「仕事って、なんだろう?」をテーマに、
糸井重里が3日間で3人のスペシャリストと
語り合ったトークライブ。
2人目のゲストは、
人材紹介会社KIZUNAパートナーズの
代表取締役社長、河野晴樹さん。
以前は株式会社リクルートで
就職の最前線を見つめてこられた方です。
これまでも
「ほぼ日」のお仕事コンテンツや
就職についての本『はたらきたい。』などに
ご登場いただいてきた河野さんが
今回、就職活動中の若者を前に語ってくれたのは、
採用側が求めている、本当のこと。
実例や具体的なアドバイスも多かったトークを
全6回にわけて、「ほぼ日曜日」からお届けします。
イラスト|堤淳子(223design)、編集|中川實穗(なかがわみほ)
第1回
「バレること」も含めその人を見ている
- 糸井
- 今日のゲストは、河野晴樹さんです。
- 河野
- よろしくお願いします。
- 糸井
- 河野さんは、
以前「ほぼ日」で出した『はたらきたい。』という本のなかで、
とても重要な発言をしてくださった方です。
今は独立されていますが、
元はリクルートという会社にいらっしゃいました。
- 河野
- リクルートでは、
中途採用として企業さんに人材をお送りするとか、
上場企業さんに役員クラスの方をご紹介して
会社を変革していく、
というような部隊の担当取締役をしてました。 - リクルートグループの新卒採用も、
担当領域では3分の1位のかたの最終面接を
していました。
- 糸井
- 「重役メーカー」ですね、いわば。
- 河野
- そうですね(笑)、
お客様には「キングメーカー」と言われていました。
- 糸井
- (客席に)今のは自慢話なんですよ?
- 客席
- (笑)
- 糸井
- 以前、河野さんに「ほぼ日」に出ていただいたときに、
「面接で一番重要視していることはなんですか?」
と尋ねたら、
「『あなたが今まで一番大切にしてきたことは
なんですか?』
これを聞くと、だいたいその人がわかるんです」
という話をしてくれました。 - その後の就職戦線では、
その質問はまるで常識のようになっていって、
今度は逆に聞かれる側が
「これは絶対に聞かれるからうまい答えを考えておこう」
と準備して面接に臨む。
そういうイタチごっこになってしまったようですが、
今、同じ質問をする会社があったとしたら、
少し変化をつけないとダメですか?
- 河野
- いや、原理原則みたいな話なので、
変えなくていいと思いますよ。
- 糸井
- 質問されることがわかっている場合、
「最適な答え」というのも
時間をかけてじっくり用意できるわけじゃないですか。
嘘も含めて。
今、就職戦線はそんなことだらけだと思うんですよ。
- 河野
- でも、僕ら、面接する側はわかりますからね。
- 糸井
- バレる?
- 河野
- バレます。
- 糸井
- 面接をする側の人はみんな
「わかるんです」って言うんだけど、
ぼくは、それは、多少ブラフだと思う。
- 河野
- ははは!
でも「きっと自分の部屋で夜ウンウンうなりながら
考え出したりひねり出したりしたことなんだろうな」
という言葉は、なぜか伝わりますよ。
でも別にバレていいんです。
バレるからダメとかそういうことでは全然ない。
- 糸井
- そこも含めて、その人ということですか?
- 河野
- はい。
- 糸井
- 僕は、就職活動が、
受験みたいに
「模範解答」のある
やりとりになっているように思えて。 - その不純さは
自分をダメにしちゃうんじゃないの?
そんなやりとりしなくてもいいのに、
と思っているのですが、
「じゃあどうするのか」が発明できないんです。
- 河野
- はい。
- 糸井
- 自社の話をすると、
「ほぼ日」では、
この2、3年は採用の最終選考の手段として
合宿をしていたんですよ。
最後に残った候補者に時間をつくってもらって、
山中湖とかの施設で、
一緒にご飯を食べて、 - ぼくらも一緒にミーティングをして、
ということをやっていくんですけど、
簡単にいうと、ちいさな仕事をひとつ、
いっしょにやってみるような感じなんです。
それを短いスパンでも一回やると、
チームプレーが苦手な人なんだなとか
意外に「オレはオレは」な人だとか、 - そういうことが見えてくる。
そういう“ふだん”が
見えるほうが
いいなと思ったのでやっていました。
でも、就職試験ってそういうものじゃないですね。
合宿に行く前の段階ですよね?
- 河野
- はい、全然前ですね。
- 糸井
- その段階で
「大切にしてきたことは何ですか?」
と質問することを、
河野さんが「原理原則だから、それでいけます」と言う、
その心はなんですか?
- 河野
- そうですね‥‥。
こんなことを言っていいのかわからないのですが、
面接する側も、
実は不毛なやりとりなのではないかということは
ずーっと感じていることです。 - 例えば(1次面接などを行う)若い採用担当者だと、
人気企業と言われてるところなら
年間で800人とか1000人の
新卒の学生さんと面接をするわけです。
- 糸井
- すごい人数!
- 河野
- そうすると、なんていうか、
「みんな、言ってることは一緒だ」
というふうに思えてきちゃう。
で、時々おもしろいことを言う子が
良く見えたりすることもあるんだけれども、
実際はそういうことって全然関係ないんです。
おもしろいことを言って記憶に残ったからって、
じゃあその人が
入社して
仕事ができるようになる人かというと
そこに関連性はない。
人が育っている企業は、
面接でおもしろいことを言う人が
将来活躍するとは思っていないんですね。 - でも学生側は、
「他の学生とはちょっと違うんだ」ということを
なんとかして伝えようとする。
就職対策本も読み込んで、
ネットやなんかも見て、
先輩の話も一所懸命聞いて、
なにか差別化を、差別化を、差別化を‥‥
とやるので、
どんどん負のスパイラルに入っていっちゃうんですよ。
- 糸井
- ああ。
- 河野
- 採用側は、
本当はその人の根っこにある
「この人は今までどんな生き方をしてきて、
うちの会社に入ったら
どんな生き方をしていきたいんだろう」
ということが知りたいだけなんだけれども、
学生側は「差別化を」と思っているので、
話が違う方向にいっちゃう。
それで結局、
若手の採用担当者が
「接点がなかったな」と思った学生さんは
落とされてくという、
そんなことがずーっと繰り返されているんですね。
(つづきます)
2020-04-22-WED