蓄音機が生み出す音楽を聴いたことがありますか?
ない、という方は、ラッキーかもしれません。
だって、これから「人生初」の体験ができるのですから。
知る人ぞ知るSPレコードコレクターの三浦武さんが、
長年にわたって集め、聴いてこられた
大切なコレクションのなかから、
「初めての人に、ぜひ聴いてほしい!」という
選りすぐりの名盤をピックアップ。
愛用の蓄音機で聴かせてくださいます。
そもそも蓄音機とは何なのか?
というお話から、蓄音機のたのしみかた、
演奏家たちの魅力やレコードの薀蓄など、
おもしろい語りを交えてお聴きいただきます。
100年前のBarのカウンターに座った気持ちで、
蓄音機の響きに身をまかせてください。
参加者を募集するにあたり、三浦さんに
蓄音機の魅力を語っていただきました。
三浦武(みうらたけし)
河合塾という予備校で「現代文」を教えている(とはいうが、授業はおおむね漫談)。「小林秀雄」と「ヴァイオリン」、その愛読と愛聴に人生を捧げる。その他いろんなものに捧げる。1961年生、福島県喜多方市出身。
-
― イベント概要 ―
はじめての蓄音機
三浦武さんの手回し演奏会
〜100年前のBar カウンターへようこそ〜
・日時:2021年6月21日(月)
昼の部 13:00~14:30
夜の部 18:30~20:00
(昼夜とも同内容、多少の延長の可能性あり)・会場:神田ポートビル2階
(東京都千代田区神田錦町3−9)・販売座席:昼の部、夜の部、各40席
・チケット:3,300円(税込み)
※今回のイベントの配信はありません。
※申し込み前に必ず下記の開催概要をお読みください。●はじめは「録音機」だった蓄音機
- ――
- 蓄音機とは、いつごろの道具なのですか?
- 三浦
- 1877年12月6日、
トーマス・エジソンが叫ぶようにして歌った
「メリーさんの羊」、それが「すべての始まり」です。
音の「正体」は振動ですから、
その振動を記録できれば「録音」になる。
エジソンは、お茶筒のようなドラムをぐるぐる回しながら、
そこに自分の歌声を刻み付けました。
そしてこんどはその溝を針でたどった。
かすかに聞こえてくる「メリーさんの羊」……
たちまちみんなひっくりかえった、というわけです。 - もっとも、まだ、蓄音機の時代、
というわけにはいかない。
音を記録し保存する偉業をおこなったに過ぎない。
「お茶筒」の着脱・交換が可能になり、
ライバルであったベルリナーが、
「お茶筒」に代わる円盤型のレコードを作り出し……
20世紀に入る頃には、
驚くほど豊かで濃密な音が
聞えてくるようになりました。
それから約50年、おおむね20世紀前半が、蓄音機の時代です。
(今回使用する蓄音機:HMV157……1930年頃、英国製。)
「小型のものですが、
蓄音機の魅力は十分にお伝えできるかと存じます。」- ――
- へええ、そうなんですね。
予備校の現代国語の先生である三浦さんが
蓄音機とSPレコードに
はまったきっかけを聞かせてください。
- 三浦
- 28歳、ですからもう30年以上も前です。
近所の路地裏をぶらついていたら、
すぐそこで弦楽器の音が鳴ったのです。
聴いたことがない音、ナマではないが、
しかし、なんだかすごいリアリティで、
「これは何だ!?」と音の方に目をやると、
小さな庭に向いた縁側のカーテンが揺れて、
おじさんが顔を出した。
「いい音でしょ。聴いていかれません?」とおっしゃる。
そして「知ってる? 蓄音機」と。
それがわたしの「すべての始まり」でした。
当時のわたしは、
音楽といえばボブ・ディランやローリング・ストーンズ、
それらは今でも好きですが、
クラシックなどにはほとんど無関心だった。
そのわたしが蓄音機から流れるヴァイオリンの音に、
打ちのめされた。
その日、その場で、はまりましたね。
アパートの電気を止められるくらいお金に困っていたのに、
その蓄音機を言い値で譲ってもらいました。
どうやって払ったのだったか、
ちょっと思い出せない(笑)。
●SPレコードは何で出来ている?
