京都のアサヒビール大山崎山荘美術館で、
みうらじゅんさんの「マイ遺品展」が開催中です。
京都といえば、みうらじゅんさんの故郷。
おそらく「故郷に錦」のすごい展覧会に
ちがいありません。
そこで、いつもみうらさんにお世話になっている、
ほぼ日の見習い乗組員の鳥、シジュちゃんが
美術館におじゃますることにしました。
なぜなら展示の中にシジュちゃんの写真もあるという
情報を聞きつけたからです。ほんとうにあるのかな‥‥?
みうらさんが館内を案内してくれます!
第5回
わたしらしく生きていく。
- シジュ
- ここにもみうらさんがいるよ。
- みうら
- これはそもそも違う人だよ。
- シジュ
- えっ。もともとは違う人なの?
- みうら
- 違う人に決まってるよ。
そんなのいちいち作ってたら高いでしょ?
- シジュ
- そうか。
- みうら
- うん。違う人だけど、
でもまぁ、僕のアイテムがこうだからね。
髪の毛と眼鏡、
いまはマスクで顔の面積が埋まっているから、
地肌がほとんど出ていない。
その2点のアイコンがあれば、
だいたいは近づけるんだよ。
つまり、安あがりにいけるぞっていう
人生訓だよ、これは。
- シジュ
- わかった。
学ぶことが多過ぎるよ。
- みうら
- そうだね。
この部屋は学ぶことだらけだよ。
- シジュ
- 「マイ遺品展」を見に来た人、
ほんとうに大変だジュね、これは。
- みうら
- 情報量多すぎて頭痛くなると思うよ。
- シジュ
- ああ、とても観たかった、
ゆるキャラの展示だ!
シジュの先輩たちが
いっぱいいるだジュよ。
- みうら
- 当初は「ゆるい」と言われることに対して
役所のみなさんから嫌悪感を抱かれてしまい、
途中から「ゆるキャラ」の呼称を隠して
写真を借りたりしたこともあったんですよ。
もう20年ほど前のことだけどね。
- シジュ
- それにしても、こんなにたくさん種類が。
- みうら
- このゆるキャラの人形の展示、
僕が持っている数の
3分の1ぐらいなんだよ。
- シジュ
- ひぃえええ。
- みうら
- ゆるキャラは八百万いるんです。
その土地土地の特産物を
体に詰め込みすぎてしまったがゆえに
ゆるくなっていく、
あれはいわば、八百万の神々なんです。
でも、そんな概念や風習は
現在の日本人から消え去っています。
それを、なんとなく市役所や自治体のみなさんが
受け継いでやっているということなんだね。
- シジュ
- でも、その八百万、
人形だけでもこの3倍の量がすくなくとも、
みうらさんのおうちにはあるだジュよね?
- みうら
- もう、仕方ないので倉庫まで借りてるんだよね。
だって、お人形を1点や2点持っていても、
「寒いやつだな」と思われるだけのことでしょう?
- シジュ
- だジュな。
- みうら
- この八百万の神々が存在することを
世に知らしめるためには、
多量に集めてみなさんにお見せして、
ワーッと言ってもらわなきゃなんないんだよ。
「無駄な努力と無駄な量」が
この民俗学には
いちばん大切なことだと思っています。
- シジュ
- ここにある、巨大なゆるキャラは、
いつかみうらさんのイベントで見た、
郷土LOVEちゃんだジュな。
- みうら
- この郷土LOVEちゃんは、
僕がデザインしたものです。
狭い日本、都道府県で分けたりせずに、
日本じゅうを郷土にしようというイメージで
作ったキャラクターです。
- シジュ
- 口がおすしで、富士山と温泉が頭。
- みうら
- いろいろ詰め込んであるのが、
ゆるキャラの特徴なんだよね。
- シジュ
- ゆるキャラやいやげ物、
一生分のスクラップ、
ワニもヘビもさらにコロナ画まで、
そんなものがいっぱいあると、
みうらさんちのマイ遺品は
保管がたいへんだジュな。
- みうら
- マイ遺品がどんどん増えていくと、
ゆくゆくは、より大きな部屋に
引っ越さなきゃいけないことになります。
まぁ、これは人生の張りというものでしょう。
- シジュ
- 張りかぁ。
- みうら
- まだまだ行くぞという気持ちにさせてくれます。
「まだまだ元気でいないと、どうすんだこれ」
と、心配で死に切れません。
そういう目的もあって、集めています。
- シジュ
- 100年後のニュー柳田國男さん、
待っていてくださいね。
- みうら
- 100年後、
「これはすごく貴重な品だ!」
と発見され、学問になっていくことを
僕は予感しています。
あのね、シジュちゃん、
価値観というものは、裏返るんだよ。
ゆるキャラだって、
その名がマスコミによって広められたとたんに、
「うちのキャラクターはゆるくない」と
主張していた自治体が
「うち、ものすごくゆるいんで、どうでしょう、
とりあげていただけませんか」と
売り込みにくるようになりましたからね。
価値観なんてそんなもので、
コロコロ変わっていくんです。
- シジュ
- じゃあ、これらマイ遺品も‥‥。
- みうら
- いま生きている人は「しょうもない」で
片付くと思っているかもしれないけれども、
そんな世間の価値観を信じているようでは、
投資してもだめってことなんですよ。
- シジュ
- 投資‥‥?
