▲リディアワークスの小林さん

ほぼ日

このマスクケースの素材のフィルム、
KILVIRUS、キルウイルスって、
すごくわかりやすい名前ですね。
銅が使われているのが特徴とうかがっています。
小林さんの会社、リディアワークスは、
ディスプレーなどのお仕事をされているとか。

小林

広告サインやディスプレー印刷・製造の会社です。
「ルーファス」という布製の看板ですとか、
いわゆる機能性フィルムの開発や製造をやっています。
今回、KILVIRUSのロゴやマスクケースの
デザインをしてくださったKIGIさんとは、
展覧会のお手伝いをしたのが始まりなんです。

ほぼ日

じゃあ、フィルムに関してはエキスパートですね。
小林さんがこの「KILVIRUS」を作ったのは、
どんなところから？

小林

コロナ禍っていわれるようになって、
今、世の中に透明なフィルムがたくさんありますよね。

ドアノブや手すり、エレベーターのボタンなどにも
最近付いてると思いますけれども、
使う側からすると、これ何だろう、じゃないですか？

いろいろ貼ってあるけど、
これで本当にウイルスが防げてるのか、
かえって汚れるんじゃないか、とか、思いませんか。

不安なまま使うのもあんまり良くないし、
抗菌加工、抗ウイルス加工っていうものを
みんな選んで買ってるけど、それもどうなのかな、
本当に効くものなのかなと思って、
それなら自分たちで、しっかりした効果のある製品を
提供していきたいという思いから始まったんです。

小林

それで、いろんなところで勉強したんです。
コロナウイルスって、調べれば調べるほど、
普通のウイルスではないことがわかりました。

研究が進むにつれて、
新しい情報もたくさん出てきてますよね。

たとえば、
プラスチックの表面上で３日間生存するとか、
摂氏20度で暗いところなら28日間生存するとか。
紫外線には弱い、っていう話もありますけれど。

ただ、条件が揃うと、けっこうしぶとく、
ものの表面にずーっと居続けるんですよね。
じゃ、そのウイルスをどれぐらい摂取したら
感染するんだろうと思ったんですよ。

ほぼ日

ちょっと触るくらいなら大丈夫かな、
って思いながら電車に乗ってます。

小林

そうですよね。
コロナウイルス研究の第一人者の方たちの
シンポジウムにお伺いしてお話を聞いたんです。

そこでわかったのが、
くしゃみをすると200万個ぐらいウイルスが飛んで、
その200万個のうちの10個から100個を取り込むと、
もうそれで感染する可能性がある。

ほぼ日

えーっ。たったそれだけで？

小林

そうなんですよ。
ものの表面に残ることってかなりリスクが高い。

そこに触れた手にウイルスがついて、
目、鼻、口から入って感染しちゃう。
だから、いろんな人が触るところには、
効果の高いバリアが必要なんだな、って
再認識したんですね。

それで、いわゆる抗菌の製品って、
実際どうなのかを考えました。

小林

抗菌とか抗ウイルスのフィルムって、
銀を使っているものが多いんです。
Ａｇとか、銀イオンってよく見ますよね。
銀イオンって菌に対してはすごく強いんです。
大腸菌とか、カビ菌とか。

でも、ウイルスに対してはそれほどでもないんですね。
いっぽう銅は、ウイルスを直接的に殺していく、
そういう効果が高いことがわかってきていたんです。

ほぼ日

ここで銅が登場ですね。

小林

そうなんです。
銅イオンには、銀イオンと同じように、
細菌に対する抗菌作用があるんですけれど、
もうひとつ大きな力があるんです。
銅イオンと酸素が反応して生まれる活性酸素なんです。

活性酸素って、体内では、
がんのもとになるっていうことで知られてますけど、
ウイルスにもダメージを与えるんですね。
だから細菌にも、ウイルスにも効果がある。
コロナのほか、インフルエンザウイルスや、
ノロウイルスなんかにも効果があるんですよ。

それなら銅がいいじゃないか、と。
それで、いろんなフィルムメーカーに相談したり、
リサーチしてみたんです。

そうしたら、日本のフィルムメーカーに、
試作の銅のフィルムがあるっていうことがわかって。
ただ、まだ市場に出ていなかったんです。
じゃあ僕たちでそれを製品化して、
世の中に提供していきたいと思ったんです。

ほぼ日

これはフィルムに銅が練り込んであるんですね。

小林

そうなんです。
こういう製品って、
コーティングのものもあるんですけど、
コーティングって一種の塗装なので、
使い続けているうちに摩耗して
剝げてしまうっていうデメリットがあるんです。

だからフィルムそのものが成分を含む、
練りこまれているものがいいんですよ。

フィルムを手配し始めたのが、
第一回目の緊急事態宣言が終わった頃、
去年の６月、７月ぐらいで、
市場に提供しはじめたのが１０月くらいでした。

ほぼ日

それ、すごくスピーディーですよね。