『MOTHER2 ギーグの逆襲』に登場する
「マニマニのあくま」は謎の多いアイテムである。
いや、アイテムというよりは敵、あるいは概念、
ひょっとしたらテーマと呼んでもいいかもしれない。
ピカピカと怪しげに輝くその黄金像は、
ネスたちの冒険を導くようにあちこちに出現する。
いったい「マニマニのあくま」とは、なんなのだろう?
『MOTHER2』に欠かすことのできないこの像を、
ほぼ日MOTHERプロジェクトで製作して展示したところ、
多くのファンが強い興味を示してくれた。
3月8日から受付をはじめる受注販売にさきがけて、
スペシャルな発売記念企画をお届けする。
糸井重里への特別インタビュー、
テーマはもちろん「マニマニのあくま」について。

申し込みはこちら

前へ目次ページへ次へ

第5回 身勝手さがないとつまらない

──
「マニマニのあくま」に限らず、
『MOTHER』というゲームのなかには、
糸井さんのなかに溶けているさまざまなものが
糸井さん本人すら意図せぬかたちで
にじみ出ているのだなと思いました。
糸井
ああ、そうだねぇ。
意図してないどころか気づいてもないし、
そういうことがかつて自分にあったと
思い出しもしないし、
それを誰にも言う必要がない。
そういうことはたくさんあるよ。
──
はい(笑)。
糸井
たとえば『MOTHER』という
タイトルだってそうですよね。
「MOTHER」について考えることを、
無意識でも、意識的にでも、
ずっとやってきたぼくが、
ジョン・レノンが『MOTHER』という曲を歌ったとき、
「あ、あんたも!」と思った。
それで、違うタイトルでつくったゲームを
『MOTHER』という名前にした。
でも、そんなことをみんなに
わかってもらう必要なんてないんだよ。
そのあと、「MOTHER」ということばには
母艦、「マザーシップ」という
意味を持たせることもできるから、
『マザーシップ』というタイトルに
することもできるなと思ったんだけど、
そこからまた『MOTHER』に戻したんだよね。
でも、それは、「マニマニのあくま」と同じく、
ひとりの幻想というか、
ぼくの身勝手さで決めたことだよね。
でも、そういう身勝手さが入ってないと
作品ってつまらないんですよ。
どんな作品もそういうことの連続です。
これが商品だと、そういう身勝手さがあると
清潔感がなくなるからダメなんだけど、
作品にはそれがあるほうがいい。
──
『MOTHER』シリーズという作品には、
そういう身勝手さを遊ぶ人たちも
ちゃんと受け取ってたのしんでいる気がします。
糸井
そうですね。そしてそれはぼくだけじゃなく、
絵を描いた人や、音楽を作った人の中にも、
それぞれ身勝手さがあって、
ゲームのなかのあちこちにそれが出てますよね。
たとえば『MOTHER2』の敵に
「オレナンカドーセ」というやつが出てきて、
みんなに人気なんだけど、あれはぼくが
「こういう敵をつくってくれ」
って指示したわけじゃない。
絵を描いた人の身勝手さなんです。
絵を描いた人にとっての「マニマニ」なわけだよ。
──
なるほど。

糸井
全体にはぼくの身勝手だと思うけど、
そういう誰かの身勝手さも、
ところどころに混ざってるんです。
だから、辻褄とか伏線回収を重んじる、
ロジカルなディレクターとか
プロデューサーがもうひとりいたら、
『MOTHER2』はどうなっていたかなぁ(笑)。
──
少なくともこうはなってない(笑)。
糸井
そう思いますよね(笑)。
──
最後に「マニマニのあくま」に戻りますが、
あの黄金像は、人の心の中の邪悪なものを
引き出すようなちからがあると思います。
糸井さんは、そういった、
「人のなかに存在する邪悪」
みたいなことについてどう思っていますか?
糸井
邪悪も、世界を構成してる栄養素のひとつだと思う。
たとえば塩分だってそうですよね。
必要だけど、たくさん接種しすぎると生きられない。
邪悪もトゥーマッチになったら排除しなきゃならない。
でもなくせないし、世の中に当たり前のようにあって、
根絶やしにすればなんとかなるっていうものでもない。
──
そうかもしれません。
糸井
ないほうがいいよね、
というふうに歩んでいきたいとは思いますよ。
これは『MOTHER2』の作者だから言う、
ということではなく。でも、無菌室みたいに
掃除しきっちゃうっていうのは、
それはそれで逆邪悪というか。
──
なるほど。
糸井
そこまでちゃんと考えたうえで、
そうはいっても「嫌だよね」ということは、
みんなで表現したほうがいいと思います。
うまく、伝わるかしら。
──
はい、大丈夫だと思います。
糸井
(「マニマニのあくま」を触りながら)
これ‥‥よくできてるね。
これがどこかの家にあると思うと、おかしいよね。
──
そうですね(笑)。
糸井
これを買ってから、
悪いことばかり起こりますと言われないように、
お札とかシールを作ったほうがいいんじゃないかな。
──
たしかに、名前に「あくま」とついてる商品って、
なかなかないですよね。
糸井
そうでしょ。
だから、糸井重里がね、心を込めて封じたい。
ぼくが「封」って書くよ。
それをパッケージに印刷しよう。
──
ぜひお願いします(笑)。
ありがとうございました。
糸井
ありがとうございましたー。

(最後までお読みいただき、 ありがとうございました。)

2023-03-11-SAT

前へ目次ページへ次へ
  • マニマニのあくま

     

    マニマニのあくま

    9,999円(税込・配送手数料別)

     

    サイズ:高さ200×幅64×奥行60mm
    重さ:約350g
    素材:本体/ポリレジン、底面ラバー/PVC、メッキ/水溶性ポリレジン

    販売期間:
    2023年3月8日(水)午前11時から
    2023年3月29日(水)午前11時まで
    販売形式:受注販売
    出荷時期:2023年5月下旬
    海外発送:あり

    ※受注販売期間終了後に変更やキャンセルはできません。
    ※不良品以外の返品交換はお受けできません。

    申し込みはこちら

     

    編集協力:小原久(東京テキスト)

     

    ©SHIGESATO ITOI / Nintendo