サウナ界でゴッドファーザーと言われている
米田行孝さんは、
「サウナが世界を救うって、本気で思うんです」
と言います。
人という自然が、水や植物という自然とつながる体験を、
みんなに味わってほしい。
そんな思いでつくった米田さんの 「ほぼ日の學校」の授業
一部を読みものでご覧ください。

>米田行孝さんプロフィール

米田行孝(よねだゆきたか)

株式会社ウェルビー代表、日本サウナ・スパ協会理事。
1969年愛知県名古屋市生まれ。
株式会社ウェルビー代表取締役。
祖父・父とサウナ施設を経営するサウナ一家に生まれる。
名古屋・福岡で
サウナ&カプセルホテル「ウェルビー(WELLBE)」や
サウナ専用施設「SaunaLab(サウナラボ)」を展開。
本場・フィンランドさながらの革新的なサウナは
絶大な支持を得て
「サウナ界のゴッドファーザー」の異名を持つ。
2021年東京・神田ポートビルに
東京初出店となる「サウナラボ神田」をオープン。

ウェルビー公式サイト
SaunaLab公式サイト

  • サウナが苦手な人たちに

    みなさん、こんにちは。

    「サウナって苦しいなぁ、怖いなぁ。」
    どうやって入っていいか分からない。」
    そんな苦手意識を持たれてる人たちに向けて、
    今日はお話ができたらいいなと思ってます。

    そして、ちょっとでも
    サウナの世界に足を踏み入れてみたいなと
    思っていただけたらいいなと思ってます。
    よろしくお願いします。

    ぼくが被っているこれは、サウナハットと言います。
    サウナで全員が被っているわけではないですけど、
    フィンランドや、もっと熱いロシアのサウナなどで、
    よく被られています。

    特に女性は、髪の毛を守る意味でも、
    蒸されて、よりしっとりするという意味でも、
    被ったりします。
    最近は、サウナファッションのひとつとして、
    日本でも流行ってきてます。

     

    サウナ、三種の神器

    「サウナ」という言葉は、フィンランド語です。
    フィンランドでサウナと言うと、
    必ず、この3点セットが出てきます。

    ・桶(おけ)
    ・柄杓(ひしゃく)
    ・白樺を束ねたヴィヒタ

    この3つは、
    フィンランドのサウナの三種の神器と言えます。

    フィンランドのサウナは、
    柄杓で桶から水をすくって、熱した石の上にかけ、
    そこから立ちのぼる蒸気を浴びます。
    これがフィンランドサウナの醍醐味であり、
    日本のサウナとの違いです。

    つまり、サウナとは、
    「水をかけて立ちのぼる蒸気を浴びる」
    というのが本来のかたちなんですが、
    日本のサウナは違ったかたちで、
    独自の発展をしたと言われています。

    ちなみに、白樺を束ねたヴィヒタの使い方は、
    サウナ室に入って、水かお湯でヴィヒタをふやかして、
    自分の体をバチバチ叩きます。
    フィンランドの人は、年中叩きたいので、
    乾燥させて冷凍しておくんです。
    フィンランドのサウナに行くと、
    冷凍庫の中にヴィヒタが冷凍してあって、
    みんな叩いてます。

    フィンランドだけではなく、バルト三国の人達も、
    当たり前のように、マイ・ヴィヒタを持って叩きます。

    さらに、自分で叩くだけではなく、
    「ウィスキング」という
    叩いてくれるトリートメントの方法もあります。

    ヴィヒタで叩くと何がいいかと言うと、
    森の香りがサウナ室に充満して、
    叩かれてない人も気持ちがいいんです。

    ヴィヒタを顔に近づけて香りを楽しんだり、
    抱きしめて葉っぱの感触を味わったりすると、
    なんてほっとするんだろう‥‥
    という瞬間が味わえるので、とてもおすすめです。

     

    サウナの楽しみ方

    サウナとセットになっている水風呂ですが、
    「あんな冷たいもの入れないよ」と
    おっしゃるかたがいるんですが、
    健康な人には、ぜひ入ってみてもらいたいです。

    ほんとうに深い呼吸で息が吐けるのは、
    実は、水風呂なんです。

    水風呂で、おじさん達はみんな、
    「ハァーーー」
    「あぁー、どっこいしょ」
    「あーあぁーー‥‥」と、
    すごい深い呼吸で息を吐いていて、
    こんな気持ちいいもの誰にも渡したくないと、
    独占しています。

    でもぼくは、もっとたくさんの人達に味わってほしい。
    特に、女性たちに味わってほしい。
    サウナカルチャーを女性たちのもとに取り返して、
    ぜひ、たのしんでほしいと思っています。

    水風呂が苦手で入ることができない人は、
    無理する必要はありません。
    足だけつけてみる、
    手だけつけてみる、
    というとこからはじめてみてください。

    ぼくは毎日水風呂に入りますけど、
    シャワーの冷たい水は「ハッ!」とびっくりします。
    でも、サウナの後のキンキンに冷えた水風呂には、
    平気で「ずどーん」と入ることができるんです。

