SUPER LIFE MARKETのアパレルシリーズに
あたらしいエプロンが加わりました。
“シャツのようなかたちのエプロンがあったら”
という飯島奈美さんのアイデアを、
lelillのデザイナー児玉洋樹さんがかたちにした、
「シャツエプロン」です。
色は、ホワイトとベージュの2色、
身幅は同じで丈の長さの異なる
ロングとスタンダードの2サイズです。
そして、おなじみのワンピース型のジレエプロンにも
新色「みずいろ」が登場します。
ふたつのアイテムができあがるまでのこと、
飯島さんと児玉さんに語っていただきました。
-
- 飯島
- ついにできましたね。
- 児玉
- ようやく完成しました!(拍手)
ほんとうに、嬉しいです。
- ──
- 児玉さんが天を仰いで嬉しいとおっしゃるということは、
そうとう苦労なさったということですか。
- 児玉
- あれ、おわかりですか。あはは。
結構前から動いていたので、感慨ひとしおです。
ようやくここで形になった、って。
- 飯島
- 苦労させてしまいましたね、ありがとうございます。
- ──
- 飯島さんの一番最初の提案は
「シャツのようなエプロン」でしたね。
- 児玉
- はい、シャツでした。
- 飯島
- 開襟シャツみたいな襟の
エプロンがあったらいいのにって
ずっと考えていたんです。
- 児玉
- 「シャツのようなエプロン」というのは
考えたこともなかったんです。
そもそも、エプロンとシャツというのは
パターンも縫製方法も、まるで違うので。
- 飯島
- エプロンの革命ですよね。
通常、エプロンといったら、
水はねや油とびを防ぐために
前身頃に1枚の生地がさらっと来るものですから。
- 児玉
- 飯島さんからの提案が一貫しているのは、
先につくったジップエプロンやジレエプロン、
そして「からあげボレロ」のときもそうだったんですけど、
着たまま外出できるものを、ということなんですよね。
われわれが持ってるエプロンの概念を
一気に違うところに追いやったというか。
- 飯島
- たしかにそうですね。
フードスタイリストである私たちにとっては
毎日の仕事着というか、
ほとんどそれで一日を過ごすので、
制服のような感覚もあるんです。
- 児玉
- そうですよね。
僕は洋服屋としてそれを
「エプロン」という形でつくるか。
双方から違うアプローチで
ここにたどり着いている。
そういう意味でも、
すごくおもしろいものができたと思います。
- 飯島
- そうですよね。ステキです。
何度も試作を繰り返して、
私のほうからも最後になって
「紐は完全に外せるようにしてください」とか、
こまかなリクエストを出したりして。
でも、それぞれが「ここは譲れない」部分を
持っていたことが、仕上がりのきれいさに
つながったんじゃないかと思います。
- 児玉
- ほんと、そうですね。
僕は洋服屋のプライドとして
「着て、かっこよくないと!」
ということをずっと考えてきました。
エプロンなのだけれど、
「それ以上のもの」にしようと。
これまでつくってきたジップエプロンやジレエプロンの
機能性を裏切っちゃいけないところと、
洋服としてのかっこよさのバランスは、
今回のものがいちばん大変でした。
- 飯島
- 肩の幅ひとつで、印象がまるで変わりますし。
- 児玉
- そうなんですよ。
もっと細くすることもできるんですが、
飯島さんから、長時間エプロンをつけているときの
肩にかかる重さの話を思い出して、
絶対に肩で重量分散をさせないといけないと。
もしこれを洋服としてつくるなら、
後ろぐり(首の後ろ)を少し抜くんです。
下げちゃうっていう感じですね。
そうすると、もっと洋服っぽく着られる。
でもやっぱり1日中つける可能性があって、
重量分散で肩がこらないようにっていうところは
大事にしないといけないので、
ここだけはなんとしてもフィット感を高めねば、と。
つくっているうちに、
「あれ、俺、エプロンつくってるんだっけ、
それともシャツつくってるんだっけ?」と、
わからなくなりました。
- 飯島
- アハハ。
このシリーズは、ほんとに服として着てくださる方も
たくさんいらっしゃるんですよ。
- 児玉
- 「生活のたのしみ展」で店頭に立っていたら、
そうおっしゃってくださるお客さまが大勢いらして、
洋服屋として冥利に尽きます。
とくにジレエプロンは
「私はしばらくワンピースとして着て。
そのあとにエプロンに昇格させます」
という方もいらっしゃいました。
外出着としても着られるクオリティがあって、
そのまま料理もつくれて、っていうことを
体現してくださっているなと思いました。
- 飯島
- ほんとですね。
デザイン自体も、たいへんだったのでは‥‥?
