日々のできごとを記してみたり、
これからのことに思いをめぐらせてみたり。
手帳をひらくだけで、
じぶんとじっくり向き合う時間がうまれます。
そこに、おいしいお菓子と心地いい空間があれば、
さらに「いうことなし」だと思いませんか?
気まぐれに更新する「東京甘味手帳」は、
手帳タイムを過ごすのにぴったりな
東京のおいしいもの&お店案内です。
写真:川原崎 宣喜
- ジリジリとした日差し。
ジットリ重めの空気。
ここのところ、ちょっと疲労が
たまってきているんだよなあ。
- でも、わたしは知っている。
日々のちょっとした疲れを
かんたんにリフレッシュする方法を。
- そう、おいしい甘味を食べに行くこと!
- 目白の駅からすぐそばの場所にある、
昔ながらの和菓子店「志むら」にやってきた。
- 1階のショーケースに並ぶ
涼しげな和菓子たちを横目に、
目指すは、2階の喫茶室。
- 席について、手帳を広げ、
お目当ての甘味がやってくるのを
しばし待つ。
- あ、かわいいミニチュアの置きもの発見。
- オーダーしたのは、
お店の看板メニューでもある
生いちごのかき氷。
- 浅めのお皿の上に、
ふわふわに削られた氷が
積み重なっていく。
- みるみるうちに、山盛りに!
- かたちをきれいに整えて....
- フレッシュないちごのシロップを
たっぷりと。
- さらに、たっぷりと。
これで完成!
- 美しく整えられた氷の急斜面。
そこをすべりおりるいちごのシロップ。
ああ、小さく小さくなって、
この雪山をスキーですべりたい。
いちごの海にどぼんとダイブしたい。
- せっかくだけど、今日は
のんびり手帳を書いてはいられない。
とにかく、まずはひと口だ。
- 真っ赤な氷を、いただきます。
- 氷自体がふわふわでみずみずしく、
頭がキーンとならない、やさしいかき氷。
- ごろごろとしたいちごの粒感をしっかり感じる
甘酸っぱく濃厚なシロップも、たまらない。
- この時間をしっかりと脳内に焼きつけておこう。
氷をスプーンですくうときに奏でられる
シャリっという音や....
- 光を浴びてキラキラと反射する
白い氷と赤いいちごの輝きも。
- 半分ぐらい食べ進めたところで、
トッピングにも挑戦。
まずは「志むら」特製の豆乳クリーム餡。
- うん、これはおいしい。
豆の味をほのかに感じて、
ほどよいやわらかさ!
- さらに、同じくお店特製の
やさしい甘みの和三盆糖が入った練乳も。
いちごの甘酸っぱさに
ミルクのまろやかさが加わって、
さらに奥深い味わいに。
- ああ、もう残り少なくなってきちゃった。
食べ終わるのが悲しい。
- 最後のひと口まで、
だいじにだいじに、味わった。
- 食べ終えたころには、暑い日々の疲れも
氷といっしょにすーっと溶けていった。
気づけば手帳はまっ白のままだったけど、
まあ、こういう日もあるよね。
家に帰って絵を描きながら、余韻に浸ろう。
目白 志むら
昭和14年に東京・青山の高樹町で
先々代が和菓子屋を創業。
戦後間もない昭和21年に目白へ移った「志むら」。
店長の志村友子さんにお話しをおうかがいしました。
「目白に移ってしばらくしてから、
和菓子屋の一角で喫茶を始めたと聞いています。
はじめは宇治金時やあずきのかき氷など、
定番のものを作っていました。
生いちごを出し始めたのは 17~18年ぐらい前でしょうか。
氷を山型に盛り、真ん中にシロップをかけると
かき氷がつぶれてしまうので、
シロップを端っこにかけて
斜めに流すようなスタイルになりました」
近年のかき氷ブームで
この崖のようなスタイルが人気を呼び、
今では予約必至の人気店に。
以前は夏季限定だったかき氷も
年間を通して楽しめるようにしたといいます。
「春は桜、秋は栗。
お雛さまの時期には桜餅を食べたり、
お彼岸にはおはぎを食べたり….
和菓子には、日本古来の季節行事に即して
先代たちが築きあげてきた流れがありますよね。
一年を通してかき氷を出す上で、
そうした和菓子ならではの季節感も
エッセンスに入れています」
そう志村さんが語るとおり、
定番かき氷では宇治金時やあずき、
生いちご、白玉、黒蜜きなこなどがあり、
たとえば夏の期間限定では、
みぞれ青梅、夏みかん、メロン、
味噌ナッツ、あんバター、
アメリカンチェリーとナッツミルクなど
一風変わったメニューも展開。
「かき氷が好き」という理由で入社した
開発スタッフのみなさんで、
さまざまなメニューを
考え出しているのだそうです。
「かき氷のお店は今でこそたくさんありますから、
せっかくだったら和菓子店ならではの
特徴を生かしていきたいんです。
あんこを使ったシロップを作ったり、
フルーツに白あんを練り込んだシロップにしたりと
うちならではのものを提供して
みなさまに楽しんでいただけたらと思っています」
◎かき氷 生いちご 1,250円
崖のようなビジュアルと、
その見た目に負けない味わい深さで人気のかき氷。
気泡が少なく、透明感が特徴の「超純氷」を使用。
かき方を工夫し、ふわっとさせることで
浅めの器に盛っても最後まで溶けにくいのだとか。
生いちごシロップの素材は、静岡の紅ほっぺ。
旬の時期に生産者のもとで
1年分のいちごを冷凍しておいてもらい、
ひと月に何度も送ってもらうことで、
1年を通してフレッシュな味を提供しているそうです。
豆乳クリーム餡(220円)、ミルク(150円)などの
トッピングを加えて「味変」させるのもおすすめ。
◎九十九餅と煎茶のセット 900円
昭和20年代から続く「志むら」の代名詞的な存在。
やわらかい求肥に
3日間かけて甘く煮含めた北海道特産のとら豆を入れ、
無糖のきなこをまぶした一品です。
求肥には全卵を練り込んでいるため、
通常の求肥と比べて
なめらさと風味が増しているのだそう。
店内でいただけるほか、お土産としても人気です。
目白 志むら
東京都豊島区目白3-13-3
営業:和菓子販売 9:00〜18:00
喫茶室9:30〜18:00(LO17:30)
※喫茶室は要予約(10日前よりオンラインにて。前日・当日分は電話にて)
休み:日曜(毎週)、月曜(不定休)
電話:03-3953-3388
https://www.instagram.com/shimura_kissa/
まず驚いたのは、「氷だけでもこんなに美味しいんだ!」ということ。特別暑かったこの日、口の中ですーっと溶けていく氷はたまらないご馳走でした(果実感たっぷりのソースの美味しさは、言わずもがな)。看板やお品書き、包装紙‥‥それぞれに書いてある文字がすてきだったなあ。
(次回は、秋のおいしい甘味をお届けする予定です。どうぞおたのしみに。)
2022-07-30-SAT