ほぼ日の学校では、いま
「橋本治をリシャッフルする」という
講座を開いています。
『桃尻娘』で颯爽とデビューし、
『窯変 源氏物語』や『双調 平家物語』など
古典を独自の解釈で新たな作品にした
不世出の作家、橋本治さん。
残念なことに昨年1月になくなってしまい、
命日は、著作『アストロモモンガ』にちなんで
「ももんが忌」と名付けられました。
私たちは、なぜいま、
橋本治さんの足跡を辿ろうと思ったか。
詳しくは、講座をはじめるときの予告
「橋本治を忘れない」を
読んでいただけるとうれしいです。
ほぼ日の学校長・河野をはじめ、多くの人が
「お手本」と見上げる橋本治さんが、
いちばん「自然な顔」を見せた、
とても信頼する写真家がいます。
永年の友人でもある、おおくぼひさこさん。
予告読み物でも、作家の藤野千夜さんや
「電話番」の塚原一郎さん、
糸井重里、学校長の河野と並んで
橋本さんの大切な思い出を聞かせてくださいました。
そのインタビューの終わりに、
おおくぼさんはこう語っていました。
「『あの日の橋本治くん』の姿を
きちんとまとめないといけないな……」
そしてその言葉のとおり、
「あの日の橋本くん」の姿を封じ込めた
おおくぼさんの新しい写真集が出来ました。
発売開始は3月25日(水)。
橋本治さんの72回目の誕生日です。
多彩な作品を残し、今も私たちの心を揺さぶり続ける
橋本治さんという人が、たしかにこの世にいてくれた。
その幸せを味わえる写真集です。
とびきりお洒落でお茶目な橋本さんをみつけてください。
写真集『あの日の橋本くん』
B5版 全48ページ
限定300部(一部は6月12日からTOBICHI2で行う写真展の際に販売します)
定価2200円(税込)
おおくぼひさこさんのサイン入りでお届けします。
ストア購入特典
写真集を購入いただいた方に、
イラストレーター・長場雄さんの作品をあしらった
ほぼ日の学校特製ポストカード3枚セットを
おつけします。
青山学院大学在学中、写真研究部に籍を置く。卒業と同時に、管洋志氏のアシスタントとなる。同年、『カメラ毎日』に作品を掲載。エディトリアル、レコードジャケットなど手掛けるようになる。1985年、自身のオフィス「プラステン」を設立。主な写真集に『THE RC SUCCESSION』『HORIZON』『写真集窯変源氏』『PASSING』などがある。写真集『DARK MOON』には橋本治さんが文章を添えている。
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「そのまんまでいい」と言ってくれる写真
被写体としての橋本さんは、おおくぼさんについて、
『橋本治の明星的大青春』の中で
こんなことを書いていました。
「彼女と一緒に仕事できるのはうれしかったですよ。
(中略)
シリーズの写真で10何カットか撮って、
それはカメラ雑誌にも載ったんだけど、
写真見て、すごくうれしかった。
『自分がいたい世界はここだ』というか、
『自分が生きてるってことは〝こういうことだ〟って
言えるようにしていたいな』と思ってた、その感じが
そのまま写真にあったから。
『プロだからきれいに撮ってくれた』っていうんじゃなくて、
『あなたはそのまんまでいいのよ』って
写真が言ってくれているような気がしてね。
(中略)
『そのまんまの自分』とか、
『自然な自分』とかっていうのは、
自分ひとりの頭の中にはあるけど、でも、
自分ひとりじゃ作れないのよ。
人間て不思議なもんで、
『自分を自然にしてくれる他人』がいる時に、
一番自然になるの。
中学までの自分はそうだったから、
そのこと思い出して、すごく自然になれた」『パンセV 友たちよ!』という本では、
おおくぼさんとの対談をふたつ冒頭に掲げ、
おおくぼさんのことを、こう紹介しています。
「この本に出て来る人間の中でいちばん古いつきあい」
さらに橋本さんは、こうも書いています。
「おおくぼさんと一緒になんかやってるのは楽しい。
基本的には文化祭のノリだから。
写真展の会場構成やった時は、
受付から掃除までやってしまった」
実際、おおくぼさんが写真展をやるときは、
橋本さんがやってきて、写真の並べ方を助言したり、
トークに登壇したり、
いつも手を貸してくれたそうです。
おおくぼさんの写真集『DARK MOON』は、
美しくも妖しい花の写真に、橋本さんが
妖艶な詩のような、物語のような言葉を添えた共作です。今回の写真集の編集を進めながら、
おおくぼさんは改めて橋本さんの「不在」を
痛切に感じているようでした。
いつも編集を助けて、言葉を添えてくれた
その人が……………………、いない。でも、この写真集ができるまでの
お話をうかがっていると、
不思議とそこには、橋本治さんの気配があるのです。
「橋本くんがみなさんを集めてくれた」「あの日の橋本くん」の姿をまとめよう。
そう思ったおおくぼさんは、
まず、橋本事務所を支えつづけた
塚原一郎さんに声をかけました。
写真をずらりと並べてながめていると、
塚原さんが言ったそうです。
「これは、何とかなるんじゃないかなぁ」同じ頃、橋本さんの命日「ももんが忌」にあわせた
「橋本治さんを偲ぶ会」の準備のために、
おおくぼさんに写真を借りに来た
新潮社の編集者・米谷一志さんが
手弁当で編集を手伝ってくれることになりました。
おおくぼさんは笑います。
「どうして助けてくれるのか、わからないんです」
仕事ではないし、メリットがあるわけでもないから。最初は、写真展の図録を作るのが精一杯かなと
思っていたおおくぼさんでしたが、
あれこれ写真を並べかえているうちに、
やっぱりきちんとした写真集を作りたくなってきました。
すると、米谷さんが、ブックデザイナーの
日下潤一さんを紹介してくれました。
『芸術新潮』のアートディレクションをはじめ
たくさんの本を生み出してきた大御所です。
橋本治さんの偉業『ひらがな日本美術史』の
装丁を担当したのも日下さんでした。
そして、おおくぼさんの写真データを
整えてくれたのが、新潮社写真部の広瀬達郎さん。
芸術的な写真を撮る凄腕カメラマンです。おおくぼさんは、戸惑い気味にこう言います。
「ほんとに、こんなすごい人たちが
どうして手伝ってくれたのか、よくわからないんです。
やっぱり、橋本くんがみなさんを集めてくれたのかな」この小さな写真集には、
おおくぼさんの作品のみならず、
橋本治さんの人間的魅力に引き寄せられた
いくつもの才能がのっかっているのです。「あの日」、たしかにそこにいた橋本治さん。
その姿を「ありのまま」に捉えたおおくぼさん。
さらに、おおくぼさんと橋本さんを慕う人々の
センスが凝縮されたこの一冊を、
橋本治さんの著作とともに、
ぜひ、お手元に置いてください。
きっと、橋本さんという作家と
その作品をより深く知る
手がかりになる一冊となるはずです。
限定300部。
おおくぼさんの直筆サイン入りでお届けします。おおくぼひさこさんの写真展「あの日の橋本くん」は
6月12日(金)~21日(日)TOBICHI2にて開催予定です。
(当初、3月25日からの開催を予定していましたが、新型ウイルス感染拡大防止のため、延期しました)