- ――
- それ以来ですか、希少SPレコードを
世界中から集めていらっしゃるとか。
- 三浦
- 必ずしも集めているというわけではない。
数はそんなにないのです。
ただ、欲しいとなれば何年でも探し続ける。
そんなことをしていると、
いつの間にか国境も越えてしまう、と(笑)。
もっとも、お金があれば買えるというものでもない。
心底、いい、と思うような盤は、
そもそもあまり市場に出ないのです。
たぶん、ヨーロッパあたりの
筋金入りのコレクターが手放さない。
ひとりで抱え込んで、
暗い部屋でニタッと笑っていたりするにちがいない(笑)。 - ですから、いちど手に入れたら、
大事なものはいくら積まれても手放さないでしょうね。
貴重な盤は、いわば相場のない世界で、
ちょっと骨董品と似ているかもしれません。
自分で値付けができないといけない。
自分はそれにいくら出す覚悟があるか。 - SPレコード自体はたくさん遺されています。
ただLPと違ってSPレコードは壊れやすいし、
なかには、後世に遺すためにこそ録音された
というような、志の高い盤があって、
そういうものは最初から数が限られていたりする。
そういう歴史的な名演奏の
ナマの音と空間が封じ込められたSPレコードは、
本当に魅力的で貴重なものなんです。
(お手持ちのコレクションを少しだけ、見せていただきました。
当日どんなレコードが登場するか、どうぞおたのしみに!)- ――
- 素人の質問で恐縮ですが、
LPとSPって壊れやすさが違うのですか?
- 三浦
- LPはビニールだから割れにくいのです。
針も軽くおろすので盤も傷まない。
SPは落としたら割れます。
針のついたサウンドボックスというものを
どっしり落としてかけるのです。
鉄の針も数分で摩耗しますし、
盤もわずかに削れます。
SPレコードは、
おのが身を削って音楽を創り出している、
というわけです。
- ――
- SPは何でできているんですか?
- 三浦
- シェラック(shellac)といって、
ラックカイガラムシが分泌する
樹脂状の物質なんだそうです。
それが主原料。
- ――
- 虫! 知りませんでした!
そういう話も、当日、聞かせてください。
- 三浦
- はい。いろんなおしゃべりをしましょう。
しゃべらせてください(笑)。
最後にひとつ申し上げておきたい。
エジソンが構想して実現したとおり、
空気中の振動である「音」を針に伝えて溝を刻めば
「音」は不滅となり、
刻まれた溝を針でたどれば、
「音」は蘇る。
つまり、蓄音機はタイムマシンのように、
時空を超えて、
失われたはずの過去を届けてくれます。
そして、それは、
今日では「高尚な趣味」のように
扱われることの多い芸術が、
もっと「切実なもの」であったことを
思い起こさせてくれる音でもあるのです。
蓄音機からあふれる音楽に身を委ねながら、
そんなこともお伝えしたいと思っています。
【開催概要・チケット購入について】
[チケットについて]
■開催日時
2021年6月21日(月)
昼の部: 13:00~14:30
夜の部: 18:30~20:00
(昼夜とも同内容、多少延長の可能性あり。)■出演
三浦武さん■場所
ほぼ日の學校
千代田区神田錦町3-9
神田ポートビル 2F(受付)■入場料
3,300円(税込)■販売席数
昼の部、夜の部、各40席(全席自由)■チケット申し込み
2021年6月3日(木)午前11時受付開始
(売切れ次第終了)・チケットは、e+にて販売いたします。
・ご購入には、e+へのご登録が必要となります。
・お一人様2枚までご購入いただけます。
・募集人数が限られておりますので、
確実に来ることができる場合のみご購入ください。
・当日券を出す場合は、
ほぼ日のツイッターにてお知らせいたします。
・チケットの転売はご遠慮ください。※今回のイベントの配信はありません。
[その他のお知らせ]
■当日の入場について
・当日30分前に開場し受付を開始いたします。
(それ以前の時間にはご入場いただけません。)
・発熱や味覚障害などの症状のある方は
来場をお控えください。
・ご来場時は、必ずマスクをご着用ください。
・受付時に、非接触型体温計にて検温させていただきます。
(37.5度以上の方はご入館をご遠慮いただきます。)
・ご入場の際、除菌用アルコールをご利用ください。■座席について
・全席自由です。■場内撮影について
・当日は映像、写真や音声が収録され、
編集したものがほぼ日刊イトイ新聞WEBサイト、
ほぼ日の學校のアプリ、その他の媒体、
TwitterやFacebookなどのSNSで
公開されることがあります。
・映り込みがNGな方はチケット購入をご遠慮ください。
・開演後の許可されていない撮影ならびに録音は
禁止とさせていただきます。■公演のお申し込みの問い合わせについて
・school-event@1101.com宛に
「はじめての蓄音機」という件名でお送りください。
なるべく早くお返事いたしますが、
お待たせすることもございますこと、ご了承ください。※今回のイベントの配信はありません。