アイドルグループ“ももいろクローバーZ”を結成し、
スターダムへと押し上げてきた
マネージャー兼プロデューサーの川上アキラさん。
アイドルの常識を越えた
斬新なアイデアの数々でファンの心を掴み、
11万人ライブなどの大成功も。
川上さんのユニークな発想力を、
振り返っていただきました。
授業にはスペシャルゲスト・
ももクロの玉井詩織さんも登場です!
動画で配信中の「ほぼ日の學校」の授業の
一部を読みものでご覧ください。
川上アキラ(かわかみあきら)
スターダストプロモーション
マネージャー兼プロデューサー。
1974年9月10日生まれ。埼玉県出身。
1998年に大学を卒業。
同年スターダストプロモーション入社。
数多くの俳優のマネジメントを担当し、
2008年にももいろクローバー
(現在のももいろクローバーZ)を立ち上げた。
国立競技場ライブを実現するなどの
人気グループへと導く。
現在はももクロのほか、
新たな事務所のアイドルプロジェクト
「スターダストプラネット」全般を担当。
著書に『ももクロ道』など。
玉井詩織(たまいしおり)
ももいろクローバーZ。
1995年6月4日生まれ、神奈川県出身。
2008年に結成された
ももいろクローバーZの黄色担当、
現在のキャッチフレーズは「ももクロの若大将」。
2015年にはライブイベント「GIRLS’ FACTORY」、
2016年には音楽番組「スカパー!音楽祭」で司会、
2018年にはNHKの連続ドラマ「女子的生活」に
メインキャストとして出演するなど多方面で活躍。
2022年5月にももいろクローバーZ
6枚目のオリジナルアルバム『祝典』が発売される。
-
「この日ここに来たら、会える!」
- 川上
- アイドルグループのマネジメント経験なんて
なかったので、はじめは本当に手探りでした。 - なので、AKBさんの会場に行ったりして、
いろいろと勉強していました。
「やっぱり常設の小屋があるのはいいなぁ」と。 - でも、ぼくたちにはそんなお金はない。
「じゃあ、どうしよう」ということになって、
代々木公園のけやき通りでライブを始めるんです。 - けやき通りというのは、
NHKホールの裏の辺りなんですが、
当時は自由にパフォーマンスをすることが
できたんですよね。
- 玉井
- できました。
- 川上
- 野々村真さんもそうなんですけれども、
スターダストプロモーションには、もともと、
原宿の「たけのこ族」みたいな、
そういうところから上がってきたタレントを
見出す文化みたいなものがあったんです。 - それになぞらえて
けやき通りでやろう、ということになって。 - それで、土曜日にチラシを配ったりしました。
覚えてます?
- 玉井
- はい。覚えてます。
- 川上
- 土曜日にチラシを配って、日曜日に本公演、
みたいな形で何となくストーリーをつなげていって。
音響PAも自分たちで組んだりして。 - 「この日にここに来たら、この子達に会える」
そういうストーリーを、ファンの方々に
すり込んでいこうと思ったんです。
手作り全国ツアーと追っかけてくれる文化
- 玉井
- ここでツアーが始まるんですよね。
- 川上
- うん。会場がない中で、
どうやってツアーを始めるか、っていう。 - 当時、ヤマダ電機さんが
自社でレコードレーベルみたいなものを持っていて、
そこで、インディーズとしてCDが出せる、
っていう話になりました。 - だとすると、ヤマダ電機さんの店舗が
ライブ会場として使えるんじゃないかな、
と思いまして。 - ヤマダ電機の郊外店舗って、
駐車場から上がっていくところに、
大きな吹き抜けみたいなものがあったんです。
当時の店舗の共通設計だったようなんですが、
吹き抜けスペースのところに、
ちょうど階段があったりして、
「これは客席として使えるよね」と。 - 店舗を回ってツアーが組めるということで、
ヤマダ電機さんから発売させていただいたのが、
「ももいろパンチ」なんです。
※「ももいろパンチ」
ももいろクローバーのインディーズデビューシングル。
この時、ぼくは音楽業界の仕組みが
全然わかってなくて。
「レコードが出せる!」
「ヤマダ電機から出せるよ!」って、
つまり「レコード出せる = メジャーデビュー」
だと思ってたんです。
- 玉井
- CDショップに自分たちのCDが並ぶ、
と思って盛り上がったんですよ。
「わぁ、うれしいね!」って。 - でも、いざ発売日に探してみても、
どこにも売ってなくて。
「え!?CD売ってなくない?」みたいな(笑)
その時に気づいたんですよね。
- 川上
- そう、これが「自主流通版」っていう、
ヤマダ電機さんの店舗にだけ
置いてあるCDだったんですよね。
- 玉井
- それで車で全国ツアーに出たわけですけど、
ETCが1000円時代だったんですよね。
あれ、たまたまだったんですよね?