- みうら
- ほんとうの投資というものはね、
自分が認めているものに投資することなんだよ。
世間が「高くなる」とか言うやつは、
たいがい失敗します。
自分の価値観を信じるしかないと思うよ。
- シジュ
- わかった、シジュもシジュの価値観を
たいせつにしていくよ。
でもシジュは、ゆるキャラとして、この感じで
突き進んで大丈夫だジュか。
- みうら
- そこだよ、シジュちゃん。
世間的に見て、ゆるキャラは
少し下火でもあるから。
- シジュ
- え、そうなの?
- みうら
- うん、下火になってると思うよ。
だから、シジュちゃんは、
シジュちゃんとして生きていってください。
ゆるキャラのブームに
乗っかったりしなくていいから。
- シジュ
- うん、わかりました。
これからもシジュはシジュとして、
やっていきます。
- みうら
- うん。「わたしらしく」ね。
- シジュ
- わかった。
みうらさんも、
これからもマイ遺品とともに、
わたしらしく生きていくんだジュな。
- みうら
- もう、僕は
それでしか生きていけないよ。
「わたしらしく」以外はもう無理です。
- シジュ
- みうらさん、今日はありがとう。
- みうら
- こちらこそありがとうございました。
美術館の庭園に、
僕バージョンの「飛び出し坊や」が
5体いるから、見つけて帰ってね。
- シジュ
- わかっただジュ。
みうらさんに館内を案内していただいたあと、
シジュちゃんはまず、
入口のミュージアムショップに行き。
「コロナ画55」の冷マとSinceの帽子を求め。
「飛び出し坊や」の
みうらさんバージョンを美術館の
美しい庭園にさがし。
午後に開かれた、
みうらじゅんさんのトークイベントで、
ご厚意によりみなさんにごあいさつして。
みうらさんの軽快なトークで笑いに笑って。
アサヒビール大山崎山荘美術館を
あとにしたのでした。
ああ、たのしかった。
みなさんもぜひ、京都に行って、
「マイ遺品展」を観てください。
未来の錦が、そこにはあります。
(おしまいです。ありがとうございました)
2022-01-22-SAT
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アサヒビール大山崎山荘美術館
開館25周年記念
みうらじゅん マイ遺品展
2021年12月18日(土)– 2022年3月6日(日)みうらじゅんさんが長年にわたり収集、制作し、
自ら「マイ遺品」と名づける品々を、
出身地である京都の地で一挙に公開する展覧会。
ゆるキャラ、いやげ物、スクラップ、ヘンヌキなどの
みうらさんの「マイ遺品」が
国の有形文化財として登録されている「大山崎山荘」と
安藤忠雄さん設計の「地中館・山手館」からなる
静かな美術館にずらっと並ぶさまは、圧巻です。
京都の歴史ある空気を味わいながら実感する、
みうらじゅんさんの偉業のかずかず、
ぜひおたのしみください。
カフェでは特製のどらやきも食べられます。【会場】アサヒビール大山崎山荘美術館
〒618-0071 京都府乙訓郡大山崎町銭原5-3
JR山崎駅または阪急大山崎駅より徒歩約10分
【開館時間】10:00 – 17:00(最終入館 16:30)
【休館日】月曜日(ただし、祝日の場合は翌火曜)