舞台などの衣裳をつくるコスチューム・アーティスト、
ひびのこづえさんの新作ハラマキができました。
5つのデザインが、ハラマキだけじゃなく、
レッグウォーマー、けいとのぱんつ、
そして(発売は別日程ですけれど)「やさしいタオル」にも
展開される、今回のプロジェクト。
今月にひらかれるTOBICHIでの展覧会を前に、
ひびのさんに、そのデザインについておききしました。
ひびのこづえ
静岡県生まれ。
東京芸術大学美術学部デザイン科卒業。
コスチューム・アーティストとして
広告、演劇、ダンス、バレエ、映画、テレビなど
その発表の場は、多岐にわたる。
NHK Eテレ「にほんごであそぼ」のセット衣装を担当中。
中村勘三郎主演の歌舞伎
「コクーン歌舞伎・三人吉三」
「野田版 研ぎ辰の討たれ」、
現代劇の野田秀樹作・演出の
「フェイクスピア」「Q」など、
多数の舞台衣装を担当。
「ちいさな生きもの研究所」ワークショップを
渋谷LOFT6階で開催中。
-
- ──
- ひびのさん、今回、あたらしいハラマキのための
すてきなデザインをありがとうございます。
ひとつのデザインを、
「ほぼ日ハラマキ」だけじゃなく
「やさしいタオル」でも展開することになり、
すごくうれしいです。社内からも、
以前つくっていただいたひびのさんデザインの
ハラマキを愛用しているものから、
「伸びてきちゃったから、あたらしいのがほしい!」と
声が出ていたところだったんですよ。
- ひびの
- 私もまさしく、愛用してる「けいとのぱんつ」が
伸びてきちゃっていたんです。
だから早くあたらしいものをつくらなくちゃ(笑)って。
- ──
- ひびのさんは「けいとのぱんつ」を
ご愛用くださっているんですね。
- ひびの
- もちろんハラマキも好きなんですよ。
ただ眠るときは「けいとのぱんつ」だと安心なんです。
ハラマキは、寝ているあいだに、
どんどん上がってきちゃうので、
昼間、ちょっとおしゃれなふうに、
ちらっと見せるような使い方をしています。
うちのスタッフもハラマキを愛用していて、
衣装のフィッティングするときなんかに、
手をのばすとシャツがめくれちゃう、
そのおなかに、チラッと見えるのが
なんだかおかしくって(笑)。
- ──
- チラ見せ、いいですよね。うれしいです。
今回のひびのさんのデザインは5種類で、
どれも雰囲気がちがいますが、
こういうアイデアって、
どんなところから生まれるんでしょう。
例えば「Parade」は、イーラーショシュという
ルーマニアのトランシルバニア地方の
伝統的な刺繍がもとになってるそうですけれど‥‥。
- ひびの
- こういった刺繍は、憧れますが
刺繍は出来ないので
イメージとして受け取って、
それをヒントに絵にしている、
ということですね。
- ──
- 受け取ったイメージを、
ハラマキのデザインとして置き換える。
ハラマキであるということは、
ほかの作品との違いはあるんでしょうか。
- ひびの
- そうですね、ハラマキにするためのデザインは、
いつも身体と一緒に考えています。
- ──
- 着るひとの身体と一緒に、っていうことですか。
- ひびの
- そうですね。
ハラマキには「あたためる」という
機能があるじゃないですか。
- ──
- はい、そのためにやわらかな糸で編んで、
いろんな体型にフィットするようにつくっています。
- ひびの
- そうですよね。
つまりハンカチのように伸縮性のない平面ではなく、
人の身体に立体的に巻かれ、伸び縮みするもの。
そのことを想像してデザインをしています。
ただ、この「少女」というデザインは、
おなかに巻くと、この子たち、太っちゃうんですよね。
しまった! って思ったのだけれど(笑)。
- ──
- あ、横に伸びるからそう見えちゃう。
でもスカートがふくらんだみたいになって、
とってもかわいいですよ。
ノスタルジーというか、
中世のヨーロッパの物語の登場人物のような
イメージを感じました。
