ほぼ日乗組員、向江夢(むかえ ゆう)は、
「喫茶店のマッチ」を集めています。
その数、現在300個以上。
世の中にはもっとすごいマッチ収集家がいるのでしょうが、
彼女(現在22歳)はこれを4年で集めています。
コレクションの3分の2は、
じぶんが実際に行った喫茶店でもらったものだとか。
しかも、「行ったお店にマッチが無い」
というケースがほとんどなのだそうです。
なのに、約200個を手に入れている。
いったい彼女は何軒の喫茶店の扉をくぐったのか‥‥。

そこまで本気な向江夢が、
好奇心ひとつをひっさげて、
「喫茶店マッチ」にまつわるあれこれをめぐります。
最終的には、オリジナルマッチをつくっちゃうんですよ?

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第1回 向江夢が、これを集める理由。

新人乗組員の向江夢(むかえ ゆう)、
顔アイコンで表現するとは、
2024年の4月にほぼ日に入社しました。

まずは、どうしてこんなにも、
「喫茶店マッチ」が好きになったのか、
本人に話を聞くところからはじめます。
基本的にの目線で進めるレポートですが、
ごめんなさい、最初の回だけ、
乗組員・山下が聞き役をつとめます。

──
入りますねー。
(会議室のドアを開ける)
むかえ
よろしくお願いします。

──
おおーー。
これは、これはすごい。
むかえ
並べてみました。
──
圧巻ですね。
むかえ
こんなふうに並べたのは、はじめてです。

──
はあ~~。
ぜんぶで何個あるんですか? 
むかえ
ちゃんと数えたことがないんですけど、
300個はあると思います。
──
300‥‥もっとありそうだけど‥‥。

──
ちょっとこれ、
見入ってしまいます‥‥。

──
水森亜土さんのイラストだ。

むかえ
マッチ箱の表と裏で並べるとこうなるんです。
──
かわいい工夫(笑)。
ああ、これ、なつかしい。
こういう紙のタイプもありました。
むかえ
ブックマッチですね。

───
ブックマッチって言うんですね。
‥‥いやぁ、これは、
感想を言ってたらきりがない(笑)。
むかえ
そうですね(笑)。

───
いつから集めているんですか? 
むかえ
18歳くらいからです。
───
大学時代かな。
そのころは大阪ですよね。
むかえ
はい。
───
で、いま22歳だから、4年でこれを集めた。
むかえ
そうなんですけど、
わたしがぜんぶ集めたのではなくて、
ゆずっていただいたのも結構あるんです。
──
なるほど。
ここにそれが混ざってる? 
むかえ
いちおう分けて並べました。
ここのラインで。

▲赤い線が、分けているライン。 ▲赤い線が、分けているライン。

むかえ
そちらから見て、右側に並んでいるのが、
私が集めたマッチです。
で、左にあるのが
ゆずっていただいたマッチです。
──
これらが、人からいただいたマッチたち。

むかえ
これぜんぶ、
「喫茶チェリー」っていうお店があって、
そこのマスターが集めたマッチなんです。
──
あ、たくさんの人からもらったんじゃなくて、
ひとりの方からいただいた。
むかえ
そうなんです‥‥ええと‥‥
「喫茶チェリー」のマッチがどこかに
あるはずなんですけど(探している)。
──
チェリー、チェリー(探す)。
むかえ
英語で書いてあります(探す)。
──
CHERRY、CHERRY(探す)。
なんか、カルタ遊びみたいです(笑)。

むかえ
‥‥ありました。

──
はいはい、CHERRY。
このお店のマスターが、
なぜ、むかえさんにマッチを? 
むかえ
このお店に行ったときに、
「喫茶店のマッチ集めてるんです」
という話をしたら、
マスターも集めてると言って
コレクションを見せてくれたんです。
もう、わたし、感動してしまって、
2時間くらいマスターに
マッチの話を聞いたんですね。
──
2時間。
むかえ
マスターは、
桃谷周辺のマッチをすごい持ってたんです。
──
ももだに? 
むかえ
「喫茶チェリー」がある、大阪の街です。
その周辺の喫茶店のマッチを
ぜんぶあげます、と。
──
その2時間で後継者として認められたんだ。
むかえ
いや、そんな。
でも、せっかく受け取ったので、
「喫茶チェリー」の近くにある
ほんとうにちいさなスペースで展示をしました。
──
へえーー。
それはマスター、うれしいですね。
むかえ
「あの日、喫茶店で‥‥」という展示を。