- 児玉
- そこは、僕はレディースのデザイナーなので、
経験が生きました。
ただ、今回は僕の得意な
ワンピースが進化したエプロンではなく
そもそもはメンズが出発点であるシャツを
進化させたので、そこはちょっとだけ、
最初のイメージをするのに苦労しました。
- 飯島
- そうだったんですね。
ありがとございます。
- 児玉
- 飯島さん、現場では
ジップエプロンとジレエプロン、
どちらが使いやすいとかありますか?
- 飯島
- どちらも、ですね。
うちのスタッフが現場で着ていると、
「もしかしてそれ、お揃いですか」と聞かれるんです。
「そうです。これ実は形が違うんですよ」と言うと、
「え、欲しい!」と、みなさんおっしゃってくださって。
もう甲乙つけがたいっていう感じです。
私たちも、「結局着てるとこっちになるよね」
ということはなくって、
「今日はこっちにしようかな」とか。
どっちも均等に好き、という感じです。
- 児玉
- ああ、嬉しいです。
- 飯島
- ですから3つめのエプロンが加わったら、
どんな反応か、楽しみなんです。
- 児玉
- 第三のデザインで、まったく違いますから。
- 児玉
- もうサンプルを着てお仕事を?
- 飯島
- 使わせていただきました。
- 児玉
- ちょっと怖いけど、感想を訊きたいです。
- 飯島
- 「すご~く」いいです(笑)。
- 児玉
- その言葉が聞けただけで、報われます。
- ──
- 今回、シャツということで、
あえての「白」がラインナップに入りました。
- 児玉
- そうですね。満を持して。
最初のエプロンのときにも、
白をつくろうかという話は出ているんですよね。
- 飯島
- はい、そうですね。
- 児玉
- そのときに飯島さんと、
麻などの素材で白をいつか、
という話になって。
今回、シャツということで、
「だったら白」というふうにすんなりつながりました。
- ──
- エプロンとしての機能を考えたら、
白はつまりシミが目立つじゃないですか。
そこはどういうふうに消化を?
- 児玉
- 弱点はそのまま武器かなと考えました。
なぜかというと、今どきの洗剤を使うと、
白って一番、汚れを落としやすい色なんですよ。
言い方を変えると、色ものの汚れを落とそうとすると、
その色自体が薄くなることもあるんです。
白だったら全体の漂白ができます。
つねに清潔に着用いただきたいものですから、
汚れが目立ち、それを落とすことで
まめに消毒ができるという着地を考えると、
白であることは「いいところ」だと思うんです。
- ──
- 調理師さんの制服は白衣ですものね。
かっぽう着も白衣です。
- 児玉
- そうなんですよ。
そうやって考えると、エプロンにとって、
白って実は原点のカラーだと思いました。
- 飯島
- ほんとですね、たしかに。
- ──
- なるほど。素材はコットンですね。
- 児玉
- はい、コットン100%のリップストップですね。
ミリタリーやアウトドアウェアが好きな人は
見たことがあるんじゃないかなと思うんですけれど、
強い糸が格子状に織り込まれている素材で、
傷に強いんです。
刃物を使う現場で求められる素材ですよ。
- 飯島
- はい、安心です。
今回はタオル掛けのループ(輪っか)を、
シンプルに見えるように、
腰紐用のベルトループと並べて、
縦位置でつけてもらいました。
しかもボタンでそのループが外せるんです。
- 児玉
- そうですね、ついつい強く引っ張って、
縫い目がほつれるかも、
という心配がなくなりましたね。
そのボタンはポケットに隠れる位置なので
目立たないようにもなっています。
- 飯島
- ボタンでつけられると、
現場で応用がきくんですよ。
レジ袋を下げてゴミ入れに使えますよ。
- 児玉
- あはは(笑)!