- ──
- 2011年にハラマキになった「クモの宝石」以外は、
新作としてデザインをしていただきました。
- ひびの
- そうですね。
でも「クモの宝石」も、
前のものとは色が違うんですよ。
- ──
- そうですね。色味が変わると、
ずいぶん違って見えます。
「そら」も、色合いが印象的です。
飛行機が刺繍で、上と下で翼の色が違ったり、
飛行機雲も出ていたり、とても細かいデザイン。
- ひびの
- そういうものがちらっと見えると
かわいいだろうなあって。
- ──
- 「ROOT」は、不思議な根っこがいっぱい‥‥。
これも、物語性がありますよね。
- ひびの
- そうですね、
変な植物と変な生き物が登場しています。
今、茶色とブルーに
すごく心が惹かれているものですから、
「自分がつけるもの」としても好きです。 - そうそう、ハラマキって、
裏表で色がかわるのが
かわいいじゃないですか。
- ──
- 色が反転になると、
絵の表情も変わりますよね。
- ひびの
- だからリバーシブルで使うことを
デザインするときに、考えに入れているんです。
「Parade」は、片面(おもて)が
真っ赤になっていますが、
片面(うら)は白がとても多くなっていて、
着け方によって印象が変わる。
それがいいなと思っています。
- ──
- はい、赤白の分量が逆転するので、
そういうことになってしまうんですが、
それをデザインに活かしてくださっているのが
とてもうれしいです。
- ひびの
- こういうことって「織り」ならではの面白さですよね。
赤を表にすると、元気になりそうでしょ?
- ──
- はい! 「少女」も、黒と白ですから、
どちらを表にするかでまったく違って見えます。
- ──
- 今回はハラマキのラインナップと一緒に、
「やさしいタオル」でも
基本的に同じデザインで展開をする予定です。
でもじつはハラマキとタオルは、
色使いとデザインにアレンジが異なるんですよね。
たとえば「そら」だと、
「やさしいタオル」には、
ハラマキにない白地が見えます。
- ひびの
- つくりかたの制約で、
ハラマキで使える色糸は2つ、
でも「やさしいタオル」は、
プリントする色が自由です。
ですからハラマキで使えない色の思いを
タオルに込めている、というところもあります。
ハラマキは2色ゆえに単純になってしまうのを避けるため、
そこに色だけじゃない、
たとえば明度を出すためのドットを入れたりしています。
このドットの表現では、いろいろと、
ご迷惑をおかけしたみたいなんですけれど。
- ──
- いえいえ、ドットの「まんまる」が小さいので、
編み目に入り込んでしまい、
うまく表現しきれなかったりしましたが、
結果オーライでした。
- ひびの
- できあがってみたら、
ドットがかわいく見え隠れすることで、
雲が重なってるような空の感じが
よく出て、よかったですね。
- ──
- すごく未来的なデザインにも思えるし、
迷彩っぽくもあってかっこいいですよね。
ひびのさんのデザインって、
モチーフがかわいいものでも「甘すぎない」し、
逆にモチーフがユニークなものでも「かわいい」、
ふしぎなバランスだと思います。
「少女」だからといって女性的なわけでもない。
- ひびの
- そうなんですよ。
特に「少女」は、色によっては、
かわいくなり過ぎちゃう。
だから絶対黒にしようと思いました。
- ──
- 色をあざやかにすると
“いかにも”女性向けになるかもしれないですね。
おかげで、シックで、
子どもっぽくないハラマキになりました。
この「少女」は、ハラマキには5人いますけれど、
レッグウォーマーやタオルには、
ひとりだけのもあったりして、楽しいです。
- ひびの
- それと「やさしいタオル」には、
フチのデザインをプラスしましたね。
- ──
- 今年も6月に
TOBICHIでの展覧会が決まりました。
昨年のテーマは「Come and Go」でしたが、
今年は‥‥?
