それまでの「なにかとうまくいかない」ことには、
どうやら理由があった‥‥
ADHD (発達障害)だとわかってから、
葉っぱとデザインナイフに出会った。
そこから湧き出すような創作がはじまります。
大人気の葉っぱ切り絵アーティストの
「じぶんのはなし」は、なんだか勇気をくれます。
動画で配信中の「ほぼ日の學校」の授業の
一部を読みものでご覧ください。
-
一枚の葉っぱで完結させる。
- ほぼ日
- リトさんの作品を見ていきたいと思います。
この作品は、2021年7月の作品ですね。
- リト
- これは大変だったなぁ。
- ほぼ日
- 作品を見ると思うんですが、
「自立している」というのはすごいですね。
- リト
- そうなんですよ。
これは僕のこだわりで、空にかざして撮る都合上、
葉っぱを片手に持って、立たないと撮れないんですよ。
それがおもしろいなと思ってて、
立たなくていいんだったら、どうにでも作れるんですよ。
キャラクター達を切り離しちゃってもいいわけで。
でもそれは、僕の中では邪道で。
- ほぼ日
- なるほど。
- リト
- この「一枚の葉っぱ」で完結してることが
僕の売りだと思うので、
2枚の葉っぱをくっつけたりすると、
僕のルールは崩壊しちゃうんですよ。
「一枚の葉っぱで」なんとかつくります。 - そのための僕のアイディアの一つとして、
真ん中の軸となる太い葉脈を残す。
そうすると、こんなに細くてもピンと立つんですよ。
- ほぼ日
- これどうなってるんですか?
音符のところとか、すごいですね。
- リト
- 真ん中の軸さえ残しておけば、
そこを通したときに何でも立つんですよ。
そのことに、やってるなかできづいて。
- ほぼ日
- (笑)
- リト
- 鳥を飛ばしてみたり、
流れ星がビュンと流れていったり、
なんでも行ける!と思って。
これにきづいたのはデカかったですね。
- ほぼ日
- 成功した作品の裏には、
何十枚もの失敗があるわけですね。
- リト
- ありました。
これ真ん中だから成立するんですけど、
右とか左に棒があっても、
ベロンと傾いちゃって全然立たないですよ。
太い葉脈を残すと、
しっかりピンと立つんだという、葉っぱの強さですよね。
- ほぼ日
- これは奇跡の一瞬じゃなくて、
立ってるということですか?
- リト
- 立ってます。
何枚でも撮れます、この写真。
- ほぼ日
- はぁー。
- リト
- これはアイビーという「つたの葉っぱ」なんですけど、
最初は使っていなくて、
フォロワーさんから、たまたま送ってもらって、
使うようになったんです。 - 「私のところに、いろんな葉っぱがあるので、
ぜひ使ってください」と。
せっかくもらったから、
使わないのも申し訳ないなと思って、
電車の作品かなにか作ってみたら、
思った以上に、アイビーが使いやすくて、
それから使うようになりました。
いまじゃ、僕の中で主力になっちゃって。
その方のおかげですよね、
アイビーの良さにきづけたのは。
- ほぼ日
- いまは、何種類ぐらいの葉っぱがあるんですか?
- リト
- サンゴジュとアイビーの2種類です。
サンゴジュはいわゆる
葉っぱらしい形の長い葉っぱです。
- これがそうです。
サイとカエルと。
ただサンゴジュだと表現できないものが結構あります。
細長いので。
アイビーは縦横があるので、
これで世界が広がったんですよ。
日没までに間に合うように。
- ほぼ日
- タイトルがシンプルであるが故に、
みなさんが想像力を膨らませることができるという、
作品のストーリー性も魅力の一つだと思うんですけれど、
例えば、この作品「いつでも君のそばにいる」は、
どういう順番で考えたんですか?
