「ほぼ日」創刊日である1998年6月6日からの
長寿連載「マリーな部屋」の著者・渡辺真理さんが
ただひたすらに「おいしいお菓子を食べて、おしゃべりする」
そんな部活動の第2弾のゲストに、
鈴木保奈美さんをお迎えしました。
保奈美さんと真理さんが、
ふたりの「おすすめおやつリスト」をもとに
集めたお菓子を食べながら、
「目の前のお菓子」について語った4時間(!)、
後半は糸井重里も参加してのトークを、
どうぞたっぷり、おたのしみください。
あっ、お読みになる前に、
お好きなお菓子とドリンクをお手元に。
(たぶん、食べたくなります。)
撮影 浅井佳代子
ヘアメイク 福沢京子(鈴木保奈美さん)・ 石邑麻由(渡辺真理さん)
スタイリスト 犬走比佐乃(鈴木保奈美さん)
illustration koharu
鈴木保奈美(すずき・ほなみ)
俳優。1966年東京生まれ、茅ヶ崎育ち。
1986年デビュー。
1991年に主演したフジテレビのドラマ
『東京ラブストーリー』が大ヒット。
育児休業を経て、2008年に復帰、
俳優業のほか、エッセイ執筆をはじめる。
「ほぼ日」では「ソファみたいなスリッパ」、
書籍『ほぼ日手帳公式ガイドブック2016』に登場。
飯島奈美さんの「365日の献立日記」(NHK)では
ナレーションをつとめる。
渡辺真理(わたなべ・まり)
アナウンサー。
1967年、横浜生まれ。
横浜雙葉小中高、ICU国際基督教大学卒業。
1990年にTBS入社、アナウンサーに。
1998年、フリーとなり、現在に至る。
「ほぼ日」では創刊時から連載「マリーな部屋」で、
好きなお菓子にまつわるエッセイを執筆、
「ほぼ日の學校」では
「渡辺真理の見るラジオ。」をはじめた。
- 保奈美
- 昨年、すごくおもしろいことがあって。
私、そんなにそんなに作らないんですけど、
子どもが小さい頃は
たまにケーキ作りをしていたわけですよ。
私はデコレーションとかできないので、
焼いただけみたいなケーキをね。
お菓子の本もたくさんありますよね。
で、レシピ本見るの大好きだから、
- 真理
- うんうん、はい。
- 保奈美
- それでこれなら自分で作れそうだなって
なかしましほさんのシフォンケーキの本を参考に、
バナナシフォンを作ったりしていたんです。
そうやっていろんなレシピを見てるうちに、
すごくシンプルだけど、確実においしくできる
レシピの本を出してる方を見つけて、
何冊か買って作ってました。
何年か前に、インスタに、そのレシピで作ったお菓子を
載せたことがあるんです。
敬意を表して#(ハッシュタグ)つけて。
そうしたら、その方が
ダイレクトメッセージをくださって!
- 真理
- わぁ。
- 保奈美
- 「私のレシピを使ってくださって」って。
- 真理
- ご本人とつながったんですね。
- 保奈美
- はい、でもその時はそれきりだったんですよ。
ところが私が昨年、『セールスマンの死』っていう舞台で
京都公演に行った時、
その方からまたダイレクトメッセージが来て、
劇場に観に来てくださっていたと。
- 真理
- それはうれしいですね。
- 保奈美
- それで「いつまでいらっしゃるんですか。もしよければ、
楽屋にケーキとか差し入れしたいんですが」
みたいなこと言ってくださって!
- 真理
- ええっ、一層うれしい!
- 保奈美
- ところがお芝居はその日が最終日で。
- 真理
- え、残念・・・。
- 保奈美
- 公演は終わったけど仕事の関係で
2日ほど京都に残ることになっていたんです。
そして、私はその方のケーキを
いつもレシピ本で見てたけれど、
実物はどういうものなんだろうって
とっても強く興味があるわけです。
それで「あなたのケーキをどこかで買えませんか」
とたずねたら、「お店には出してないんだけど、
お教室みたいなのをやっていて」と。
- 真理
- ほぉ。
- 保奈美
- 「よければ、そこに来ていただいたらお出しできます」
みたいなことになって、
- 真理
- うんうんうん。
- 保奈美
- 「行きます!」
- 真理
- いらしたの? それで。
- 保奈美
- もちろんです。
- 真理
- それは、よかった!
で、どうでした?
- 保奈美
- すごく感動して。
自分がずっと何年も、10年くらい?
作ってたケーキの作者ですよ。
だから「ああ、これかあ!」って。
- 真理
- どんなケーキなんですか?
