
人生の冴えないワンシーンを絵に描いて、
日々、Twitterに
アップしている人がいます。
イラストレーターの大伴亮介さんです。
いくつかの作品に共感し、
インタビューしにうかがいました。
桜の季節の井の頭公園という
居心地最高のシチュエーションもあって、
インタビューというより、
ただのおしゃべりになってしまいました。
春の陽気と、初対面の大伴さんと、
その日の自分の波長が、
なんだか妙に合ってしまったんですよね。
どうぞのんびり、お付き合いください。
担当は「ほぼ日」奥野です。
- ──
- 大伴さんの「ワンシーン画」って、
何か、次々見ちゃうんです。
- 大伴
- あ、ありがとうございます。
- ──
- すごく共感した作品がありまして。
- 大伴
- どれですか。
- ──
- CDケースのツメが折れてちゃって、
ゆるゆるになっちゃうっていう。
- 大伴
- あー。はいはい。
ケースの爪が折れてCDがゆるゆるになってしまったシーン
- ──
- ここ割れるとどうしようもないんですよ。
じんわり残念な気持ちになります。 - 大昔に買った‥‥やたら安いCDの場合、
こうなりがちだった気が。
- 大伴
- いわゆる「安っぽいCD」は、
はじめからこうなってることもあります。
- ──
- 「店頭」の時点で、すでにこの状態。
- 大伴
- 素材が適当なんでしょうね、きっと。
それか「再利用」してるか。
- ──
- とにかく、
この作品を見たときに取材を決めました。 - とても「好み」です。
- 大伴
- ハハハ。こういうの好きですか。
- 安っぽいCDって、このツメの隙間から
白い紙がのぞいてたりしませんか。
- ──
- ああー、する。チラ見えしてる。
- あの「白」に、隠しようのない
「ニセモノ感」が漂ってるんですよね。
- 大伴
- 「歌詞カードが、
ケースのツメをまたいでしまうシーン」
というのもあります。
「歌詞カードがケースのツメをまたいでしまうシーン」
- ──
- あるある。ある。ポコッてなっちゃうんです。
それかツメが折れちゃうか。 - いずれにしても、これも軽く残念です。
- 大伴
- 将来、CDという記録媒体が淘汰されたら、
人類から失われてしまうシーンです。
- ──
- 一転して、この「ハトがどかない」も好き。
「逃げようとしないハトに負けてブレーキをかけたシーン」
- 大伴
- あれ、何でどかないんですか。ハトは。
- ──
- わかりませんけど、困りますよね。
- どくかなどくかな‥‥どかないのかー!
って急ブレーキかけたりしてます。
- 大伴
- ギリギリまで逃げないんですよね。
- ──
- 人間は止まるって知ってるんですかね。
- 大伴
- 性善説で生きてるのかも。
- ──
- ハトがですか。人間を信用してるんだ。
平和の使者だから。
- 大伴
- 奥野さんの好みが、わかってきました。
これなんかどうですか。
「刺身盛りの内容をいっぺんに説明されすぎて最後の2つくらいしか頭に残らなかったシーン」
- ──
- どんなコンシェルジュですか(笑)。
- でも、これも「あー」と思いました。
えらい早口で言われるから、
とうてい、覚えきれないんですよね。
- 大伴
- たいがい「これ、なんて言ってた?」
ってなります。食べながら。
- ──
- 店員さんにしてみたら、
こっちの会話を中断させている手前、
早く説明しなきゃって
少々焦ってるのかもしれないですね。
- 大伴
- 親切なお店の場合は、
ネタごとに、名前の書かれたお札が
立ってたりするんですけどね。
- ──
- あと、これ。
テトリスの棒がぜんぜん来ないやつ。 - ひとりでジリジリさせられて、
ゲーム機に遊ばれてる感じあります。
よりによって正方形かよーみたいな。
「棒がぜんぜん来ないシーン」
- 大伴
- で、やっと棒が来て、
一気にブロックを消し去ったときの、
あの爽快感と言ったら。
- ──
- わるいものがぜんぶ出たみたいなね。
デトックス感さえあります。
- 大伴
