糸井

いやぁ、いい自己紹介だったねー！

アフロ

ありがとうございます（笑）。

糸井

俺たちはこういう人ですっていうのに、
ものすごくいい曲でしたね。
考えたでしょ？

アフロ

ええと、考えました（笑）。

糸井

やっぱり（笑）。

アフロ

ワハハハハハ！

糸井

やぁやぁ、きょうはどうはじめようか。
アフロ君とは何度か会っていて、
UKさんとは初めてなんだけど、
ある意味、一番難しい人たちですよ。

中央：アフロさん／右：UKさん

アフロ

そうですか？

糸井

だって、全然わかんないわけですよ。
どうやって作ってるのかもそうで。
友達だからできることっていうのは、
なんとなくわかるんだけど。
「どんなふうに考えてギターを入れるの？」とかさ。

UK

あー。

糸井

アフロ君のことばの部分も、
ほんとうに半径０メートルのことを
レトリックでおもしろくしてますよね。
どうやったら人が聞いてくれるかっていうのが、
全部変化球みたいに入っていて、
本気で全力でバーンッていくんだけど、
ちゃんとユーモアですみたいなところも入れて（笑）。

アフロ

ハハハハ。

糸井

いろんな話はあとでするとして、
まずはそのへんを教えてくれる？　
この曲、どうやって作るのっていう。

アフロ

友達だからっていうのはまさにそうで、
こういう曲を作ろうって
目的地を決めるのではなくて、
「最近こんなことあってさ」って、
それこそゼロ地点からはじまって、
そこに相槌を打つようにギターがあって、
って感じで作れるのがじつは一番よくて。

糸井

うん。

アフロ

だからギターが先か歌詞が先かって
よく聞かれるんですけど、
俺たちの理想のかたちとしては、
会話するように作っていくのが
一番いいんだろうなとは思ってます。

糸井

お笑いの人がネタ合わせするみたいな。

アフロ

そうかもしれないですね。
ボケに対してツッコミの人が、
ツッコミフレーズを入れてくみたいな。
ああ、そうかもしれない。

糸井

「そのツッコミ弱いわ」とか、
「だったら俺こっちでもう一回ボケるわ」って。
そういうことですよね、つまり。

アフロ

そうです、そのとおりです。

糸井

そう聞こえるんですよね、やっぱり。
ギターでおまえ落ち着けみたいなこともやるし、
そのまま飛んじゃったら困るなってときに、
ちゃーんとギターで
「俺は一応聞いてるけどさ」みたいに入ってくるし。

UK

（笑）

アフロ

よく聞いてくださってくれてうれしいです。

糸井

きょうみたいな生演奏だと、
歌詞が全部しゃべってることばで聞こえてくるから、
とくにいいんですよね。
ライブで泣いちゃう人もいるっていうから、
そこはやっぱり音楽なんだろうなあ。
そのへんの秘密を最初に聞きたくなっちゃって。

アフロ

うーん‥‥（UKさんに）どう？

UK

ぼくは歌詞とギターを別々に考えているんです。

糸井

ほう。

UK

そっちはやりたいようにやればいいし、
代わり俺もやりたいようにやるし。
その別々のベクトルが一緒になるので、
ふつうより回収する部分が２倍あるのかなって。

糸井

ふたり、違う道なんだ。

UK

ぼくはそう思っていて、
ひとつのものを作ってはいるけど、
ことばで拾えない部分はギターで拾って、
ことばが好きな人はことばで拾って、
みたいなことができれば一番いいと思ってます。

糸井

そういう秘密は、
歌いながら知っているんですか？

アフロ

うーん、いまのはけっこう
極端なことを言ってるなという印象ですね。

糸井

そうですか（笑）。

アフロ

いまのは一番の軸のところなんです。
UKのギターだけでも
成立するものを作らなきゃいけないし、
俺も歌詞だけ、なんなら歌詞カードを見ただけで
相手に刺さるものを作らないといけない。
お互いひとりでもやれるくらいの
クオリティのものを出し合おうぜ、
ってのが最初のテーマだったので。

糸井

お互いにね。

アフロ

「MOROHA」というのは、
漢字だと「諸刃」になりますけど、
相手をえぐりながら自分もえぐる
っていう意味合いがあるんです。
つまり、両方、どっちからでも切れる。
お互いの切れ味をちゃんと磨こうぜ、
っていうテーマのバンド名なので、
そこはすごく大事にしているところですね。

糸井

そんな知的なことを、
長野の高校生が考えてたの？

アフロ

それは長野に対して角が立ちますよ（笑）。

一同

（笑）

糸井

いやいや、切れる説明だなと思ったんです。
だって俺はもう何もないところで、
おサルのように育ちましたかのように
表現してるわけじゃないですか。
それと、いまの説明の差がすごいなって。

アフロ

でもね、糸井さん。
あの「King Gnu」も長野出身ですから。
井口君と常田君も。

糸井

長野のことを言うつもりはなくて。

アフロ

いや、俺の印象ですけど、
長野って目の前に山がずっとあるんで、
やっぱ閉塞感がすごいんですよ。
つまり、あの山を越えないと
何もはじまらないんじゃないかって気持ちを、
ずっと抱きつづけたまますごせる場所なんです。
なんか長野って、憧れとか野望とか、
野心を育てられる町のような気がするんです。

糸井

「ここを出たい」っていう。

アフロ

そうです、そうです。
俺は東京で長野出身の人によく会うんですけど、
なんか、みんなガッツいた人が多くて。
「わかってもらいたい」が強いというか。
俺の歌詞もそうなんですけど。

糸井

わかってもらいたがってますよね。

アフロ

うん、わかってもらいたい。
「俺のこと知って」がすごく強いのが、
長野出身の特徴な気がしてます。

糸井

ぼくは隣の群馬県出身ですから、
その気持ちはよくわかります。
だからこそ「TOKIO」とかを書くわけで。
その距離感があの曲を作らせるんです。

アフロ

あぁ～。

糸井

MOROHAが長野県のことを言うのも、
ほんとうはどこもそうだよって気持ちが、
じつはあるんですよね。
それで普遍化できちゃうんですよ。
俺のことしか言ってないつもりでも。

アフロ

そうです、はい。

糸井

半径０メートルだよ、それ。
自分さえないぐらいだもん。

アフロ

俺、ドキュメンタリー番組とかで、
仕事に向き合う職人の話とか、
そういうのでガブガブ泣ける人間なんです。
つまり、人が一所懸命やってるってだけで、
そこを汲みとって感動できる器が
人にはそもそもあるって気づいたとき、
「俺、一生自分のこと書いてていいな」
って思うようになりましたね。

糸井

それは長野にいるときですか？

アフロ

東京に出てからです。
長野にいるときはもう、
すべてのよくないことを、
全部長野のせいにしてたので。

糸井

あぁー。

アフロ

糸井さんは違いました？

糸井

まったく同じではないけれど、
ここにいたらこのままだって気持ちはありました。
すっごい生意気な言い方に聞こえるんだけど、
あそこでそのまま年を重ねても、
俺は俺にはなんなかったと思うもん。
やっぱり無理をしないと、
その人の上積みって作れないから。

アフロ

わかります。うん。

糸井

長野にいたままだったら、
いまの歌は作れなかったでしょう？

アフロ

そうですね。

糸井

ギターもそうでしょ？

UK

いやー、そんなことはない。

一同

（笑）

糸井

ここふたり、まったく違うんだよなぁ（笑）。

アフロ

ワハハハハハ！