
2020年、初期の認知症であることを公表したエビスさん。
それでもメディア出演や雑誌の連載など、
途切れることなく仕事をつづけています。
仕事のこと、漫画のこと、お金のこと、「生きる」こと‥‥
エビスさんが今考えていること、いろいろ伺いました。
動画で配信中の「ほぼ日の學校」の授業の
一部を読みものでご覧ください。
蛭子能収(えびすよしかず)
漫画家・タレント。
1947年長崎県生まれ。高校卒業後、地元の看板屋に就職。
1970年に上京し、チリ紙交換やダスキンの
セールスマンとして働く。
1973年、伝説の漫画雑誌「ガロ」に
『パチンコ』が掲載され、漫画家デビュー。
漫画家としての代表作に『地獄に堕ちた教師ども』など。
1980年代後半からはタレントとしても活躍。
著書に『ひとりぼっちを笑うな』
『蛭子能収のゆるゆる人生相談』
『認知症になった蛭子さん』
『おぼえていても、いなくても』など多数。
-
絶対に死にたくない。
- 蛭子
- 蛭子です。
よろしくお願いします
- ほぼ日
- 今日は、先生ということで、お願いします。
- 蛭子
- いやあ、先生なんて‥‥。
ホントに、全然届かないので。
でも、努力します。一生懸命。
- ほぼ日
- ありがとうございます。
実はぼく一度、4年ぐらい前の仕事(前職)で、
蛭子さんにインタビューさせていただいたことがあります。
この雑誌なんですけど‥‥。
- 蛭子
- ボクが、あなたに‥‥?
- ほぼ日
- 「ボクが尊厳死協会に入ったわけ」っていう…
- 蛭子
- これがタイトルなんですね?
あ!ここに俺の名前が。
- ほぼ日
- 蛭子さんの写真も載ってます。
- 蛭子
- これは、どんなことを書いてあるんですか?
- ほぼ日
- 雑誌のテーマが「私の寿命と人生」でした。
- 蛭子
- ホント?
そしたらそれから、俺ずいぶん生きてますね。
いや、それだけ生きてるとしたら、
なんか、すごくうれしい。
- ほぼ日
- 4年前です。
今、蛭子さん74歳ですから、
70歳になったぐらいの時期かなと思うんですが。
- 蛭子
- なんか全然、覚えがないんだよな。
もの忘れが、すごくひどくて、ダメなんです。
- ほぼ日
- インタビューも
ほんとうに数多く受けられてますよね。
いちいち覚えてられないですよね?
- 蛭子
- いや インタビューもね‥‥。
「ただ、おもしろいことを言って、
その時間を遊んでればいいんじゃないの?」と言われるから。
そんなに俺、きちんとはしてないんですよ。
- ほぼ日
- 4年前のインタビューのときに、
「尊厳死協会」という協会に
蛭子さんが入っているっていう話を聞きました。
- 蛭子
- 尊厳死協会?
- ほぼ日
- そのお話を聞かせてください、とインタビューしたんですけど。
「尊厳死協会」に入ってることを、蛭子さんが忘れてた、っていう。
- 蛭子
- あれ?
俺、またそれも知らないですよ。
尊厳死協会?
(マネージャーに)尊厳死協会って知ってる?
- マネージャー
- 昔、蛭子さんが「入ってる」って言ってました。
ぼくも今は、ちょっと分かんないですけど。
- ほぼ日
- たとえば、自分が病気とかになって植物状態になったとき、
「もう自分はどうしようもない」っていうときに、
「もう管を抜いていいですよ」
「延命措置をしないでください」
という宣言なんですね。
- 蛭子
- いやぁ、それはもう困りますね。
「絶対に死にたくない」っていうのが、
自分の気持ちなんで。
- もしかしたら、そんなに必ずしも「死ぬ」というのを
完全にまだ分かってない状態では、死にたくないです。
とにかく生きてる間は。 - みんな嫌なんでしょうが、俺は「生き抜きたいな」って、
しょっちゅう思ってます。
死んじゃうと、すべてが終わっちゃう。
- 蛭子
- (コップの水を手にとって)こんなのでも、飲むときに
「これに、もし毒が入っていたら?」って考えますよ。
- マネージャー
- 大丈夫です。毒入ってないです。
もし、毒入ってたら、とんでもないことになります。
- 蛭子
- そうだよね。
人生の目的は、死なないこと。
「生きたい」ということが、すごくあって。
- ほぼ日
- 「死にたくない」っていうのは
子どもの頃から、ずっとですか?
- 蛭子
- 子どもの頃から「死にたくない」って
いうのは、すごくありました。 - 子どもの頃、寝ころんで上を見て、
星を見るのが、すごい好きでしたね。
- ほぼ日
- 家の屋上とかでですか?
- 蛭子
- そうです、そうです。家のベランダっていうのかな?
