次第に日差しがあたたかくなってきました。
きれいで、やさしくて、おいしいものが
大好きなわたしたち。
親鳥であるニットデザイナー・三國万里子さんの審美眼に、
ときめきに花を咲かせる4人が水鳥のようにつどい、
出会ったもの、心ゆれたものを、
毎週水曜日にお届けします。
「編みものをする人が集える編み会のような場所を」と、
はじまったmizudori通信は、
ニットを編む季節の節目とともに一旦おやすみします。
ニット風景も一挙ご紹介です!

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♯001

2020-10-28

こんにちは、三國万里子です。
突然ですが皆さんは帽子をかぶりますか?
わたしはこの頃よくかぶります。
理由があるんです。
今年の5月の終わりくらいから頭にポツポツと
湿疹が出ているもので、
その目隠しにかぶっています。
いえ、ご心配いただくほどのことではないんですよ。
ちっちゃい頃からのアトピー体質で、
時々どこかに湿疹が出るのが
今回は頭に出たっていうことで、
普通に暮らしていればそのうち消えていくのが常です。
そして頭は髪の毛に覆われていますから、
実は大して見えやしません。
それでも電車の中とか
なんだか人目が気になるし、
隠していられるに越したことはないから、
この夏は外出時にはパナマの中折れ帽をかぶって
過ごしていました。
ブリム(ひさし)の部分が短い紳士物の帽子は軽くて
一度かぶるとその存在を忘れてしまうくらい
快適なものだということを知りました。
そして意外とどんな服装にも合うので
すっかり気に入っていたのですが、
夏もとうに過ぎ、白っぽいパナマ素材が
季節外れに見えてきたので、
フェルトの帽子を二つ新調しました。
黒の山高帽(中原中也がかぶってるような)と、
あざやかな青緑(わたしの好きな色で、
同色の靴も持っている)の中折れ帽。
当面はこの二つがあれば事足りるはずですが、
かぶるだけで変身できるような
ちょっとコスプレっぽい楽しさがあるし、
フェルトの帽子についてもっと
知りたい気持ちも湧いてきたので、
ニット帽のシーズンが来る前に
もう一つ二つ買い足すかもしれません。
そういえば少し前のことですが、
ほぼ日のインタビュー記事で丸山敬太さん
「ぼくは、洋服というのは、
助けになってくれるもの、だと思う」と
おっしゃっているのを読みました。
デートの時にかわいくなるために
力を貸してくれる、
コミュニケーションの助けになってくれる、
というようなお話の流れでしたが、
わたしがそれを読んで
すぐに思い浮かべたのがこの帽子でした。
生身の体はどんどん変化するもので、
太ったり痩せたり、病んだり老いたりもします。
そのままの状態で社会の中に出たくない時に
優しくカヴァーしてくれ、
さらに気持ちを引き立ててくれる。
そう意味で「着る」ことに助けてもらうことも、
これから長く生きるほどに
増えていくんじゃないかと、
我が事として思っています。