- シチューの翌朝、こうなりませんか。
「冷え固まったシチューからおたまを引き抜いたシーン」
- ──
- あはは、昨夜のシチューが固まっちゃって。
- 大伴
- ゴボォ‥‥って抜くのが快感なんです。
- ──
- 大伴さんの「ワンシーン画」って、
いわゆる「あるあるネタ」なんでしょうか。
- 大伴
- なるべく「あるある」とは言わないように、
しているんです、自分では。 - それ言うとハードル上がっちゃう気がして。
- ──
- なるほど。
- 大伴
- もうちょっと、さりげないものでいたくて。
- それに「ホラホラ、おもしろいでしょう?」
みたいな気持ちでは描いてないし。
- ──
- そういう感じとはちがいそうですね。
- 大伴
- 人生のワンシーンを切り取っただけなので。
- ──
- じゃ、ワンシーン画って、
ご自分の人生に起きてきた「ある瞬間」を、
忠実に描いている‥‥だけ。
- 大伴
- そう、自分の人生に起きたことが基本です。
そこにウソ偽りはありません。
- ──
- ちょっと「残念な気持ちになるシーン」が、
こう見ると、多いですよね。 - なんというか、人生の悲哀‥‥ペーソス系。
- 大伴
- そこは大切にしているところです。
ハムを取り出そうとすると必ずちぎれたり。
「ハムがちぎれて取れるシーン」
- ──
- あー、悲しい。これはガッカリです。
- 大伴
- ツイッターで発表したら反応が良くて、
みんな悲しんでいたんだと思いました。
- ──
- なぜか最後まで開けたくないんですよ。
ハムのパッケージって。
- 大伴
- 乾いちゃう気がするんですかね。
- ──
- 半分くらいまで開けて、
その隙間から無理に出そうとするから、
ちぎれちゃうんですよ。
- 大伴
- チーズもこうなりがちじゃないですか。
「スライスチーズがちぎれて取れるシーン」
- ──
- なるなる。よく見ます、こうなってる光景。
- ようするに「ワンシーン画」って、
日常生活における「ちいさな不満」ですね。
- 大伴
- そこを積極的に拾ってるかもしれないです。
「ラップが箱から抜けたシーン」
- ──
- ラップが箱から抜けてしまうことも、
非常に残念ですけど、
こう言ったら何なんですけど、
大手メーカーのものは、
こんなふうにはなりにくいんですよ。
- 大伴
- ちゃんとつくってるんでしょうね。
- ──
- 安くてテキトーなラップの場合には、
こうして抜けたり、
歯の部分がヨレヨレになったりして。
- 大伴
- それがクオリティということですね。
- ──
- そう思うと、
ワンシーン画が描いてるシーンって、
「商品の改善ポイント」
であるとも言えるかもしれませんね。
- 大伴
- あ、そうなんです。
- ──
- 製造メーカーのみなさん、
ぼくたちはここに困っていますよと。
- 大伴
- まさしく、そうなんです。
ど れ く ら い、身 に 覚 え あ り ま す ?
日替わり!ワンシーン画 SLIDE SHOW
001
(つづきます)
2019-08-05-MON
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書籍
『ワンシーン画 大全集 Vol.1』を
10名のみなさまにプレゼント!大伴亮介さんが自費でおつくりになった
『ワンシーン画 大全集 Vol.1』を、
「連載を読んでくださった
ほぼ日読者のみなさまに‥‥」と、
ご提供くださいました。売れ行き好調につき
増し刷りもされたこの作品集を、
10名のかたに、プレゼントいたします!
大全集というだけあって、
70を超す「人生のワンシーン」を掲載。
ご希望の方は、
以下のフォームからご応募ください。
ワンシーン画や
連載への感想も添えてくださいますと、
大伴さん、とってもよろこびます。なお、この作品集は
こちらのページで好評絶賛発売中!応募の締切は
2019年8月19日(月)午前11時まで。
当選された方にのみ、
2019年8月20日(火)中に
メールでご連絡いたします。