──
そもそも、なぜ喫茶店のマッチを集めようと? 
むかえ
きっかけは、それも大阪の喫茶店なんですけど、
たまたま入ったお店に、
透明のガラステーブルがあって、
その中に、ばあーっとマッチ箱が並んでたんです。
わたしそれまで、
喫茶店にマッチがあることを知らなくて。
──
そうか、なるほど。
むかえさんはもちろん非喫煙者だし。
むかえ
はい。
で、はじめて見たとき、
「これはなに?」と(笑)。
──
昭和のころならあたりまえですが、
喫茶店はタバコを吸う場所だったんです。
むかえ
ほんとにはじめて見るものだったので、
喫茶店に置いてあることにつながらなくて。
このときは、ただただかわいくて。
そこがまず衝撃でした。
──
衝撃の出合い。
むかえ
「かわいい」というだけの記憶を
家に持って帰って母親に話したら、
「わたしも集めてた」と。
──
むかし流行ってたからね。
ぼくも集めてました。
むかえ
母親は「処分しちゃったから、
いまはひとつしか残していない」と。
──
お、ひとつはあった。
むかえ
そのマッチを見せてもらったら、
すごいかわいくて、
「これほしい」って言ったんですけど、
もらえなくて。
──
くれなかった(笑)。
お母さん、思い出があるんでしょうね。
むかえ
そうかもしれません(笑)。
とにかく、もらえなかったので、
じゃあじぶんで集めるしかない、
という感じで集めはじめたのがきっかけです。

──
じぶんで集めたマッチがずいぶん‥‥
200個くらいかな、あるけど、
これ、4年でぜんぶに行ったの? 
むかえ
ぜんぶに行きました。
──
ぜんぶに行った! 
はあーーー。
置いてないお店も多いでしょう?
むかえ
無いお店がほとんどです。
──
ということは、
これ以上の数の喫茶店に行っている。
むかえ
そうです。
──
すごいな。
カフェじゃなくて、
いわゆるレトロな感じの喫茶店ですよね。
むかえ
そうです、関西の方は喫茶店が多いので。
──
現代的なカフェには行かないの? 
むかえ
友達と行くことはあるのですが、
ひとりのときは喫茶店が多いです。

──
そうですか‥‥。
きっとむかえさんは、こういうマッチが
置いてありそうなお店が好きなんですね。
そっちが先じゃないですか? 
むかえ
そうなんです、
そっちが先行してるんです。
じぶんルールみたいなのがあって、
マッチをもらうときには
できるだけお店の人にお話を
聞かせてもらうようにしています。
店名の由来とか、
いつからやっているお店なのか、とか。
ひとつひとつのマッチを見れば、
その喫茶店に行ったときに
どんな話をしたのかを覚えていて、
それがたのしいです。
──
話しかけるんだ。
むかえ
話しかけます。
──
いいですねぇ。
なるほど、人との出会いもたのしい。
「喫茶店マッチ」を集めたくなる気持ちが
だいぶわかってきました。
むかえ
うれしいです。
──
そろそろインタビューを終えますが、
「喫茶店マッチ」について
なにか言い残したことは? 
むかえ
言い残したこと‥‥。
ほんとうは、ぜんぶひとつずつについて
話したいです。
──
300個ぜんぶ! 
ごめん、それはちょっと無理なので(笑)、
じゃあ、3つだけ聞かせてください。
むかえ
3つ‥‥。
──
本気で悩んでる(笑)。
むかえ
うーーーーーん、3つですかぁ(笑)。

