能登半島地震で被災した蔵から救い出された
100年ものの輪島塗漆器を、
東京・神田のTOBICHIの一角で販売します。
明治期から昭和初期の職人さんたちが作り、
各家庭で長く大事にされてきたものですが、
震災後の片付け、あるいは管理の難しさなどから、
そのまま処分されそうになっていたものです。
しかし、まだまだ使える美しい器です。
能登の古民家宿「TOGISO」の佐藤さんは、
「使いつがれてきたすばらしい器が、
ただ震災を理由に捨てられてしまうのはしのびない」
と器を買い取り、その魅力を感じてくれる人に
つなぐ活動をされています。
ぜひ、この機会に多くの方に
能登の古い輪島塗に触れていただき、
その良さを知っていただけたらと思っています。

  • 震災を乗り越え、集められた
    「100年ものの器」

    今回TOBICHIで販売する器は、
    能登の志賀町にある古民家宿
    「TOGISO」オーナーの佐藤正樹さんが
    縁をつないでくれたものです。

    佐藤さんはもともと、古い建物の
    リノベーションなどを通じ、
    「古いよいものを修繕したり、紹介したりして、
    良さがわかる人に使ってもらう」
    という活動をされてきた人。

    能登の「TOGISO」も、そういった
    歴史あるよいものを未来につなげたい思いから
    2017年に生まれた古民家宿です。
    ですが、2024年に能登半島地震が発生。

    佐藤さんは震災後、「TOGISO」の運営や
    復興のための能登の情報発信をおこなうほか、
    100年前などに建てられた古い蔵から出てきた
    輪島塗や九谷焼を適切な値段で買い取り
    (そのお金は復興活動を行う団体や個人の
    資金にもなっています)、
    価値のわかる方に販売する活動も
    はじめるようになりました。

    「ものとしても非常にいいものですし、
    先祖代々受け継がれてきた、まだまだ使える器が
    処分されるのはあまりにしのびない」と佐藤さん。

    伝統工芸品の輪島塗は通常高価ですが、
    「多くの方に気軽に日常の中で使ってもらい、
    まずはその魅力を知る第一歩になれば」ということで、
    手にとりやすい価格で販売されています。

    その佐藤さんが集めた古い輪島塗の一部を、
    実はほぼ日では、2025年1月に開催した
    「生活のたのしみ展」でも
    すこしだけ販売させていただいたのですが、
    今回、あらためて期間を設けて多くの方に
    手にとってもらう機会を作ろうということで、
    東京のTOBICHIで
    販売させていただくことになりました。

    この機会が、多くの方が輪島塗の魅力に
    実際に触れるきっかけとなることで、裾野が広がり、
    いまだ復興途中の環境にいらっしゃる
    輪島塗の職人さんたちを、間接的に
    応援することにもつながればと思っています。

    輪島塗って、どんな漆器?

    輪島塗は石川県輪島市を中心に生産される、
    「堅牢優美」な魅力を持つと言われる
    日本三大漆器のひとつです。
    天然の漆を幾重にも塗り重ねることで生まれる
    丈夫さと美しい艶が特徴。
    能登の家庭ではそれぞれに一揃いのセットがあり、
    冠婚葬祭などの機会には必ず使われる
    昔から人々の暮らしに溶け込んだものです。

    また輪島塗は、日常づかいの器としても優秀で、
    軽くて丈夫なうえ、断熱性にすぐれています。

    手に持ったときの心地よさは、
    ほかの素材にない特長です。
    適切に使えば、修理をしながら半永久的に使え、
    使うほどに深まる美しさをたのしめます。

    お手入れも意外と簡単で、今回販売するものは、
    やわらかいスポンジと中性洗剤でやさしく洗い、
    乾いた布で拭けば大丈夫なようなものです。
    ただし、熱風をともなう乾燥と紫外線には弱いため、
    食洗機や電子レンジ、直射日光のあたる場所に
    長く置いておくことはお避けください
    (日光の当たる場所に置いておく場合は、
    布をかけておくのがおすすめです)。

    使い勝手のよい器、
    さまざまご用意しています。

    輪島塗は伝統的には、御膳にいくつもの椀などが
    組になった一揃いのセットで使われてきましたが、
    今回は、いまの暮らしに合わせて使いやすいように、
    それぞれの器を単品で販売いたします
    (フタと椀など、一部セットで販売するものもあります)。