- リト
- まず、紙に下絵を描いていくんです。
シャーペンで。
今日はどんな作品にしようかな‥‥と、
何もわからない中で、
とりあえず、ペンだけを走らせて、
適当にいろいろ描くんです。 - その中から一つ、
うさぎくんが下を向いて落ち込んでる絵を見つけて、
ここからお話が生まれるかもしれないと思って。 - ただの「落ち込んでるうさぎくんの絵」
というだけじゃなくて、
これまでやったことのない涙の表現を、
目の下をちょっと切り抜けば、
「うさぎくんがぽろっと涙を流してる」
ように見えると気づいて。
これいけるぞ!となって。 - じゃあ、
うさぎくんはなんで泣いてるんだろう‥‥。
もしかしたら横にアニキ分みたいな存在がいて、
泣いてるうさぎくんに対して、
「どうした?」みたいにしたら、
ちょっとおもしろいかもしれないと思って、
くまさんを横に立たせた。 - さらに、くまさんだけじゃなくて、
森の仲間たちみんなで励ましている絵にしたら、
もっとハートフルになる。
葉っぱの空いてるスペースを使って、
ハリネズミくんが四つ葉のクローバー持っていて、
上にカエルくんがいる、
くまさんとうさぎくんのちょっと隙間に、
いもむしくんを入れて‥‥みたいな感じで。 - ひとつの主役のキャラを立ててから、
まわりに今まで自分が作ってきたモチーフから、
役者を配置していく感じですかね。
一枚の葉っぱの中に、
なんとかその舞台を落とし込む。
そういう感じで作った記憶があります。
- ほぼ日
- うつむいてるうさぎさんから、はじまったわけですね。
- リト
- 悲しい作品ってあんまりなかったので、
おもしろいなと思ったんです。
ただ、この時点では、
タイトルやストーリーについては、
まだ何も分からない状態で。 - ただただ「今日も何か投稿しないといけない」
と追われてる感じだけで、
とりあえず、やり始めるんです。
タイトル決めてから始めると、とてもじゃないけど、
日没に間に合わないので。 - 背景が夕日なのも、
結局、日没ぎりぎりになっちゃった、ということなんです。
- ほぼ日
- (笑)
よかったですね、この作品に関しては。
- リト
- 撮ってみたら、
この作品にはこの背景が合うなと。
- ほぼ日
- 青空よりも、夕日の方がいいですね。
- リト
- 偶然ですね。
こういうのも全部。
- ほぼ日
- キャラクターの男女の区別もなく、
年齢も限定されてないというのは、
魅力の一つですね。
- リト
- いちおう自分の中では
何となくは決めてるんですよ。
だけど、みんなにはあえて言わない。
想像して、あなたのストーリーで
楽しんでくれればいいという感じですかね。 - 僕は絵の勉強をしてきたわけでもなかったので、
キツネを作ったつもりなのに、
このタヌキかわいい!
みたいに間違えられることが多々あって。
- ほぼ日
- (笑)
- リト
- それを「いや、違うんですよ」と言うのも
恥ずかしいじゃないですか。
「えっ、これキツネだったんだ」みたいな。 - そう思われるのも恥ずかしいし、
シルエットだから、色を塗り分けられないんで、
もういいやと思って。 - よく勘違いはされるんですけど、
「実はこの動物ですよ」
みたいなこと言うのも野暮だから、
友達同士なのかもしれないし、
親子なのかもしれないし、
部活の先輩後輩かもしれないし、
そこはみなさんの自由に。 - それは見てくれた人それぞれの、
記憶の中の自分と重なる部分が、
たぶんあるんですよね。 - 昔こういうことがあったなとか、
友達にこういうことをしてあげたなとか、
その人その人の物語があって、
それと重ね合わせて楽しんでもらおうと。
- ほぼ日
- 例えば、この作品だったら、
子供にきつく当たり過ぎちゃったな、
みたいに振り返る親御さんもいるかもしれませんし、
みんなが自分の世界として考えられる感じはしますよね。
- リト
- そうですね。
- でも、それを狙っていたわけではなくて、
みなさんが自由に発想してコメントしてくれて、
