生理はじぶんの身体のことを知る
大切な機会だと、甲賀先生は話します。
中学の保健体育で習って以来、
生理について学んでいない人も多いはず。
あらためて知ることで、
毎日を心地よく過ごせるヒントが
隠されているかもしれません。
東京大学医学部付属病院で、
子宮内膜症外来などを担当されている
産婦人科医の甲賀かをり先生に
「生理の基本」を教えていただきました。
大事なお話がたくさんつまっています。
甲賀かをり(こうが・かをり)
東京大学医学部附属病院産婦人科准教授。
千葉大学医学部を卒業。三井記念病院産婦人科、
国立霞ヶ浦病院産婦人科、
武蔵野赤十字病院産婦人科を経て、
豪州プリンスヘンリー研究所・米国イエール大学へ留学。
現職に就かれています。
- ─
- 社内で、生理中のセルフケアについて話したときに、
人それぞれ使っているものが違いました。
生理中に使用するものだけでも、
紙ナプキン、布ナプキン、月経カップ、タンポン。
鎮痛剤や漢方、ピルを服用している人も。
あとは、デリケートゾーン専用アイテムでケアしたり、
ヨガや膣のトレーニングで身体を整えている人もいました。
- 甲賀
- 方法が増えてきましたよね。
人それぞれ心地よく感じるものは違って、
明確なエビデンスが発表されている
万人に効くものはないと思います。 - コーヒーや甘いものは控えた方がいい、
あたためた方がいい、などありますが、
その効果は人それぞれなので。
- ─
- そうですか。
- 甲賀
- アロマですとか、お風呂や音楽、睡眠など、
その人なりに心穏やかになれる方法を
みつけてもらうのがいいと思います。
- ─
- 顔や背格好が違うように、
ということですね。
- 甲賀
- はい。
ただ、ほんとうにつらい生理痛は、
じぶんの努力だけではどうにもなりません。 - わたしが残念に思うのは、
なんとしても自力で乗り越えようとして
病院や薬にまったく頼ろうとしなかったり、
逆に、薬まかせでセルフモニタリングをおろそかにして、
じぶんの身体に気を配っていなかったり
両極端になってしまうことです。 - セルフケアも医学に頼ることも、
西洋医学も東洋医学も、
そのよさを知った上で
いま、じぶんにとって一番いい方法を
選択していただきたいです。 - で、じぶんにぴったりの方法をみつけたとしても、
年齢やちょっとした身体の変化で合うものが変わるので、
セルフモニタリングはずっと続けてほしいです。
- ─
- 年齢によって、
どんな変化があるのでしょうか?
- 甲賀
- ご説明しますね。
- 甲賀
- 10代では
病気に罹患する方やPMSは少ないけれど、
生理がはじまったばかりなのでホルモンが不順で、
生理周期なども不順な方が多いです。
3ヶ月以上止まった場合は、
病院の受診をおすすめします。 - 20、30代はエストロゲンが安定して
周期が一定になりますが、
生理痛で悩まれている方が多いです。
また、PMSにも悩む人が増えますね。
- ─
- 生理痛やPMSの悩みは、
ホルモンがではじめてからですもんね。
- 甲賀
- 40代に入ると、
子宮筋腫など病気の罹患率が高くなります。
症状としては周期が不順になったり、
経血量が増えたり、生理が長く続いたり、
これまでの生理と変わる方もいます。 - 40代後半から50代にかけて、
エストロゲンがダイナミックに変化するときに、
更年期というものが起こります。
- ─
- はあー、とってもわかりやすいです。
生理痛に対して不安がありましたけど、
頼れる場所や診断の目安がわかると
冷静にみられると思いました。
- 甲賀
- そうですね。
病気の有無にかかわらず、
女性は身体の変化にあわせて生理も変化します。
なので、若いうちから、
こうした年齢による生理の変化を理解しておくと、
40代で不順になったときに
余計に怖がらなくてすみますし、
冷静に対処することができます。
- ─
- そうですね。
- 甲賀
- 更年期で生理が変化するときって、ホルモンだけじゃなく、
お子さんの受験や親の介護など、
社会的にもいろいろな問題が生じる時期だと思います。
なので、私生活の影響でも気分に浮き沈みがある。
いろいろな事柄がないまぜになって、
更年期症状があらわれることもあります。
- ─
- なるほど。
精神的なことも身体に変化をもたらすんですね。
- 甲賀
- 結局は「迷ったら病院の婦人科にまず行く」ということ。
そして病院や医者任せにしないで、
じぶんの身体の変化を「セルフモニタリングする」こと。
そうして、生理を味方につけてほしいです。
- ─
- そうですね。
今回お話を伺って、
生理で体調が悪くなることがあたり前になっていて、
「病院に行く」という発想がなかったと思いました。
セルフモニタリングして、
症状が重かったり心配だったら婦人科を受診する、という
選択肢もきちんと持っておきたいです。
- 甲賀
- ぜひ、そうしていただきたいです。
ご自身で心配だな、変だなと思ったら、
一度相談に行ってください。
「この程度で行っていいのかな」と悩まれたり、
「何の病気もないですよ」と言われることが
恥ずかしいとおっしゃる人もいますが、
そんな風に思わなくて大丈夫です。
なにもないことはいいことですから。
- ─
- 病院に行く基準は
あるのでしょうか?
- 甲賀
- ふだんの生理と症状が違ったり、
痛みが強かったり、不安があれば
まず一度、行ってみてください。
- ─
- 婦人科のかかりつけ医があると
安心です。
- 甲賀
- 医師からエビデンスがもらえれば、
安心して、セルフマネジメントに
切り替えられることもあります。 - 薬に頼っていることを
ネガティブに思うかたもいらっしゃいますが、
薬もひとつの選択肢なので、
ライフイベントに合わせて上手に使ってください。 - ピルや漢方など薬を使ったり、
セルフマネジメントに変えてみたり、
生理の過ごし方のチョイスはいくらでもあります。
そうした選択肢をじぶんで持っておいて、
その時々でじぶんに合ったものを
選んでいただければと思います。
- ─
- 先生、丁寧に教えていただき
ありがとうございました。
- 甲賀
- こちらこそありがとうございました。
(終わります。甲賀先生ありがとうございました。)
2020-11-12-THU