- 飯島
- そして、シャツエプロンはユニセックスなので、
紐を使わないという方は、
紐を外して着用いただければよいと、
ウエストのトンネルループをなくしているんですよね。
- 児玉
- それからサイズ感について
何度か検討を繰り返しましたね。
ワンサイズにしようか、
ジップエプロンやジレエプロンのように
全体のサイズ感を変えたサイズ展開にしようか。
結果、シャツエプロンは丈だけを変えました。
- 児玉
- そこにも「動きやすさ」がかかわってくるんです。
いくら身幅があっても、動きに自由度がないと
着ていて嬉しくない。
このシャツエプロンは、細く見えつつも、
動きやすさを考えて、
シャツと同じつくり方で、
背中にヨークをつけ、
たっぷりめのセンタータックを入れて、
身体の稼働域を大きくしています。
- 飯島
- だから動きやすいんですね!
- ──
- 袖がないのから動きやすいのではなく、
立体的に動くから
布が背中で攣(つ)れないからなんですね。
それにしてもエプロンにヨークがつくって
すごくめずらしいですね。
- 児玉
- シャツとしての動きやすさを解決するには、
これしか道がないかなと。
タックも実はこんなに深いんですよ。
広げると、こんなに布を使っているんです。
これが肩甲骨の動きについてくるんですよ。
丈だけの違いの2サイズですが、
どちらも恰幅のよい男性の方も
着られる身幅になっています。
- 飯島
- 女性も男性も。
- 児玉
- スッキリと見え、
それでいて可動域が広いんです。
ここはシャツならではのいいところです。
- 飯島
- 素晴らしいです。
- ──
- 飯島さんの提案で、紐のベルトが
外せるようになっているんですね。
- 児玉
- はい、外した後も目立たないように、
小さなループにしているんですよ。
- ──
- シャツのつくり方ですが、
メンズシャツのような台襟ではなく、
レディースのイタリアのシャツなんかにある
つくり方ですね。
- 児玉
- はい、月腰(つきこし)という部分を使わない、
ワンピースカラーです。
後ろ襟がそのまま前身ごろまで繋がっていて、
アメリカ的に言うと、
カバーオールの襟のつくり方です。
この辺は少しワークな匂いもさせたいな、
っていうところもあったんです。
あんまり丁寧にいかにもシャツのつくりにすると、
エプロンとして使い倒すことから相反してくるかなと。
だから最初から月腰を入れないで、
襟をできるだけキレイな形でつくりました。
- ──
- 最初に話に出た肩の部分ですが、
ほどよい幅で、フィット感がすばらしいんです。
そこにも秘密が?