それを毎日読ませてもらうなかで、
じゃあ、そういうふうにしちゃおう、
となっただけなんで。 - 僕の技術やストーリーが
作品になるわけじゃなくて、
ほんとに、みんなに助けられてるというか。
見て、コメントをくれて、そのおかげで
僕のアートがただ成り立ってるだけなんです。 - だからコメントに対しては、
できるだけ真摯に返信してます。
もっと楽しんでくださいと。
- ほぼ日
- リトさんの作品を見ていると、
見る側の気持ちとして
こうありたいと思ってる世界が
ここにあるという感じがして。 - その1枚の中に
なにか理想の世界のようなものが
見えてくるように思います。
- リト
- 僕はちっちゃい時『となりのトトロ』とか大好きで、
ビデオテープが擦り切れるぐらい見てたので、
同じ地球上なんだけど、どこか違う世界があるとか、
ドアを開けると隣に違うものが広がってる
みたいな世界に、すごい憧れがあったんですよね。 - 葉っぱ切り絵をはじめるきっかけになった
スペインの作家さんの作品を初めて見たときも、
それに近い感覚を受けたんですよ。
このちっちゃい葉っぱの中に、
なんか全然違う世界があって、
こう近づいて見ていくと、
自分がこの中に吸い込まれていくような。
そういうのを目指していて、
そこから影響を受けてると思いますね。
これから先、やりたいこと。
- ほぼ日
- 2年やってきて、
この先の展開は考えてますか?
- リト
- 最近考えるようになりました。
いままでは、展示会どんどんやって、
知名度上げて、いつかは海外で、
ぐらいの感じだったんですけど、
最近、新しい目標ができて。 - 作品の販売はやめて、
どんどん作り溜めていきたいなと
思ってるんです。 - 作って売って、作って売っての自転車操業だと、
5年6年先も、たぶん同じことやってるなと思って。
お金に困ってるというわけでもなくなったので、
販売をできるだけ減らして、作品をどんどん溜めて、
ある程度、大きな規模で展示をやりたいと思ってます。 - いま家の中に、作品が入ったファイルが
いっぱい置かれてるんですけど、
もったいないなと思うんですよ。
見たい人たちはいっぱいいるのに、
僕の家にあるというのが。
それをどんどん回していきたいんですよね。 - 2年先、3年先、どんどん溜めて、
百点以上のでっかい展示会をする。
そういうのがいまの目標です。
- ほぼ日
- 現物を見ていただきたいという思いが、
すごくありますよね。
- リト
- そうなんですよ。
写真で見ても、きれいなんですけど、
実物の「葉っぱで作ってるんだ」というのと、
写真で見るより「もっとちっちゃいんだ」という、
その驚きや感動は、
展示会に来たみなさんの様子を見て、
肌で感じています。 - もう一つは、基本的に、
SNSでしか活動してないので、
お年寄りやちっちゃいお子さんたちにまで
広げていくためには、
実物をどこかに展示して、
親子やお友達同士で直接見てもらう、知ってもらう
という機会が、もっと欲しいなと思ってます。 - いま見てくれてる人たちにも、
引き続き楽しんでもらいたいし、
SNSだけだと限界があるので、
まだまだ広げていきたいと思っているので。 - 地方とかのイベントに出すと、
初めて見たという人も、すごく多いんですよね。
作品集が出てることすら知らなかったみたいな。
だから、バズって何回もテレビ出てても、
まだこんなに知らない人たちいるんだ
ということに気づかされます。 - なので、展示するという方法で、
売ることよりも、
「見てもらう」ことを主軸にしていきたい。
リト@葉っぱ切り絵さんの授業のすべては、
「ほぼ日の學校」で映像でご覧いただけます。
「ほぼ日の學校」では、ふだんの生活では出会えないような
あの人この人の、飾らない本音のお話を聞いていただけます。
授業(動画)の視聴はスマートフォンアプリ
もしくはWEBサイトから。
月額680円、はじめの1ヶ月は無料体験いただけます。