『&Premium』という雑誌があります。
よりよい生活のこと、
ていねいに暮らすことについて考える『&Premium』は、
いわば「ほぼ日」の友人のような雑誌です。
「生活のたのしみ展」でごいっしょしたときには、
編集長が糸井重里に
こんなインタビューを行ってくださいました。

さて、柴田隆寛さんです。
柴田さんは『&Premium』のエグゼクティブディレクターを
創刊から約3年半にわたって務めたかたです。
現在は、雑誌『栗原はるみ』
のクリエイティブディレクターを務めるほか、
広告・ブランディングなど、ジャンルやメディアに縛られず、
「広い意味での編集」を様々に行っていらっしゃいます。
つまり、わたしたち「ほぼ日」は、
柴田さんの審美眼を勝手ながらとても信頼しています。
柴田さんが「いいな」と思ったものは、
「ほぼ日」も同じように感じることが多いと思っています。

そんな柴田さんが「ROTOTO(ロトト)」の
ブランディングディレクターを担当していると知り、
お話をうかがいました。
柴田さんは「ROTOTO」のどういうところに
「いいな」と感じられたのでしょう?

  • ──
    柴田さんは、
    ROTOTOの靴下を愛用するユーザーであり、
    ROTOTOのブランドづくりも
    手がけていらっしゃるということですが、
    それはブランドの最初から? 
    柴田
    いえ、ぼくが関わったのは途中からです。

    ──
    どのようにしてROTOTOと出会ったのですか? 
    柴田
    あれは何年前だったか‥‥
    季節は秋だったと思います。
    北海道に出張する仕事があったので、
    あたたかい靴下を探していたときに、
    渋谷ヒカリエでROTOTOの靴下を見かけました。
    「奈良の靴下ブランドです」と、
    きちっとした打ち出しをされているのが
    気になって手にとったのが最初の出会いです。
    ──
    最初に買った靴下はどのモデルですか? 
    柴田
    品番 R1001の、
    「ダブルフェイス クルーソックス」です。
    ROTOTOにとっては、
    リーバイスの「501」のような存在で、
    ブランドスタート時からある
    スタンダードアイテムです。
    実際にさわってみて、
    しめつけがない素材感と、
    スウェットのような肉感が新鮮でした。
    裏毛のこういう靴下を見たことがなかったので、
    まず「R1001」を買いました。
    ──
    実際に履いてみてどうでしたか? 
    柴田
    北海道の出張で履いたら、
    すこぶる調子がよかったです。
    いっしょに行ったカメラマンにもすすめました。
    そのあとすぐに
    「R1001」を何足か追加しました。
    ──
    いいと感じたのは、
    機能ですか、見た目ですか?
    柴田
    見た目の感じもかなりいいですけど、
    これほど履き心地のいい靴下はなかなかないぞと。
    秋でも北海道は寒いじゃないですか。
    でもぜんぜん大丈夫でした。
    クッション性もあるので足にやさしいし、
    すごく気持ちよかったんですよね。

    ──
    そのあと、
    柴田さんはどういう経緯で
    ROTOTOのブランディングに関わることに?
    柴田
    2011年から『TOOLS』という
    衣食住を創造する道具の本を
    編集をしているのですが、
    2019年に3冊目を出すことになりました。
    その本で、ROTOTOの靴下を紹介したくて、
    貸し出しをお願いしたんですよ。
    オーガニックコットンの3足シリーズを
    紹介させていただきました。
    それがきっかけです。

    ──
    なるほど、貸し出しのお願いを。
    柴田
    それで、いっしょに仕事をするデザイナーが
    勤める会社の本社が大阪にあるんですけど、
    その本社のとなりのビルに
    当時ROTOTOの事務所があったんですね。
    ──
    たまたま。
    柴田
    そう、たまたま。
    で、ある日、
    ROTOTOからそのデザイナーに、
    「ロゴを変えたい」
    という相談があったんですよ。
    ──
    それは、ちょっとご縁を感じます。
    柴田
    自分もROTOTOを知っていたので、
    「それ手伝いたいよね」
    っていう話になって。
    最初はブランドのロゴを変えることからはじめて、
    ブランドのステートメント(声明文)や、
    ホームページの表現
    ギフトボックスといった、
    ブランディングに関わることを
    お手伝いさせてもらうようになりました。
    ──
    靴下の愛用者からはじまって、
    そのあとご縁でつながったんですね。
    柴田
    そうですね。
    ROTOTOというブランドを客観的に見て、
    ここはこうしたほうが伝わるんじゃないかとか、
    余計なお節介をするのが仕事です(笑)。