おしゃれの方向性は人それぞれ。

 
すこしずつ気温が下がってきて、
「おっ、長袖シャツがいける。」
「もしや今日はニットを着られる?」と
毎日の洋服選びがたのしい季節になってきましたね。
Miknitsチームは私シブヤハサウェイもり
女子4人チームなのですが、
おしゃれの方向性がそれぞれなので、
ミーティングのはじまりは挨拶もそこそこに、
今日の洋服の話をしてしまいがちです。
ファッショニスタのシブヤ
毎日「着ること」を楽しんでる!
という気持ちを感じる着こなしで、
出社して彼女の姿を見ると、なんか元気がでるし、
ハサウェイは「かわいいの着てるね」と聞くと、
「友達のブランドで、応援してて、
こんな子なんですー!」と
ストーリーのある着こなし。
とても小柄なもりの着こなしは
いつも体のサイズにぴたり、キャラクター濃いめな
スニーカーなどのアイテムもミックスされて、
こんなに自分に似合う服を見つけられるって
すごい、と唸っています。
(きっとこれからのmizudori通信でみんなの
このへんの話も聞けるのかなー、なんて
勝手にワクワクしてます。)
いわゆる「プラダを着た悪魔」みたいな
世界観のおしゃれ、とはまったく違うけれど
(あたりまえですね‥‥すみません)
みんな着ることを楽しんでいます。
そして!
三國さんがミーティングにいらっしゃった日には
ヴィンテージもののワンピースを着たかと思えば、
OLさんが着ていそうなブランドのカーディガンを
合わせたのちに、
美術館のスーベニアバッグを持ちました、
指輪は100年前以上のものなんだけど‥‥
なんて話を聞いてワクワクしちゃいます。
自分はとくに「着ること」について
自信があるわけではないのですが、
三國さんの話をコクコクと頷いて聞きながら、
Miknitsチームのみんなはおしゃれが好きだな、
いいメンバーだなぁと、
いつも関心してしまいます。
ああ、おしゃれって面白い。
さて、わたしもせめて日々、
気に入りのワンピースを清潔に着なくちゃね、と
せっせとデリケート手洗いに励むのでした。

とっておきの色をみつけにいく。

 
色に埋もれたい。そんな欲求があるので、
身につけるものはあかるく、持ちものも赤や黄色ばかり。
ニットは色彩の世界だとわかったとき、
幸福をかみしめるみたいにmizudoriの
糸と糸の隙間に流れる色のうつろいを眺めていました。
リモートワークがふえ、家での時間がふえるほど、
目の前の景色がほとんど変わらないことに気がつきました。
わたしの仕事は、基本的にPCにむかい、
テキストファイルという白い背景に黒い文字を
打つのみの仕事です。黒い文字を消したり足したり、
言葉の意味がいくら豊かであっても、
そこには色彩がありません。
(文字の意味にあわせて虹色に変わればいいのにと思う)
「これは、自ずから色彩を手に入れなければ!」と
思いたち、近所のお花屋さんへ毎週通うことにしました。
いくつか近所の花屋を周り、
いちばん気のあいそうな主人のところに決めました。
(あいさつが気持ちいい、愛想がよすぎない、
店の看板が「花」と潔いなど)
だいたい1000円以内、気に入った色の花を一輪決めて、
そこに色を組み合わせていきます。
自然から生まれた色は「ピンク色」というグラデーションを
彷徨い、太陽や気温や水や、あらゆる偶然の結果の色。
出会ったことのない色にうれしくなり、
家の中にかざるとたちまち華やぎます。
PC台の近くに花瓶を置いたので、
横を向くだけで色彩が舞いこんでくる。
時間帯によって色がかわるのもすてきです。
花瓶の隣には、お気に入りの展覧会や映画のチラシを
かざることにしました。
お花屋さんを取材した際に、
「この街には色が足りない。花屋が必要だと思った」と
色彩単位で世界をみつめている視点にいいなと思いました。
じぶんにとって、とっておきの色で。
肩ひじ張らず続けられて、
毎日ひそかにパワーをもらっています。

涼しくなってきたので、お外編み物満喫してます!
(柿崎 恵里加さん)

好きな景色を目の前にして、空の下で編むのはたのしいですよね。
お気に入りのニットスポット、増やしていきましょー!


 

“わたしのニット風景”も、募集します。
大人数があつまる編み会がかなわない今年ではありますが、
ほぼ日の中で編みものの進み具合やできばえを
みんなでたのしみあえたら、と思います。
完成した作品のコーディネート、お供のお菓子やお茶など
写真とひとこと添えて送付ください。

送り先→postman@1101.com 件名→わたしのニット風景

10月16日に、文化出版局よりこれまでのMiknits作品の
編み図をまとめた作品集『ミクニッツ 大物編』『ミクニッツ 小物編』
発売されました!ほぼ日ストアでは編み図のおまけがつきますよ。

(次回は11月2日更新予定です。)

2020-10-28-WED

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