──
決めてください。
むかえ
‥‥ひとつめは、これにします。

──
これ。
「すず」というお店ですね。

むかえ
私のバイト先なんです。
大学のときに2年くらいはたらいていて、
やっぱり思い入れがあるので。
ふたつめは‥‥これにします。

──
コーヒーミルのデザイン。
むかえ
「にしむら珈琲店」っていう、
いくつか店舗があるお店です。
このお店でわたし、
いちばん最初のマッチをもらったんです。
梅田店で。
インターネットで
マッチがあるという情報を見て、
ドキドキでお店に行きました。
──
ファースト・マッチですね。
むかえ
次はこれにします。

──
きれいですね、オーロラ仕様。
むかえ
「ニューホワイト」という喫茶店です。
ふつうの住宅街に急にあらわれる
ほんとうにお城みたいな喫茶店で、
それがおもしろくて。
──
インパクトがあります。
いやー、ありがとうございました。
むかえ
あの、あと3つくらいいいですか。

──
なんて前のめりな(笑)。
‥‥じゃあ、わかりました。
このインタビューの次の回で、
コレクションを紹介してください。
10個くらいは簡単な解説を添えて。
あと、どうせならぜんぶの写真を
並べちゃってください。
むかえ
ほんとですか? 
──
というかもう、
マッチに関してやりたいことを、
どんどんやっちゃってください。
むかえ
それは、たとえば? 
──
まず、ご近所からいきましょう。
神保町にも喫茶店がたくさんあります。
「ミロンガ・ヌオーバ」を知ってますか? 
むかえ
知ってます! 
──
何度か通っているのですが、
店内に「喫茶店マッチ」を飾っています。
むかえ
知ってます、あります! 
──
お話を聞きに行きましょう。
むかえ
はい! 
──
あと、やりたいことは? 
むかえ
‥‥さっき、ブックマッチの話をしましたが、
日本で一社だけブックマッチを作っていた
「日東社」さんという会社が、
2022年に製造をやめてしまって‥‥。
──
ブックマッチは日本で作られていない。
むかえ
そうなんです。
──
さみしいですか? 
むかえ
さみしいです。
──
「日東社」さんへ行きましょう。
むかえ
でも姫路なんです。
──
思いきって行きましょう。
むかえ
はい! 
──
そうだ、せっかくマッチ工場に行くなら、
オリジナルマッチを作りたいですね。
むかえ
ああ! 
──
年末年始に「大福田展」という、
イラストレーター・福田利之さんの
展覧会があるんですが、
その会場に喫茶店があるんです。
その喫茶店のマッチを
福田さんの描き下ろしイラストで! 
というのはどうでしょう? 
むかえ
すてきです! 

──
とことんやりましょう。
オリジナルマッチの完成がゴール! 
マッチをめぐる旅へゴー! です。
むかえさんのレポートで、伝えてください。
むかえ
はい! がんばります! 

インタビューのあとで、さらに‥‥
同じ階にいたほぼ日乗組員たちが、
盛り上がる会議室に「なにごと?」と、わらわらと。
この場が、ちょっとした展示会になりました。

「すごーい」「かわいいねぇ」
「どれがいちばん好き?」などというおしゃべりの中に、
「TOBICHIに展示したらいいのに」という声が‥‥。
なーるほどー、そーれはかわいくてたのしそう! 
と、このとき思いましたので、
TOBICHI東京にこのマッチたちを展示します! 
ちいさなスペースですが、
ぜひ実物を見に来てくださいね。
12月13日から展示の予定です。

(次回、むかえのコレクション紹介につづきます)

2024-12-13-FRI

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  • 関連企画のお知らせ

    イラストレーター・福田利之さんが、
    このコンテンツ「喫茶店マッチが好きだから。」のために
    一枚の絵を描きおろしてくださいました。
    その絵を印刷した、オリジナルマッチを作成。
    渋谷PARCO「ほぼ日曜日」で開催中の
    「大福田展」でお渡しします。
    会場内の「純喫茶 大福」をご利用ください。
    おひとり様に1個、差し上げます。
    (ご用意した数が無くなり次第終了)

    また、TOBICHI東京のワンコーナーでは、
    「喫茶店マッチが好きだから。」に登場している
    向江夢のマッチコレクションを展示します。
    ちいさな展示ですが、
    オリジナルマッチのために描かれた、
    福田利之さんの原画もご覧いただけます。