- 児玉
- 肩線をまっすぐにしていないんですよ。
外側に向かって少し落としている。
あまりまっすぐにしすぎると、
裃(かみしも)みたいになってしまうから。
- ──
- そうしていたら平面的、
和服的になっていたでしょうね。
洋服ならではの立体的なパターンなんですね。
- 児玉
- そうですね。そして今どきのエプロンなので、
前身ごろのボタンも
ユニセックスの合わせになっているんです。
最初はレディースの合わせだったんですが。
試作を繰り返す中で、
男性も着られるものができあがったので、
こうしたんです。
- ──
- ほかにも、「ここがすごい!」というポイントが
ありそうですね。
- 児玉
- はい、このエプロンのシリーズは
すべて洋服の工場で、
洋服のつくりかたで縫っているんですが、
シャツエプロンに関しては、
たとえば襟の裏を見ていただくと
わかりやすいんですけれど、
見返しと言われる部分も、全部縫っているんです。
これは型くずれをさせないポイントです。
縫っていないと、洗濯機で洗ったとき、
芯が剥離して、よれて型くずれの原因になるんです。
それを起こさせないために、見返しは縫い止めています。
すべて洗濯機で洗う前提です。
- 飯島
- 縫い目、きれいですね。
いまさらですけど、
これって人が縫ってるんですよね。
- 児玉
- はい、人が縫ってますよ。
- 飯島
- すごいことですね。
- 児玉
- なので襟をカーブさせて縫えるんです。
左右の襟を均等にするのって、
すごく高い技術なんです。
- 飯島
- そうなんですね。
こうして細かく見ると感動しますね。
ほんとうに工場のみなさんに感謝です。
- 飯島
- 色もいいですよね。
真っ白過ぎず、ちょっとオフホワイト。
- 児玉
- 合わない服がないのではないかなっていう、
絶妙なオフホワイト具合ですよね。
- 飯島
- たとえば、真っ白なシャツに着たとしてもいいですし。
- 児玉
- オフホワイトと、白度の高いホワイトを組み合わせて
グラデーションで見せる感じも
すごくステキなのではと思います。
- 飯島
- 児玉さん着てみてください。
メンズが着てかっこいいっていうところを。
- 児玉
- かっこいいメンズが着ないと、
というのもありますが‥‥、
でも、なんとか。
- 飯島
- いいですね!
- 児玉
- 自分で作った服を
自分で着ることって少ないんですけど、
嬉しいです。
- ──
- そして色のバリエーションです。
白のほかに、ベージュをつくりました。
ベージュはね、ボタンに色がついてます。
この色で襟があると、
トレンチみたいなニュアンスが出ますね。
こちらも着てみてください。
- 児玉
- 飯島さん、似合いますね!
- 飯島
- ああ、とってもいいです。
着ていてラクですし。
- ──
- いま気づきました、
スリットが前身頃側はカーブしていて、
後ろ身頃側がまっすぐ。
そこもかわいいなと思いました。
- 児玉
- まさにちょっとシャツっぽさを意識しました。
- ──
- アームホールが広いので、
下にちょっと厚手のニットとかを着ても大丈夫ですね。
- 児玉
- パーカを合わせるのも、絶対かわいいですよ。
- 飯島
- 着てみると、この楽さがわかりますよね。
一見、かっちりしていますが、
ほんとうに動きやすいので、
私たちの仕事で長時間着用をしても大丈夫です。
- ──
- さて今回、ジレエプロンにも
新色が登場します。
飯島さんに色を選んでいただきましたね。
- 飯島
- はい。みずいろを選びました。
色を変えただけでこんなに違うんだ!
っていう印象です。
- 児玉
- ど真ん中というか、正攻法なカラーを
選んでいただいたことが効いていますね。
いわゆるシャツカラーですから、
今回シャツエプロンが出る流れに
沿っていると思います。
このカラー、この面積で見ると、なおさらいいですね。
- 飯島
- 色を選ぶときは、ほんとうに小さな色チップなので、
想像がつきにくいんですよね。
この色にしてよかったです。
紐とボタンを白にしたのも、
とってもかわいいです。
しかもその紐が長いから、なおさら。
- 児玉
- それもいいポイントになっていますね。
紐の長さは、レディースのデザイナーとして、
外せないところなんです。
- ──
- 飯島さん、児玉さん、
ありがとうございました。
今回も素敵な製品ができあがりましたね。
たくさんのかたに届くといいなって思います。