    ──
    アイテムもいっしょに考えたり?
    柴田
    いえ、アイテムを考えるのは
    ROTOTOのデザイナー、石井さんです。
    ぼくらがアイテムで関わるのは‥‥
    たとえば、
    「ねむるときの靴下がほしい」とか。
    ──
    あくまでユーザーの立場で。
    柴田
    ええ。
    自分も冬に寝るときに靴下を履いていたし、
    身近な女性の多くが
    足の冷えに悩んでいたので、
    「眠り用の靴下をつくってほしいです」
    という話をすると、
    石井さんがそれをデザインして、
    奈良の工場さんと話し合いを重ねて、
    かたちにしていくんです。
    ──
    「スリーピングソックス」のことですね。
    そうですか、
    あのソックスは柴田さんたちの声から‥‥。
    柴田
    ROTOTOの靴下は、物がいいので、
    眠りも含めて日常のあらゆるシーンで、
    心地よさを提案できるんですよ。
    ──
    機能や品質という意味で物がよくて、
    そのうえ、おしゃれです。
    柴田
    デザインのことでいうと、
    石井さんのソックスには
    アメリカのカジュアル的な要素が
    落とし込まれているんです。
    わかる人にはわかる感じの落とし込み方で、
    ほかにない魅力だと思います。
    そこがぼくはすごく好みで、
    石井さんが次にどういう靴下をつくるのか、
    常にたのしみにしています。
    ──
    柴田さんはやっぱり、
    まずはROTOTOのファンなんですね。
    その上でブランディングに関わる。
    愛用者とデザイナーという関係で、
    どのようにして
    ブランドイメージを決めていくのでしょう。
    柴田
    そこはやはり話し合いです。
    ──
    徹底的な。
    柴田
    そうですね。
    そうしてたどり着いたのが、
    「一生愛せる消耗品」を作り続けるという
    コンセプトでした。
    ──
    「一生愛せる消耗品」。
    サイトで拝見しました。
    「日常の中に小さな幸せを見つけられるだけで、
    人生はきっともっと楽しくなると思う。」
    という書き出しからぐっときました。
    なんていうんでしょう‥‥
    ちいさなうれしさをしっかりと見つめて、
    毅然と示しているようなコンセプトで。
    柴田
    ありがとうございます。
    そのコンセプトから、
    ビジュアルを日常的な表現にしました。
    ギフトボックスは、なるべくゴミを出さないために、
    FSC(森林管理協議会)の認証紙で
    ダンボール箱をつくれるところを探しました。
    EC(ネット通販)の場合は接客ができないので、
    なるべくていねいに届けようということで、
    「挨拶をするギフトボックス」にしました。
    箱を開けるとメッセージがあります。

    ──
    ああ‥‥いいです。
    箱ひとつにも、コンセプトが込められていて。

    柴田
    ROTOTOがすごいところは、
    ものづくりのハウトゥが
    きっちりしてることです。
    「なんとなくおしゃれ」ではなくて、
    「奈良のこの工場はこの技術をもっているから、
    こういいう靴下ができる」
    ということを
    デザイナーの石井さんが編集して、
    日常とともにある「一生愛せる消耗品」を
    きちっとつくっています。
    ──
    足腰が、がっしりしている。
    柴田
    たとえば、
    「ダブルフェイス クルーソックス」。
    ──
    はい、ROTOTOの定番。
    柴田さんが最初に出合ったソックスですね。
    柴田
    それの表裏を逆にしたのが
    「スリーピングソックス」なんですが、
    これを編める工場は、
    奈良に一軒しかないんですよ。
    ──
    そうなんですか‥‥。
    なるほど、その工場の特徴を
    石井さんが把握しているから
    うまれたソックスなんですね。
    ROTOTOのアイテムはそれぞれすべて、
    そうやって工場の特徴との
    組み合わせで誕生している。
    柴田
    はい。
    奈良で生まれ育った石井さんと
    奈良の靴下産業で働く方々との
    関係性があってできているんです。
    ──
    あらためて、すごいと思います。
    柴田
    石井さんは
    ROTOTOというブランドが成長することで
    奈良の生産者さんたちの仕事が増えるという、
    地域社会の課題的なことも考えています。
    以前のROTOTOは本社が大阪にあったのですが、
    奈良に還元をしたいという思いから、
    本社を奈良に引っ越しました。
    ──
    はあー‥‥。
    柴田
    現在は奈良の本社と
    東京のショールームという小さなチームで、
    海外にも物を届けています。
    ──
    奈良の靴下が、ROTOTOを通して
    世界中にデリバリーされているんですね。
    柴田
    ECでも卸先でも海外比率が高いですし、
    海外の展示会にも参加しています。
    ヨーロッパやアメリカでも、
    このクオリティが
    受け入れられているんですね。
    ──
    ああ‥‥それは、
    奈良の工場の人たちもうれしいでしょうねぇ。
    柴田
    そうですね、ほんとうに。
    奈良が世界的に有名な、
    靴下の聖地になればいいなと思います。
    ──
    ROTOTOをきっかけに。
    柴田
    はい。
    ──
    そんなROTOTOのソックスを、
    今回ほぼ日でも販売できることになりました。
    一助になればうれしいです。
    柴田
    ほぼ日読者さんという、
    新しいROTOTOファンが増えるといいですね。
    「一回履いてみてよ」って、
    安心して人に勧められる靴下ですから。
    ──
    履き心地がいいし、かわいいし、丈夫だし。
    柴田
    ええ、ROTOTOは
    大切な人に贈りたくなる靴下です。
     
    (柴田隆寛さんへのインタビュー、終わります)