- ひびの
- 「ふくであそぼ!」
といいます。
- ──
- わぁ! どんなアイテムが並ぶんでしょう?
- ひびの
- いろいろなアイテムを並べますが、
なかでも今年は、タイトルどおり、
お洋服を頑張ろうかなって思っています。
ハラマキも体につけるものですよね、
そういう流れもあって、
今までよりも洋服を多くやろうかなと。
じつは、これまで、こつこつ作ってきたんですよ。
- ──
- 工場でつくる量産品ではなく、
手づくりでってことですか?
- ひびの
- はい、つくりました。
- ──
- ほんとに手で?!
- ひびの
- 量産する自信がないので、手で。
- ──
- つまり一点ものですよね。
それはアートピースとして展示するのではなく、
購入可能なものとして?
- ひびの
- もちろん、全部買っていただけます。
- ──
- すごいです‥‥。
- ひびの
- 手間賃がかかっちゃうものですから、
値段が高くなっちゃうんですけど。
- ──
- 着ることができるアートかもしれません。
いちファンとしておたずねしますが、
あの、たのしいバッグも?
- ひびの
- はい、バッグも出します。
バッグは、もともと衣装の端材だったり、
公演が終わった衣装を解体して布にして再利用して
作っているんです。
- ──
- 舞台の衣装って、終わると、
ひびのさんのところに戻ってくるんですね。
- ひびの
- 再演のために、って保管してくれるところも
いくつかはあるんですけれど、
だいたい、戻ってきます。
倉庫にぎゅうぎゅうに詰めているんですけど、
けっこう量もあるし、管理が大変なんですよ。
でも頑張って作ったものが多いので、捨てられない。
それを、バッグや小物に作り替えて蘇らせます。
手が空いたとき、少しずつ出してきて、
スタッフみんなで手分けして作ってるんですよ。
- ──
- それは楽しみです。
ひびのさんの作品でおなじみの、
動物や爬虫類シリーズの立体的なポーチも
すごくかわいいですよね。
あれもみなさんで?
- ひびの
- ポーチもそうです。
あれ、かわいいんだけれど、
作るのが大変で!(笑)
- ──
- そうですよ、とても複雑な形ですから。
- ひびの
- うちのみんなも、かわいいのができれば、
と、がんばってくれてます。
できあがるとしみじみ、
「すごくかわいい! でもこれ、
手間が、値段に合わない~」なんて(笑)。
私たち、そういう計算ができなくて、
そんなんばっかりなんです。
- ──
- しかも昔の衣裳を解体して、っていうことに、
愛情が感じられますね。
それをうかがったら、
TOBICHIで実際に拝見するのが
今まで以上に楽しみになってきました。
- ──
- 4月の「生活のたのしみ展」にも出店してくださって
ありがとうございました。
ちょうど同じ時期に、東京芸術劇場での
舞台のお仕事もあったんですよね。
▲DANCE4(TACT FESTIVAL2022)
- ひびの
- そうなんです。
- ──
- 4つ、プログラムがあって、
それぞれの衣装が、また全部違いました。
これは、どんなふうに考えていかれたんですか?
- ひびの
- このプロジェクトは、そもそもを言うと、
私が衣装を作りたくて始めたシリーズなんです。
いままで1つずつ公演をしてきた4作を、
今回、一度に上演することになりました。
1作ずつ、
「この人とやりたいなあ」って思った人に声をかけて、
この人とだったらこういうことができるんじゃないか、
みたいな感じでつくっていきます。
たとえば「Piece to Peace」の、
島地保武さんと酒井はなさんって、ご夫婦なんですよ。
そんなふたりだったら、ひとつに繋がった服で
愛を表現できるんじゃないかなあ、って。
- ──
- この写真、すごく不思議です。素材は‥‥?