- 保奈美
- すごくね、上品な。
- 真理
- 売ってないんですものね。
- 保奈美
- 売ってない。
- 真理
- 二人きりで?
- 保奈美
- 差しで(笑)。
私と同世代の女性で、
普通に専業主婦をされていて
自分でお菓子作るのが好きでブログにしてたら、
出版社から「本にしませんか」ってオファーがあったんですって。
- 真理
- そういう経緯だったんですね。
- 保奈美
- それで京都でこじんまりやってらっしゃる。
その方がメッセージをくださったおかげで。
- 真理
- いいお話。短編小説みたい。
- 保奈美
- 雨の京都で、バスに乗って行ってきました。
- 真理
- それも絵になりますねぇ。
- 保奈美
- うん。お菓子でこんなつながるなんて!
- 真理
- いいですね、お菓子がつないだご縁。
好き、がつなげてくれた出会いでもあって。
- 保奈美
- たとえば
ずーっと『LIFE』を読んでいて、
一度、実際の飯島奈美さんのカレーを
食べてみたいんだけどなって思うじゃない?
- 真理
- 思いますよね、それは。
- 保奈美
- それで、自分がレシピ読んで作ってたのと
同じかどうか、どこが違うのかを知りたいと思う。
- 真理
- うんうん、知りたい。
- 保奈美
- それと同じことができちゃったって、
すごい稀なことだと思って。
- 真理
- ずっと、どこかで願ってたことが
期せずして叶うって、うれしいですよね。
じゃあ、京都にいらしたら、
また会えるかもしれない?
- 保奈美
- うん、会えるかもしれない。
- 真理
- あるんだなぁ、そんなご縁って。
- 真理
- 保奈美さん、インスタはいつ始められたんでしたっけ。
- 保奈美
- ええと、あれはいつでしたっけ。
『大人の事情 スマホをのぞいたら』という映画を
撮影していた時だから
コロナのちょっと前ですね。
2019年だと思います。
- 真理
- 保奈美さんのインスタきれいですよね。
っていっても、私、SNSしないから、
夫にいつも見せてもらうのですけど。
- 保奈美
- (笑)
- 真理
- そうやってお菓子でも、
インスタとかだと、
つながりたい人とつながっていくんですね。
- 保奈美
- 私、そのときに初めて、
「うわあ、インスタやっててよかったな」と思って。
直接Emailだと、もうちょっと構えちゃう‥‥。
- 真理
- うん、ちょっと。
距離があるし、業務的になりがちだし。
- 保奈美
- インスタも、いただくDMに
お返事ができずにいますけれど、
意外と「おっ」ってつながることがあるんだなって。
- ──
- 真理さんはないんですか、
お菓子にまつわるいい話。
- 真理
- 私? えーと‥‥
ないんですよね。すみません‥‥。
多分、1人で「おいしいなぁ」と思いながら
食べて満足してることが多いから、
つながらないんですよね、どこにも。
- 保奈美
- え、1人で食べてる?
- 真理
- はい。「ああ、なんておいしいんだろう」と思いながら。
前に、ラジオに糸井さんに来ていただいたとき、
ブースの中の私を見て、
「齧歯目(*)のようにそこにいるね」って
おっしゃったことがあって。
- 保奈美
- (笑)
- 真理
- そのときは、齧歯目? ってわからなかったんですけど、
あとから、あまり外界とコンタクトしないで、
ただただクルミを食べるみたいなことかな、と。
地球上でもっとも繁栄している哺乳類。
別名「ネズミ目」。
ネズミ・リス・ヤマアラシ・ビーバーなど、
物をかじるのに適した歯と顎を持ち、
多くは種子などの植物質を食料とする。
いくらかじっても、一生涯、
その歯がなくなることはないらしい。
- 真理
- だから、「マリーな部屋」も、
そうとうクローズド(閉鎖的)ですよね。
糸井さんの、「真理ちゃんは普段ぼーっとしてるけど、
お菓子のときだけ覚醒するから、お菓子のこと
書いてくれない?」っていうひと言から、
「はーい」と思って書き始めたら、
ほぼ日がどんどん大きくなって。
その間も、一人、屋根裏で食べて続けてるだけだから、
1つもいい話はない(笑)。
何もつながらなくて、本当ごめんなさいと思ってて。
「マリーな部屋」も取材用で買ったものは1個もなくて、
私利私欲で買ってるので。
- 保奈美
- 私利私欲(笑)。
- 真理
- ほぼ日の創刊日から連載を始めて、
ずっとそのままです。
(つづきます)
2023-03-18-SAT