やぐらみたいになっていて、よくそこに出て。
そしたらね、アレが見れるんですよ。
よく、流れ星が。 - 流れ星を見ると
ちょっと「ウワッ!」って思います。 - なんかドキッてして。
シュッと消えちゃうみたいな。
あぁ、消えちゃうの。
シューッて。
あぁ、不思議だなって思います。
- ほぼ日
- 「俺の人生もすぐに終わっちゃうんじゃないか」
みたいに思ってたんですか?
- 蛭子
- そこまでは思わんけど。
まあ、でも、そのようなことは思ったと思います。
- ほぼ日
- 子どもながらに?
- 蛭子
- うん、自分が5歳か6歳ぐらいかなぁ。
その頃よく、星とか見ていて。
流れ星を見ましたね。
- ほぼ日
- 子どもの頃に寝転んで星を見ていて、
「死にたくない」と思ったんですか?
- 蛭子
- 「死にたくない」と思ったのは‥‥、
もう、とにかく命がある限りは全く死にたくない、
っていうのがホントに本音で。 - みんな、ちゃんと死なないように
動いてるんだろう、って思ってます。
- マネージャー
- お父さんとお兄さんが、漁師やっててね。
危ない仕事についてたから。
- 蛭子
- ああ、そうですね。
仕事は しなくちゃいけないでしょうけど、
あんまり怖いのは、ちょっと。
死んじゃうと、本当にすべてが終わっちゃうので。 - 昔ね、流行ったバンジージャンプは‥‥。
あれだけは、もう絶対拒否してたんだよ、俺。
- ほぼ日
- やったことあるんですか?
- 蛭子
- あります、あります。
「これは落ちたら死ぬやろ!?」って。 - 落ちる確率が何パーセントかあるなら、
それはもうダメ。 - ホントに、そんな危険な遊びをしてまで
仕事しなくても。
お金は欲しいんですけど、
いくらなんでもね。 - 死ぬよりお金がいいっていう人は、
あんまり多くはないと思いますよ。
- ほぼ日
- お金は欲しいけど、そこまでではない。
「死にたくない」のほうが勝つんですね。
- 蛭子
- そうです。
- ほぼ日
- でも蛭子さん、昔からテレビで
結構、危険なことしてますよね?
- 蛭子
- そうなんですけど、今はホントに考えが変わって。
- 「これ、一瞬で死ぬな」って思うと、
ホントに恐ろしくなってきました。 - 何しろ、とにかく、今ホントに
命を大事にしようと思ってますね。
漫画家になりたいです。
- 蛭子
- 仕事も「したい」と思う気持ちが
どんどん薄れてきて。
- ほぼ日
- そうなんですか?
- 蛭子
- どうしよう、どうすればいいのかな。
- マネージャー
- 働きたくないですか?
- 蛭子
- 働きたくないよ。
- マネージャー
- 働かないと お金入ってこないですよ?
- 蛭子
- そうなんですよ。
それは、だから‥‥
- マネージャー
- 今日のこれは、お金入りますよ?
- 蛭子
- お金は入りますよね、これ?
だから、これは入れさせていただきまして。 - お金がね、働かないと入らない。
だから、選んで仕事をやっていきたいなとは思います。
- ほぼ日
- 以前は「ずっと働きたい」って、
おっしゃってたんですけど。
最近は 働きたくない?
- 蛭子
- とにかくお金が入ればいいんですけど。
細かい内容とか、
そういうのは、もう関係ない。 - でも、ちょっと矛盾したことを言えば、
ここに来るときは「お金が欲しい」って
思って来たんですけど。 - なんか、ちょっと自分がホントに
バカらしい、っていうか
今、アホみたいに見えますね。
- ほぼ日
- 漫画を描いて稼ぎたいとは、思わないですか?
- 蛭子
- ああ、そうね。
漫画が、まだ今のところ少しは入るんで。
そうですね。
ホントはそれだけでやっていければ、
そっちに専念するけど。
- ほぼ日
- 蛭子さんは、自分の「職業は何ですか?」って
聞かれたら、なんて答えますか?
- 蛭子
- ホントにバカみたいに思われるかもしれませんけど、
漫画家になりたいです。
漫画家になって‥‥
そうですね、漫画家でいいですね。
なれたらいいなと思います。
- ほぼ日
- 漫画家に、まだなってないんですか?
- 蛭子
- なってないんじゃないかな。
- ほぼ日
- これから漫画家になるんですか?
イチローも昨日同じようなことを言ってました。
イチローも、まだ野球をこれから続けるみたいな。
- 蛭子
- そうそう。ちょっと載ってましたね(笑)。
- ほぼ日
- これから漫画家になって、
「ぼくの絵を見てほしい」ってことですか?
- 蛭子
- 自分の絵は見なくてもいいから、お金は欲しい(笑)。
うーん、でも、本音を言うと、絵を見てほしいです。
蛭子能収さんの授業のすべては、
「ほぼ日の學校」で映像でご覧いただけます。
「ほぼ日の學校」では、ふだんの生活では出会えないような
あの人この人の、飾らない本音のお話を聞いていただけます。
授業(動画)の視聴はスマートフォンアプリ
もしくはWEBサイトから。
月額680円、はじめの1ヶ月は無料体験いただけます。
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