- ひびの
- メッシュのストレッチですね。
とにかくふたりを繋げようっていうところから、
どんな素材にしようか、探しました。
- ──
- 舞台で見たら、もっと、うつくしいでしょうね。
- ひびの
- そう。これは、踊っているシーンが、
ほんっとに、いいんです。
涙、出ちゃうくらい。
このふたりはもう最高。
最高です。
- ──
- そんなふうにしてご自身で企画をして
作っていかれるんですね。
依頼されたお仕事をなさるだけでも
もうパンクするくらい忙しいのかと思っていましたが、
ご自身がなさりたいことをなさっている。
- ひびの
- それができるようになったのは、50歳を超えてからですね。
やろう、と思ったら言ってみよう、
そしたら叶うかなあ‥‥って。
だから最近は、ちょっと時間があると、
なにか考えてはプレゼンしてるんです。
昔は、そういうことが苦手だったんですけれど、
今は、なるべく言っていこうかなあと。
- ──
- そのお話、勇気が出ます。
- ひびの
- ほんとですか。
年を取るとね、
けっこういいこともありますよ。
- ──
- そうですよね。
これからまだまだひびのさんの世界が
広がっていきそうで、ワクワクします。
ありがとうございました。
TOBICHI、たのしみにしています!
- ひびの
- こちらこそ、ありがとうございました。
毎年TOBICHIで開催している
ひびのこづえさんの展覧会を今年も開催します。
今年のテーマは「ふくであそぼ!」です。
ひびのさんの遊び心が込められた服やポップなTシャツのほか、
200種類以上のハンカチ、工房でつくられたバッグなどなど、
たくさんのグッズをそろえてお待ちしています。
また、ひびのさんが先生になって、
オリジナルのTシャツをつくるワークショップを
11日(土)、12日(日)に開催します。
展覧会の詳細やワークショップのお申し込みは
こちらのページをご覧ください。ひびのこづえ
ふくであそぼ!
期間 2022年6月9日(木)〜2022年6月26日(日)
場所 TOBICHI東京
時間 11:00~19:00ひびのこづえさんの
5つのあたらしいデザインをのせた、
「ほぼ日ハラマキ」と「やさしいタオル」をつくりました!
ハラマキは「少女」、「そら」の2柄を
7月(TOBICHIで先行販売!)に、
「ROOT」、「Parade」、「クモの宝石」の3柄を
9月に販売する予定です。
タオルはすべてのデザインを
8月に販売する予定です。どうぞおたのしみに!ワクワクするような5つのデザインと、
ハラマキとタオルそれぞれの風合いを
どうぞおたのしみくださいね。ほぼ日ハラマキ
・販売時期
「少女」「そら」 7月販売予定
「ROOT」「Parade」「クモの宝石」 9月販売予定・ラインナップ
少女
[ハラマキ F、Sサイズ/けいとのぱんつ/かかとなしレッグウォーマー]そら
[ハラマキ F、Sサイズ/けいとのぱんつ]Parade
[ハラマキ F、S、XS、C、
F+10、S+10サイズ/けいとのぱんつ/かかとなしレッグウォーマー]ROOT
[ハラマキ F、S、XS、Cサイズ/けいとのぱんつ/かかとなしレッグウォーマー]クモの宝石
[ハラマキ F、S、XS、Cサイズ/けいとのぱんつ]・販売価格
ハラマキ(F、S、XSサイズ) 3,740円
ハラマキ(Cサイズ) 3,190円
ハラマキ(F+10、S+10サイズ) 4,180円
けいとのぱんつ 4,180円
レッグウォーマー 3,740円*すべて税込・配送手数料別
やさしいタオル
・販売時期 8月販売予定
・ラインナップ
少女
[ハンドよこなが/ハンド/キッチン/フェイス/シャワー/バス]そら
[ハンドよこなが/ハンド/シャワー]Parade
[ハンドよこなが/ハンド/フェイス/バス]ROOT
[ハンド/フェイス/シャワー]クモの宝石
[ハンド]・販売価格
ハンドよこなが 990円
ハンド 1,100円
キッチン 1,320円
フェイス 2,750円
シャワー 3,080円
バス 5,060円*すべて税込・配送手数料別