18歳でマンガ家デビューするも、
週刊連載のペースがつかめず5週(5回)で断念。
それをきっかけに「時間」の使い方に目覚めた
タナカカツキさん。
ヤル気はいらない。がんばりもいらない。
徹底的にじぶんを甘やかしながら、創作の質を上げる。
カツキさんご本人が実践する自己管理術、
たっぷり語っていただきました。

動画で配信中の「ほぼ日の學校」の授業
一部を読みものでご覧ください。

>タナカカツキさんプロフィール

タナカカツキ(たなかかつき)

マンガ家。
大阪生まれ。
2011年『サ道』(パルコ出版)を刊行後、
日本サウナ・スパ協会からサウナ大使に任命される。
著書に『逆光の頃』『オッス!トン子ちゃん』、
天久聖一との共著『バカドリル』などがある。
カプセルトイ「コップのフチ子」の生みの親でもある。

  • マンガ家になって37年

    今年でマンガ家業37年です。
    37年、生きながらえてきました。
    鳴かず飛ばずで。

    (拍手)

    ありがとうございます!
    ここで拍手って、おかしいと思うんですけど(笑)。

    昨今、デスクワーク、テレワーク、在宅ワーカー
    みたいな言葉ありますけれども、
    それで言うと「在宅ワーク37年」ですから、
    在宅ワーカー界では、かなりの重鎮です。

    そんな中、今日はちょっと恥を忍んで….。
    「マンガ家」とか言うて、
    なんやかんやで37年生きてきた人間が、
    ゆっくりとしたペースですが、
    どんな生活をして続けてこられたのか。

    そのテクニックを….
    テクニックっていうほどの
    ものじゃないかもしれないですけど、
    あえて「スキル」みたいな
    言い方でお話をしながら、
    「これは本当に正しいのか」みたいなことを
    一緒に考えていけたらなと思います。

    当時抱えていた自分の課題

    「ヤル気」っていうのは、どうすればいいのか?

    ヤル気があるときはいいです。
    でも、ヤル気がないときは、
    ヤル気を待ったりするんですよ。
    朝起きて、ヤル気を待つ。

    まずはコーヒー飲んだりしてね、
    ちょっと映画でも観に行こうかと。
    いい映画観たらヤル気起こるんですよ。
    よーし!と。
    こんな世界観のマンガ描きたいなぁ
    みたいなヤル気が出てくるんですが、
    家に帰ったら、なんかヤル気がない‥‥。
    あれ?って。

    観終わった瞬間、すごいヤル気あったのに、
    家に帰ったらヤル気がないんですよ。
    「どないなってんねん!ヤル気」

    「ヤル気なくてもがんばれや!努力せえや!」
    ヤル気ない時でも、
    がんばれたり、努力できたりすればいいけど、
    それはムリなんです。

    「じゃあやっぱり、必要なのは才能とセンスなの?」
    と頭の中をぐるぐると考えがまわりはじめるわけです。

    早起きはいいの?

    やっぱり夜に創作してるんですよ。
    これはちょっと覚悟しないといけないんじゃないかな。
    何の覚悟か。
    生活スタイルを見直さないといかんなと。

    みなさんも、なんとなく聞いたことがあるでしょう。
    小学校の先生も言ってました。
    「朝の方が効率いいよ」と。

    勉強を夜にがんばりすぎて、
    睡眠不足で試験に挑んでもいかんよと。
    「朝の早起きはいいよ」と、先人は言ってるわけです。

    私も情報としては知ってます。
    知ってはいるけど、
    朝型か夜型かと言われると、自分は夜型だし、
    夜にこそ何かヤル気が降りてくるような感じがする。

    そこで、当時のスケジュールを
    なんとなく思い出しながら描いてみました。

    だいたい、昼前に起きます。
    「いいとも!」の前に起きるみたいな感じでしたね。
    これ12時過ぎて起きると、さすがに罪悪感あって、
    それはそれでイヤなんですよね。
    もう一日が終わるんやな、みたいな感じになるので。

    12時前に起きて、朝食をいただいて、
    お昼過ぎにちょっと喫茶店でも行って、
    軽く本を読んだり、友と語らったり。
    そうすると、ちょっとヤル気も出てくるんですよ。

    そのまま夕飯を食べます。
    だいたい夜の8時から12時を回るピークぐらいに
    集中できるときが来るんですよ。
    けっこう、はかどる。
    深夜1時、2時ぐらいまで、はかどって、
    ちょっと「やったった感」みたいなのも出てきて、
    午前3時、4時ぐらいに寝る。

    そんな生活を毎日、何年も、ずっとやってましたね。
    37歳ぐらいまで十何年も、ずーっとやってたかな。

    でも、プロの作家について調べると、
    藤子・F・不二雄先生の
    「朝は早起きして、規則正しい生活を送る」
    という言葉もあるし、
    岡本太郎さんも、
    「6時前に目覚めて、午前中に創作してた」
    という話もあるし、
    モネの『睡蓮』を見ても、ハスを描いてるでしょ。
    あんなん夜描いてないじゃないですか。
    やっぱり昼間描いてるわけです。

    プロの作家はそうなんやな、なんて思いながら、
    ちょっと一回変えていこう、一回朝起きたれ!
    と思って、一旦朝にしてみる。
    でもまぁ、だいたいムリです。

    「なんでムリなんやろう」と、
    一生懸命ムリな理由を考えました。
    まず自分は、夜にこそ創作のエネルギーとか、
    ヤル気が降りてくると思っている。
    果たしてそれは本当かな‥‥。

    自分は朝型?夜型?

