占い師のしいたけ.さんとの対談で
「みかんの仲買人になりたい」と
話をされていた、写真家の幡野広志さん。
ならば‥‥ということで、
今回、渋谷PARCO8階でおこなわれる
「ほぼ日のおやつ展。」で
「みかん屋 ハタノ」を
開いていただくことになりました。
扱うのはもちろん、
幡野さんの大好物である「愛果28号」。
愛媛から直接送っていただき、販売します。
このみかんの魅力について、
幡野さんにくわしく話を聞きました。
さぁ「みかん屋 ハタノ」へ、いらっしゃい!
-
●「愛果(あいか)28号」とは?
愛媛県で栽培されているみかんの品種のひとつ。
正式名称は「愛媛果試第28号」。
南香(母)×天草(父)の掛け合わせ。
食べた瞬間にわかる、びっくりするおいしさ。
JA全農えひめでの選別で見た目・色・かたち・
甘さなどのチェックに合格したものは
「紅まどんな」と呼ばれます。
今回は、幡野さんが愛媛を旅して見つけた
柑橘専門直売所「一国屋」さんから
直接仕入れさせていただき、選りすぐりの
おいしい「愛果28号」を販売します。
(JAのチェックを通さず、直接仕入れたものを
メインに扱うので「愛果28号のお店」です。
とはいえ少しですが「紅まどんな」も並びます)撮影:幡野広志(こちらの写真のみ。他はほぼ日が撮影)
●このみかんの魅力について、幡野さんに聞きました。- ──
- 幡野さんと「紅まどんな(愛果28号)」の
出会いについて教えてください。
- 幡野
- いちばん最初は、2年前の真冬に家族で行った
北海道の阿寒湖です。
息子が「アイス食べたいな」と言い出して、
地元のセイコーマートに行ったら
みかんもあったので、一緒に買いました。
気温がマイナス15度とか20度とかで、
冷凍庫のような寒さなんですね。
息子は外でアイスを食べてたんですけど、
子どもだし、スプーンが入らないんです。
そんな場所で手袋をはずして剥いてたんですけど、
「紅まどんな」の皮って
すごく剥きにくいんですよ(笑)。
寒すぎて、みかんがだんだん固まっていくんです。
そうやって、すごく苦しい思いをしながら
剥いて食べたら
「‥‥すげぇおいしい」と思って。
びっくりして
「なんだ、このみかん」と検索したら
「紅まどんな」ということがわかって、
そこから好きになっちゃったんです。
- ──
- そういう環境のすばらしいところで
食べるとおいしいっていう、
それを超えたものがあったと。
- 幡野
- もう衝撃的でしたよ。
それが2年前の冬なんですが、
そのときはシーズンが終わっていたので、
翌年11月頃に、愛媛に行きました。
撮影で中四国に行くことがあったので、
みかんのために愛媛で3日間ぐらい滞在して、
たくさん買いました。
それで、すごい、どハマりしました。
- ──
- わざわざみかんのために訪れた(笑)。
- 幡野
- はい。東京だと値段が上がりすぎて、
高級デパートでは1個3,000円ぐらいに
なったという話もあって、交通費も考えると
「もう愛媛に行って食べたほうが安いな」と。 - で、行ったときに、たくさん食べて勉強しました。
味の違い。みかん自体のこと。
生産者の人にはそんなに会えなかったですが、
JAの販売者の方にはけっこう話を聞きました。
瀬戸内の離島などで作ってて、
西日があたる島の西側と朝日があたる東側では、
味が違うらしいんです。
潮風の当たり方でも変わると。
だから同じ「紅まどんな」でも、
生産者さんによって、味が全然違うんです。
1日12個くらい食べてましたけど、
たしかに違いました。
- ──
- それ、仕事じゃないですよね?
- 幡野
- じゃないですね、趣味ですね(笑)。
そのぐらい魅力があるんです。 - ぼく、病気になってから
「食べたことがないものを食べよう」
と思っているんですけど、
最初は珍味系の燕の巣のスープとかを
よく飲んでたんです。
それはごく少量で5,000円とかですけど
「別にそんなにおいしくないな」と思ってて、
そういうものばっかりだったんです。 - だけど「紅まどんな」は正直、
食べられていちばん良かったものですね。
もし高校生とかで出会ってたら、
人生が変わってたかもしれない。
- ──
- そっちの道に行ったかもしれない(笑)。
- 幡野
- 可能性、全然ありますね。
これはほんと、早いうちに
食べておけばよかったと思いましたね。
- ──
- 幡野さん、もともと柑橘系がお好きなんですか?
