合はとりあえずおいておくフジー)
当日遊びにきてくれる著者の方とか
書店の関係者さんが結構いると思うんですよ。
そこで話がまとまれば、その場でイベントとかも
いいんじゃないでしょうか。
フジー
いいですね。
(段取りはあとで考えるフジー)
つい、ながくなってしまいました。
と、真面目に出版のことを考えているミシマ社ですが、
こと、持ってくる本は、出版のことの本ではないわけです!
池畑
三島が「おもろくやろう」というタイプなので!
たのしみにしています!

そうして、3人組はミシマ社を後にしました。
帰るときに、間違って曲がった道を
ただ真っすぐ行けばよかったということがわかって
ちょっと疲れがどっとでました。

まだ、くたびれている場合ではないので、
次に向かいましょう。
次は、神楽坂の新潮社にいくのです!

ミシマ社さんのトークイベント

***2月22日(土)***

「坊さん」白川密成さんによる
新刊記念・30分ミニ対談開催!

◆13:00~13:30
白川密成(栄福寺住職)×河野学校長

◆16:00~16:30
白川密成(栄福寺住職)×高橋久美子(作家・作詞家)

************

※いずれもトーク終了後、サイン会予定
参加無料です。

~~ミシマ社さんの日替わりお楽しみ企画~~

日替わりでいろいろなお楽しみ企画を予定しています!

***毎日実施!***

★ネコの日プレゼント企画!

2.22はネコの日!
ということで、2月22日~24日の会期中、
『ネコリンピック』(益田ミリ/作、平澤一平/絵)
お買い上げの方の中から、
くじ引きで毎日1名様
特製トートバッグプレゼント。
*4月刊行予定の2コマ漫画『今日のガッちゃん(仮)』
(益田ミリ/作、平澤一平/絵)の
オリジナルトートバッグです。
*くじは各日先着10名様限定、なくなり次第終了です。

***2月22(土)***

★ポップな坊さんの3分お悩み相談

2月20日発売の新刊『坊さん、ぼーっとする。』著者の
白川密成さん(栄福寺 住職)の
3分お悩み相談を開催します!
*参加条件:白川密成さん著書をお買い上げの方
*開催時間:14~16時頃を予定。
当日ミシマ社Twitterにてお知らせいたします!

***2月23(日)***

★ちゃぶ台で新刊ゲラ試し読み

まだ発売前のミシマ社の新刊のゲラが、
ここ限定で読めちゃう!?

***2月24(月)***

★ちゃぶ台からの贈り物!
周防大島の恵みをプレゼント!

『ミシマ社の雑誌 ちゃぶ台』シリーズを
お買い上げの方の中から、
くじ引きで3名様に周防大島産のみかんジュースを
1本プレゼント!
*くじは先着30名様限定、
なくなり次第終了です。

ミシマ社さんのwebマガジンもぜひご覧ください。

(つづく。次回は神楽坂の新潮社へ!「十二国記屋」です。)

2020-02-12-WED

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