    もう一つ気になるのが、朝型・夜型という考え方です。

    自分は朝型じゃなくて、
    夜型だと思ってたけれども、調べてみると、
    どうも、日本人の97パーセントの人のDNAは
    「夜ふかし傾向にない」と聞きました。

    じゃあ、
    自分は残りの3パーセントの夜型なんじゃないかと。
    だって、十何年も続けてるんやもん。
    もし、DNAが夜型やったら、
    早起きは、もう諦めようと思ったんですよね。

    筑波大学で調べてもらいました。
    自分のDNAは夜ふかし傾向が弱いタイプの
    97.6パーセントに入るみたいで、
    ガッツリ書いてありました。
    「あなたのDNAは夜ふかし傾向弱めです」と。

    これ、もうしょうがないでしょ。
    もうDNAでもアカンかと。
    もう逃げ道はない。
    じゃあ、起きれない原因をしっかり考えよう。

    朝、起きられない原因は?

    朝起きてから、ぼんやりしてる時間。
    あれは何ぼんやりしてるかって言うと、
    ちょっと考えてるんですよね。
    「今日、一日何しようかな‥‥」って。

    今日やらなアカンことは、なんとなくわかってる。
    じゃあ、何からしようかな‥‥。
    あの状態がやっぱりよくない。

    あらかじめ、
    朝、起きたくなるようなメニューを決めておく。
    自分はすごいコーヒーが好きなので、
    朝はコーヒーを淹れようと。
    ただ淹れるんじゃなくて、ちょっと豆にもこだわって、
    おいしいコーヒーを朝に淹れる。

    あと、目覚ましにもちょっと気を配ろうかなと。
    目覚ましのあの音、電子音のあの世界が
    いきなり鳴るのがなんかイヤやなぁ。

    じゃあ、音じゃなくて、光で目覚めてみようと。
    光目覚まし時計というのも最近売ってるんですよ。
    時間になったら徐々に明るくなって、
    目つぶってても、なんとなく分かって起きれる。

    そういう「起きる」ということに関して、
    「私はどうやったら起きてくれますか」と
    すごくちゃんと考えました。

    どうも脳は「何か決める」という時に、
    すごくカロリー使うっぽいんです。
    でも、あらかじめ決めてることは、やるみたいなんです。

    ということは、朝起きて「さあ何しよう‥‥」といったら、
    これはもう、二度寝に決まってるんですよ。

    「何しよう‥‥」
    って決めるのが一番カロリー使うんでしょ。
    決めるのがしんどいってなったら、
    脳にとっては、もう寝るのが一番早いわけです。
    しかも、脳は仕組みとして、
    省エネの道を辿るらしいんですよ。
    だから、大変なことはできるだけ避けようとするらしい。

    なので、最初に「気持ちいいイメージ」で、
    「何するか」というのを、あらかじめ決めておく。

    毎日のメニューをあらかじめ決めておく

    こんなことから始めようと考えました。
    まず、おいしいコーヒーを淹れようと。
    カフェインでちょっと目覚めながら、朝日を見る。
    昇る前の明け方の朝日なんて理想じゃないですか。

    そして、簡単にちょっと床の拭き掃除。
    空気中のホコリが、夜の間に床に落ちますから、
    床の拭き掃除からはじめて、
    ちょっと気持ちいい感じになってみましょう。

    そして、これから体を動かすので、
    ちょっとストレッチして血の巡りを良くしてみようかな。
    いきなりマラソンとかやらないもん、きっと。
    がんばりたくないんやもん、自分。
    ウォーキングさえきっとやらない。
    雨降ったら「はい、二度寝」ですから、一発でしょ?
    そんなことは自分はやらない。

    でも、「おいしいコーヒー」「床掃除」「ストレッチ」
    という、この流れだったら自分やるんじゃないかな
    と思ってやってみました。

    最初は、なかなか無理なんですけれども、
    まずイメージでやってみる。

    やってみると、
    「ヤル気を出して何か物事をやる」
    という必要がなくなり、
    ちょっと血の巡りが良くなってるんですよ。
    目覚めも早いんですよね。
    そしたら、すーっとデスクの方に移動できたんです。


    タナカカツキさんの授業のすべては、
    「ほぼ日の學校」で映像でご覧いただけます。


    「ほぼ日の學校」では、ふだんの生活では出会えないような
    あの人この人の、飾らない本音のお話を聞いていただけます。
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