- 幡野
- いえ、別にそんなに好きじゃないんです。
みかん自体は日常的に食べてましたけど、
特にこれといった思い入れもなくて。 - だけど、いちごや梨の違いって、
そんなにわからないんですけど、
みかんの違いって、劇的にわかりますから。 - 愛媛では「せとか」も人気ですけど、
ぼくは圧倒的に「紅まどんな」のほうが
おいしいと思いますね。
ただ、剥きづらい。
そこが弱点なんですけど。
- ──
- 「紅まどんな」のおいしさを言葉にすると、
どんな感じですか?
- 幡野
- よく「ゼリーみたいな」と言われますけど、
ぼくは全然そうは思わないんですよね。
「ゼリーみたいなみかん」なら、
ゼリーを食べればいいじゃないですか。
そうじゃなくて、やっぱり「紅まどんな」は
「紅まどんな」のおいしさなんですよ。
- ──
- 今日はここに、スタッフがネット通販や
東京のスーパーでたまたま見つけて買ってきた
「紅まどんな」がありますが‥‥。
- 幡野
- (ひとつずつじっくり眺めたり、
持ったりしたあとで)
たぶん、これがいちばんウマいです。
たぶんですよ? たぶんたぶん。
- ──
- なんでしょう、この「紅まどんな」鑑定(笑)。
いま、どこを見てたんですか?
- 幡野
- どこだろう、かたちも色も‥‥
でもね、手触りですよ、いちばん。
持ったときに違うの、わかりません?
- ──
- (持ってみて)
うーん、そんなにわからないです(笑)。
- 幡野
- 愛媛に行けばわかりますよ。
単価が高いから、買うときにけっこう
慎重になるんです。
- ──
- ああ、わかるようになりたい。
- 幡野
- そこは「一国屋」の大将に聞くのが
いちばんわかりやすいです。
もう見わけ方がすごいんです。
今回はそのお店を通じて、
仕入れさせていただくんですけど、信頼できます。
愛媛の柑橘専門店です。
- ──
- つまり今回は、そのお店のかたに教えてもらった、
おいしい「愛果28号」を販売するという。
- 幡野
- そうですね。
一国屋さん、ぼくが知っている中では、
いちばんいい店だと思います。
大将のみかん愛がすごいんですよ。 - 去年、2、3月にも愛媛に行ったんですけど、
時期が遅くて、もう普通のところでは
売ってなかったんです。
それで「ここだったらあるかも」と
教えてもらったのが、一国屋さんで。
独自のルートでちょっと残ってたものを
売ってもらったんですけど、
それが本当においしかったんです。
- ──
- じゃあ、せっかくなので、実際に食べてみましょうか。
イベントで並ぶものとはまた別ですが、
「愛果28号」の味を紹介するという意味でも。
- 幡野
- そうですね。
たしか、おすすめの切り方があるんですけど‥‥。
- ──
- 調べたら「スマイルカット」というのが
出てきました。
横半分に切ったあと、さらに4~6等分でカット。
笑ってるみたいな見た目になる。
- 一同
- わぁー、きれい!