    「これぞ輪島塗」というイメージの、
    大小のお椀や、かわいらしい小皿など、
    赤と黒のさまざまな器をご用意しています。
    佇まいの良い、美しい光沢を持つ器です。
    同じかたちのものを何枚か重ねた様子や、
    並べた感じもとてもかわいいので、
    複数枚まとめて揃えるのもおすすめです。
    御膳やランプシェードなどもあります。

    さまざま場所から集めた古い器ということで、
    状態はひとつひとつ異なりますので、
    じっくり見て、ピンときたものをお迎えください。
    大切に使われてきた美しい輪島塗、
    ぜひあなたの生活のなかで、
    引き継いで使っていただけたらうれしいです。

    〈おまけ〉
    能登の志賀町にある
    「TOGISO」もぜひ。

    最後に、佐藤さんが経営する志賀町にある古民家宿
    「TOGISO」(とぎそう/富来荘の英語表記です)の
    ご紹介もさせてください。

    この文章を書いているほぼ日の田中は、
    2025年5月に能登半島を訪れたときに
    「TOGISO」に泊まらせてもらったのですが、
    能登の友達の、古くて広い家に泊まって
    過ごさせてもらう感覚で、感激しました。
    能登の古い日本家屋の魅力をたっぷりと残しながら、
    使いやすくリノベーションされた建物で、
    とても心地よく過ごせます。
    朝起きたとき、窓から見える海の様子もすばらしいです。

    大きな囲炉裏もあって、ぼくが出かけたときには、
    野菜や魚を焼いたり、とれたてのカワハギの
    お刺身を食べたりしながら、
    佐藤さんやスタッフのまどかさんと、
    いろんな話をさせてもらいました。

     

    「TOGISO」のある志賀町の赤崎集落は、
    海沿いの、黒瓦の昔ながらの建物が立ち並ぶ、
    落ち着いた時間が流れる場所です。
    歩いていると、きもちいい風が吹いてきます。
    自転車や原付でふらふらするのもたのしいそうです。
    しばらく滞在して、ここで仕事をしながら
    過ごすのもすごくよさそうで
    (台所なども使わせてもらえます)
    佐藤さんは東京と能登の二拠点生活をされていますが、
    夏に「TOGISO」で過ごす日には、
    昼休みに海にもぐって、魚を獲ったりもしているとか。
    近くには泉質のいい温泉もあります。
    空には星もよく見えます。

    とはいえ震災時には、この集落も大きく揺れ、
    塀などが倒れ、4.2メートルの津波が来たそうです。
    「TOGISO」の裏手の小屋も大きな被害を受け、
    いまは骨組みだけの、海を見るスペースになっています
    (西向きで、ここから見る夕暮れがすばらしいそうです)。

    佐藤さんはこの「TOGISO」の建物のほかにも
    赤崎集落でいくつか建物を譲り受けていて、
    それぞれに改修しながら、ご近所の方といっしょに
    ちいさなまちづくりをはじめています。
    昔からのお祭りを復活させたりなどもしていて
    「この場所のよさをわかってもらえる仲間を
    もっと増やしたい」と佐藤さん。
    本当に魅力的な宿泊施設なので、
    興味の湧いたかたは、「TOGISO」に一度
    泊まってみることをおすすめします
    (場所柄、レンタカーなどの車、あるいは
    バイク等で訪れる必要はありますが)。

    また最近、佐藤さんが譲り受けた蔵のひとつの
    改修が済んで、古い九谷焼や輪島塗などを扱う
    無人販売の古道具店「TOGIZO」
    (富来蔵の英語表記です)に生まれ変わったそうです。
    場所は「TOGISO」の斜め前。お店の前が駐車場です。
    訪れたときは、こちらもぜひ足を運ばれてみてください。

    「TOGISO」のサイトはこちら

    使ってつなぐ、輪島塗
    (能登の蔵からやってきた輪島塗漆器を販売します)

    期間
    2025年10月17日(金)~
    2025年11月3日(月)
    ※10月27日(月)はお休みです

    場所 
    TOBICHI東京

    時間
    11:00~19:00