報道ではスポットライトが当たりきらない
ひとの姿に目を向けることが
いかにむずかしく、大切なことか、
能登半島地震以降、地域の方からお話を
うかがうなかで、強く感じています。

2024年9月21日の大雨で、
元旦の震災に続いて大きな被害を受けた
珠洲や輪島。

そんななか、
行政の手の行き届かないところまで
活動を続ける方々のいまを
乗組員のやすな が、
ご紹介します。

  • 石川県珠洲市で飲食業を営む4店舗が、
    能登半島地震後に協力しあい、9月上旬に
    「すずなり食堂」をオープンしました。
    場所は、道の駅すずなりの敷地内。
    おなじ仮設店舗のお隣では
    「すずキッチン」がお弁当の販売を
    行っています。

    大雨が降る3日前に、ほぼ日取材チームで
    お伺いしたばかりだったので、
    影響が気になり、お電話したところ、
    すずキッチンでは朝5時からお弁当の販売を、
    すずなり食堂は毎日昼11時からの昼の部と、
    木・金・土曜のみ17時半からの夜の部の営業を
    続けてらっしゃいました。

    取材中、わたしたちは
    朝はすずキッチンでお弁当、
    お昼はすずなり食堂でランチを
    いただきましたが、
    いちおしの海鮮丼は絶品!
    白米とお魚の美味しさはもとより、
    おかずの一品ずつも丁寧に作られていて、
    キッチンで働いてらっしゃる方たちの
    朗らかさには
    いいエネルギーをいただきました。

    スタッフ皆さんそれぞれに
    震災でも大雨でも被害を
    うけてらっしゃるというのに、
    解体業者さんや復興支援で
    珠洲に滞在されている方、
    地域の方たちのすこやかな毎日を支えるべく、
    休みもなく、寝る間も惜しんで
    働き続けていらっしゃる姿には
    頭が上がりません。

    さらに大きな被害を受けた大谷地区へ
    お弁当を届ける活動も始められています。

    さまざまな報道がありますが、
    能登には一生懸命がんばって
    この地に根を張り続ける
    一人ひとりがいらっしゃることが、
    もっと伝わるといいなと思います。


    大雨の直前に伺った取材では、
    輪島で行政の手の行き届かないところまで
    ボランティア活動を続けている団体
    Silbern(ジルバーン)の代表、
    岩本 良さんと出会いました。

    そして、大雨から一週間ほど経った後、
    お電話の際に、
    お話を伺うことができました。

    「地震に続く大雨で、
    復興に向けて頑張ってきたのに、
    ゼロに戻ってしまった
    というような声を聞きます。
    精神的にダメージを受けている方も多く、
    あたたかい食事やお話をする機会など、
    メンタルのサポートが必要だと感じています」

    岩本さん自身の拠点には
    影響がなかったものの、
    100mも離れると冠水している状況で、
    浸水してしまった建物や
    家屋からの泥のかき出しだけではなく、
    避難所での炊き出しも再開されています。

    輪島では仮設住宅に入れることになり、
    つい先週鍵をもらってきたのに、
    部屋が浸水してしまったという方が
    いらっしゃったり、
    珠洲の大谷(おおや)地区では、
    ようやく仮設住居の建設が始まったところが
    頓挫してしまったり。
    先行きを見通せない状況が続いています。

    仕事を再開できず、
    たとえ体が元気でも経済的に厳しく
    たとえ断水が復旧したとしても、
    備蓄しておくための水を買う余裕がない方や、
    災害用給水車まで水を取りに行くのは
    むずかしい高齢者も多くいらっしゃいます。

    今後、12月にもなると雪が降る能登エリア。
    やらないといけない作業は山積みですが、
    人手不足が深刻だそうです。
    「一日だけでも手伝ってくれる人が必要」
    と岩本さん。

    支援団体を通してボランティアをする利点は、
    優先順位の高い作業を進めることができ、
    必要な場所へ物資を
    効率よく届けることができること。

    大きい避難所には
    物資がある程度集まりやすくても、
    在宅避難をしている方や小さな避難所までは
    行き届かないということが
    頻発しているそうです。
    また、地盤がゆるみ、土砂崩れが
    いつどこでまた起こってもおかしくないため、
    地域に密着して活動している団体とともに
    行動すると安全を確保しやすいです。

    地域の方々からは、
    災害直後は県外からの注目が集まっていても、
    時間の経過とともに
    風化してしまうのではないか、という
    心配の声が上がっているとのことでした。

    元旦の地震で海底が隆起し、海岸線が変わった外浦エリア

    なにか復興支援できないかと
    思っていらっしゃる方は
    Silbernの支援ページ
    参考にしていただけたら幸いです。

    被害地から離れた場所に暮らす私たちが、
    いますぐに動けることには限界があります。
    それでも、小さな声に耳を傾ける意志をもち、
    小さくてもできることを続けていく。
    そんなふうな心構えでいられたら、
    と感じました。


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