- 川上
- そうそう。当時たまたま、
ETCが1000円で
なんと、全国どこまでも行けたんです。
一番北は盛岡から南は福岡まで。 - これ、ちょっと
ぼくの考え方の基になっている
プロレス的発想なんですけれども、
バス1台にみんなが乗って巡業に行く、
って「かっこいいなあ」という気持ちがありました。 - そうやって全国ツアーをやっていると、
ファンの人たちが、
ついてきてくれるんですよね。
じつはその事に気づいたのは
やっていく中で、だったんですけれども。
- 玉井
- そうそう。
当時は「固定のファンの人がつく」っていう
感覚がなかったから、わからなかったんです。 - 「あれ? この人この前の盛岡に来てくれてたけど、
なんか広島にもいる!」みたいな(笑)。 - それで、こうやって一緒に回ってきてくれるんだな、
って気づいて。
- 川上
- そういう、「追っかけてくれる文化」っていうのは、
確かに、やってみてわかったことだと思いましたね。 - だから本当に、そういうことを何にも知らずに
始めてしまっているアイドルマネジメントでしたね。
「やれるんじゃない?」の精神
- 川上
- ぼくは、学生時代の部活動でずっと
「できないことより、できることを先に考えろ」
と言われていました。 - ぼくたちには他のアイドルみたいに会場がないから、
「ライブはできない」と思うのではなくて、
何にも知らないからこそ、
「いや、できるんじゃない?」って考えてみるし、
みんなが乗れる車と、ヤマダ電機があれば
「全国ツアー組めるじゃん!」って発想になります。 - そういうふうに、何でも
「やれるんじゃない?」から入るんです。 - これはタレントさんにも、
「今後、芸能活動をしていく中で
絶対に覚えててほしい」って、
伝えてきました。
- 玉井
- 私たちも、ずっと言われてきました。
- 会場として
電気屋さんがあるにしても、
もちろんライブ会場じゃないから、
音響設備もないし、歌って踊って、っていうことを
見せることに適している場所じゃないんです。 - でもね、だからこそ、
「ちょっと音が小さくない?」って言ったら、
ここが電気屋さんのすごいところなんですけど、
売ってるんですよね。スピーカーとかが(笑) - だから、もうスピーカーを「買いに行け!」とか。
本当に手作りでしたよね。
必要なものがなかったら、その場で調達する。 - それこそ、ライブが連日続いてて、
衣装の洗濯が間に合いません、ってなったら
「じゃあ、ドンキホーテ行って、
衣装買ってこい!」とか(笑) - それこそ、夜の駐車場で野外ライブをする、
ってなった時に、
なぜか、みんな「夜暗くなる」ってことを
想定してなかった(笑)
- 川上
- 誰も気づかなかったんだよね。
誰一人として、それを専門でやってきた
人たちじゃないので。
- 玉井
- それまで生きてきて、夜は暗いって
絶対知ってるはずなのに、
なんか誰の頭にも、なかったんだよね(笑) - 暗くなってきて「あれ?見えなくない?」
「見えない!!」ってなった時に、川上さんが
「車があるじゃん!」って言って。
車のヘッドライトで照らして、ライブしたりとか。
- 川上
- 車を4台並べて、
そのヘッドライトをつけて照らす、っていう。
全然見づらいですよね。
それでも「明るくなってるから、いいかな」
みたいな。
- 玉井
- でも本当に、こういう経験は
今にも生きてるところはめっちゃあるな、
と思います。
- 川上
- 本当ですか!?
でも、その場その場を乗り切るのは、
おもしろかったですね。 - だから、わざとファンの方とも共有してた。
「まじで暗くなっちゃったよ、どうする?」とか。
みんなで相談してる風を装って、
ファンも一緒に巻き込みたいな、っていう。
- 玉井
- 「みんなで一緒に作ってる」みたいなね。
- 川上
- 共犯関係みたいな、そんな感じにしていけば、
おもしろいことがやっていけるんじゃないか、
みたいなベースはありました。
- 玉井
- 当時は、そんな辛くはなかった。
- もう一回できるか、って聞かれたら、
確かにちょっと大変だなって思っちゃうけど(笑) - だって、8人乗りの車に8人びっちり乗って
10時間ぐらい移動してたし(笑) - でも当時、「みんなでやってるから楽しいね」
というマインドだったので、
辛いというよりも楽しかったです。 - こういう経験があったからこそ、
きっと、メンバー同士で
何でも言い合えるようになったんだと思います。 - この車での移動時間も、
今に活きているなと思いますね。
「紅白にみんなで行くんだ!」
- 川上
- こんなふうにして、代々木公園から始まって。
代々木公園のすぐそばに、
NHKホールがあったわけです。
NHKホールといえば、紅白歌合戦の会場です。
それで、「紅白にみんなで行くんだ!」
っていう目標を立てて。 - 何かしらの目標を作っていくと
ファンの気持ちも一緒に乗せられるな、
というのもありました。
- 玉井
- たぶん、一番最初に「紅白」を言葉に出したのが、
まだメジャーデビューもしていない頃
だったんですよね。 - だから正直、私たちも紅白歌合戦なんて
全然夢にも思わない場所というか、
それぐらい遠い場所だと思っていました。
- みんなで紅白を目標にしていこう
という話が上がった時、
「いや、それは正直ちょっと難しいんじゃないか」
って思いながらも、
お客さんの前で発表しちゃったからには、
目指していきたいなって思って。 - でも、お客さんにも
「いや、君たちには無理だよ」っていう人は
本当に誰一人いなかったんですよ。 - 最初は、まったく叶わないと思ってた夢だけど、
口に出していくことによって、
夢に近づいていけてるような気がした、
というのは、すごく感じましたね。 - 自分たちから夢を発信して、
「この人は、こういう夢をみてるんだ」って
知ってくれてる誰かがいるだけで、
夢との距離が
一気に縮まったなっていう感じがしました。
川上アキラさん、玉井詩織さんの授業のすべては、
「ほぼ日の學校」で映像でご覧いただけます。
「ほぼ日の學校」では、ふだんの生活では出会えないような
あの人この人の、飾らない本音のお話を聞いていただけます。
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