    人間ってなぜか、
    部分的に冷たい水しぶきは、なんだか怖い。
    でも、全体的に冷たい水風呂には、
    「ずどーん」と入って行けるんです。

    水風呂恐怖症という人は、サウナの後の
    汗を流すための水が苦手なのかもしれないので、
    そこは冷たい水ではなく、
    あったかいお湯で流してみてください。

    お風呂屋さんには水風呂の横に
    必ず、あったかいお風呂がありますから、
    体の上から何杯もかけて、汗を流して、
    「よし」と思って、
    水風呂にずどーんと行っちゃう。
    そして、止まる‥‥。
    動くと逆に冷たく感じてしまいますが、
    動かずにしばらくすると、
    あったかいような感覚になります。
    初めての人は無理せずに、やってみてください。

    水風呂から上がったら、休憩して、またサウナに入ります。
    じんわり汗をかくぐらいの気持ちいいところで出て、
    また水風呂に入る。

    サウナ→水風呂→休憩→サウナ→ と繰り返し行うことで、
    サウナにだんだん長く入れるようになってきます。

    初心者は1段目に座るのがおすすめです。
    慣れてくると、温度の高い上の段に行きたくなりますが、
    無理しないように、無理しないように‥‥。

    サウナは苦しい場所じゃなくて、
    ほんとうに心地いい場所なので、
    心配せず、ぜひチャレンジしてもらいたいです。

     

    サウナの歴史

    「サウナ」という言葉は、
    2000年前ぐらいから使われていて、
    もともとは「蒸し風呂」のことです。

    一番最初の蒸し風呂は、石器時代、
    土に穴を掘り、木をくべて、石を熱して、
    テントになるように獣の毛皮を被せて、
    その中で蒸気を浴びる。
    これを石器時代からやっていたと言われてます。

    日本の場合は、
    いま「お風呂」と言えば、
    みなさん湯船に浸かることをイメージされますけど、
    実は「湯船に浸かる」のは、明治以降の近代の入浴文化で、
    日本は蒸し風呂の時代の方が長かったんです。

    それは、仏教の伝来が一つのきっかけで、
    悟りを得るために「お風呂」に入れと、
    つまり、「蒸し風呂」に入るということが、
    お寺の修行の一つとして行われていました。

    つまり、
    「湯船に浸かる」という銭湯の文化は、
    江戸時代後期から始まったもので、
    それまでは、蒸し風呂だったんです。

    その蒸し風呂が、なぜ廃れてしまったのか。
    それは、もしかしたら、
    我々サウナ業者が蒸し風呂のイメージを、
    熱い、苦しい、
    というイメージに変えてしまったからかもしれない。

    でも、本来の蒸し風呂は、
    もっと気持ちのいいものなんです。
    それをいま一度、日本のみなさんに、
    思い出してもらいたいなと思ってます。

     

    サウナに求められるもの

    日本にサウナが入ってきたのは、
    1964年の東京オリンピックのとき。
    フィンランドの選手団が、
    選手村にフィンランド式サウナを持ち込んで、
    フィンランドの選手の強さは、
    このサウナに秘密があるんじゃないか、
    ということで、
    日本に紹介されたのがきっかけです。

    フィンランドからサウナという
    すばらしいカルチャーが入ってきた、
    ということで、
    高度経済成長と共に発展してきたのが、
    日本のサウナで、
    最初は、日本のサウナも、
    きちんと水をかけていたようです。

    ところが、
    サウナヒーターが壊れるからか、
    どういうわけか、
    いつの間にやら、お店側が水を隠して、
    乾燥したサウナ室になってしまって、
    フィンランド式のサウナが正しく伝わってきませんでした。

    熱い部屋に我慢して入るのがサウナだ、
    などと、おもしろおかしく紹介されたので、
    熱けりゃ熱いほどいいと誤解され、
    お客様からも、もっと熱くしろ、
    と言われるようなこともあり、
    だんだんエスカレートした時代もありました。

    フィンランドでは通常、
    室温約70~80℃が一般的なサウナで、
    水をかけて蒸気によって、
    体感が上がって熱くなるんですが、
    日本のサウナは、エスカレートして、
    100℃を超えて、120℃のサウナ室もあるぐらいなんです。
    120℃のサウナ室で、もし熱した石に水かけたら、
    やけどするぐらい熱くなるんですけど‥‥。

    そういうわけで、日本では、
    苦しいイメージのサウナが広がってしまいました。

    しかし、高度経済成長期が終わり、
    私の代になって、完全にバブルも終わり、
    時代と共に、サウナも変わってきました。

    大きく変わったのは、サウナの捉え方だと思います。
    レジャーとしてのサウナから、
    精神的な心の癒やしを求める時代へと変わり、
    さらにいまは、その先の、
    心の中の欠如を埋めるような何かを求めて、
    サウナにお客様がいらしているのかなと思っています。

     


    米田行孝さんの授業のすべては、
    「ほぼ日の學校」で映像でご覧いただけます。


    「ほぼ日の學校」では、ふだんの生活では出会えないような
    あの人この人の、飾らない本音のお話を聞いていただけます。
    授業(動画)の視聴はスマートフォンアプリ
    もしくはWEBサイトから。
    月額680円、はじめの1ヶ月は無料体験いただけます。