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#10 おじさんみたいな机

この漫画のもとになった投稿

44年間、悲しい思い出として
残っていたことがある。

小学校に上がるとき、
学習机を友だち同士で披露し合うことになった。

木目調の机、デスクマットに
キャラクターの可愛いイラストが当時の流行。

ワクワクしながら
机が届くのを待ち焦がれていた私に届いたのは、
ネズミ色の事務机に、
深緑色フェルトのデスクマット、
ネズミ色の椅子、
飾り気のない電気スタンド。

ジワっとくる悲しみで、
まぶたをもう一回閉じたら、
溢れ出るのを堪えていた涙がこぼれてしまう。

「かわいいのじゃない!」とゴネる私に、
父は「将来、俺に感謝する日がくる」と言う。

絶対そんな日は来ない!

貧乏だから、これが我が家の精一杯なのだ。
カッコ悪いが仕方がない。
披露したときの友だちの気の毒そうな顔。

その後も感謝する日は来なかった。

そんな話を会社の仲間に話していると、
「お父さんは案外、
本当に機能性を考えて
用意してくれたのではないか」と言う。

コロナでテレワークになって、
ちゃぶ台にパソコンを置いて使っていると、
腰痛や肩こりに悩まされるこのごろ。

44年ぶりに嫌だったこの思い出が、
一瞬にしてパッと晴れたような気がした。

(匿名さん/いつかの「え? はじめて知った!」より)

2022-11-04-FRI

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    2005年から連載を開始した読者投稿コンテンツです。2022年時点ですでに17年以上、「今日のコドモ」「今日のダンナ」「今日のじーばー」「今日の気になるあいつ」….などの20以上のカテゴリから、日替わりで毎日欠かさず3ネタを更新してきました。アーカイブを残していないため、その日のネタは、その日にしか読めません。2016年には、過去の傑作から選りすぐって書籍化もされました。ほぼ日に来たら、まずはここからという読者も多い、大人気のコーナーです。今日の「今日のコドモ」は、こちらからどうぞ。

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    今日マチ子

    漫画家。1P漫画ブログ「今日マチ子のセンネン画報」の書籍化が話題となる。文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に4度選出。戦争を描いた『cocoon』は「マームとジプシー」によって舞台化。2014年に手塚治虫文化賞新生賞、2015年に日本漫画家協会賞大賞カーツーン部門を受賞。『みつあみの神様』は短編アニメ化され海外で23部門賞受賞。コロナ禍の日常を絵日記のように描いた近著『Distance わたしの#stayhome日記』が、2022年1月『報道ステーション』にて特集された。

  • 漫画:今日マチ子

    編集:奥野武範(ほぼ日)

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