- 幡野
- きれいですよね。皮の薄さとかも、
すごくきれいだなと思います。
みずみずしさがすごい。あ、いい香りする~。
- ──
- じゃあまずは、この場で唯一
「紅まどんな」を食べたことがない、
ほぼ日の山下から。
- 山下(ほぼ日)
- では、ぼくからいただきます。
‥‥んん!! - なるほど、これを「ゼリーみたいだ」と
言いたい気持ちはわかります。
これまで食べてきたみかんとは
まったく違うものですね。
これは食べたことがない。
ジュックジュクですね。
- 幡野
- 食感、全然違いますよね。
- 山下(ほぼ日)
- 違います。おいしいです。
- ──
- では、幡野さんもぜひ。
せっかくなので、自分の中のランクで
どのくらいかを教えてください。
- 幡野
- 本気で言っちゃっていいんですか?(笑)
- ──
- もちろんです。正直に。
- 幡野
- ではぼくも‥‥いや、これランク高い。高い。
うまいです、うまいです。うまい。
うまいうまい。うまーい。
みなさんもぜひ。
- ──
- おいしい。香りもすごい。
- ──
- あまーいみかんって、
甘さがバーンとくるじゃないですか。
だけどこれは酸味のバランスもいいですね。
- ──
- 酸味の部分がオレンジに近い。
- ──
- ちょっと酸味のあるものって、
体が抵抗するような感じですけど、
これは体ごと迎えにいく感じがします。
- 幡野
- ‥‥いやー、おいしいですよねえ、
おいしい。
- ──
- ほかのものも食べてみましょうか。
それぞれ味が違うんですかね。
切っていきます。
これは中身が詰まってる感じがします。
お‥‥フォトジェニック。
- 幡野
- キレイですよね。
誰がデザインしたんだっていうぐらい。
- ──
- これね、「ぜひよく切れる包丁で」とは
言いたいですね。潰れちゃうから。
- 幡野
- ぼく、愛媛に行くときは、
家から包丁を持っていってます。
- ──
- すごい(笑)。
- 他のものもいっちゃいましょう。
買った場所が違うから、味も違うかもしれません。
- 幡野
- ではこれも‥‥あぁー、また違いますね。
甘い甘い。すごい甘いですよ。
じゃあこっちは‥‥わりと浅めの味ですね。
- ──
- ほんとだ。ひとつずつ違うから、
味くらべもいいと思います。
大きさによっても違いそうだから、
大小それぞれ買って帰っても。 - とはいえ、いま3つ食べましたけど、
3つとも全部全然ハズレじゃないというのが
またいいですね。
全部おいしい。
- 幡野
- ぼく思うんですけど、
「紅まどんな」ってすごい完璧だと思います。
完璧な果物。
- ──
- たしかに。
この、ぱっと食べてみんながわかる感じ。
- 幡野
- あとは、くだものって、すぐ食べちゃうじゃないですか。
だけどぼく、しばらく持ってみたり、
切ったあとで凹凸をしっかり見たりして
しっかりそっちを記憶したほうがいいと思うんです。
味覚は「おいしかった」って記憶に残るけど、
触覚、視覚ってそんなに残らないですから。
重さ具合とか、バランスとか、ツヤとか。
もうトータルで味わったほうがいいと思いますね。 - まあ、それをいちばん味わえるのは、
旬の時期に愛媛に行くことなんですけど(笑)。
- ──
- 「紅まどんな」って、少し前に
ツイッターでも話題になってましたよね。
- 幡野
- そうですね。
それもあっていま、以前よりもちょっと
東京での流通が増えた気がします。 - 話題になったツイート自体は、
『忘年会で「紅まどんな」5キロが景品で出て、
重たくて持ちきれないからその場でみんなで食べたら、
あまりにおいしくてみんな無言になった』
というものですね。
- ──
- さらに、おいしさに感動した若い人が、
その場で通販しようとしたら、値段にびっくりして。
「でも両親に食べてほしいから贈る!」
と言ったら、周りの大人たちに
めちゃくちゃ褒められたという(笑)。
- 幡野
- そう、このみかん、人にあげたくなるんですよね。
ほんとにおいしいものって、
食べたときに、人にあげたくなりますよね。
- ──
- わかります、これはみんなに食べてもらいたい。
今回販売する「愛果28号・紅まどんな」もぜひ、
買った人が自分で食べて、
さらに好きな人にもあげて
‥‥としてもらえるとうれしいですね。
いまの季節ならではの、
いいプレゼントになると思います。
- 幡野
- そうですね。ぜひたくさんの方に、
食べてもらえるといいですね。
‥‥というわけで、
1月16日(土)~31日(日)に
渋谷PARCO8階のほぼ日曜日で開催する
「ほぼ日のおやつ展。」では、
そんな幡野広志さんによる
「愛果28号」のお店がオープンします。
さらに「みかん屋 ハタノ」では、
ほかにも一国屋さんにご紹介いただいた、
珍しいみかんも日替わりで販売。
(数は少ないのですが、JAさんを通した
「紅まどんな」も販売します)
会場の「ほぼ日のおやつ展。」自体でも、
たくさんのおいしいおやつが大集合。
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(おまけ)
幡野さんのマネージャーのこいけさんが、
愛媛の一国屋さんに、今回の「愛果28号」の
仕入れの相談に行ったときの様子については、
こちらからご覧いただけます。
▶「樹になるゼリー」(SAKLA.JP)
一国屋さんの様子や、おいしいみかんの
選び方などを知ることができますよ。