あのね、いいですか、
ちょっとみなさん、勘違いしてないですか。
趣旨ですよ、趣旨。コーナーの趣旨。
あのね、なにがいいたいかというとね、
最近、みなさんちょっと自慢気じゃありませんか？
ここは単なる「珍名さん」コーナーじゃないんですよ。
そりゃあね、ありますよ、変な名前は。
わけてもね、インターネットという
たいへん便利なものが
普及しているこの時世ですからね、
ぶっちゃけ、検索ウィンドウに、
「変な名前の生き物」かなんか入れて、
リターンキーをポンと押せば、
ずらーーっと出てきますよ、変な名前。
でもね、そういうんじゃないでしょう？
たとえばその、深海に人知れず棲んでいて、
ほとんど誰もその名前を口にしないような
変わった生き物をわざわざ引っ張り出してきて、
自分の名前について嘆かせるなんていうのは、
ちょっと違うでしょう。
極端にいっちゃえば、手抜きでしょう。
好きだからこそ、あえて苦言を呈しているんですよ？
伝わってますか、この気持ち？
そんなわけで、あらためまして、こんにちは。
私の名前はブタクサです。
日本全国、いたるところに生えている、ブタクサです。
いろんな人から、年がら年中、
「ブタクサ」「ブタクサ」言われてますが、
なんでブタ呼ばわりされてるんだかわかりません。
鼻もなく、ブゥとも鳴かず、肌色でなく、雑食でなく、
どうして私が
ブタ呼ばわりされてるんだかわかりません。
英名の翻訳が由来との説もありますが、
英名でなぜブタクサなのかという疑問は同じ。
ブタが食うからブタクサなのか？
ならばほとんどの草がブタクサじゃないか？
むろん、逆側の気持ちも代弁しておきましょう。
ブタさんにだって失礼ですよ。
なにも私はブタさんが嫌いで
嘆いてるんじゃありません。
ブタじゃなくて他の動物の名前が冠されているなら
よかったかというとそうじゃありません。
私が嘆くのは、その「ぞんざいさ」です。
推測するにこの名前、練られたものではあるまい。
ざっくり呼ばれ、しだいに定着し、
じゃそれでいいかということでそうなったに相違ない。
ああ、歯がゆきは、その決断の欠落！
嘆くべくは、易きへの堕落した推移！
根底に脈々とある不条理は責任者の不在！
おまけに私はどうやらアレルゲン！
糸井重里もおそらく私のアレルギー！
あなたの身のまわりにある、嘆きの名前。
いま、そこにある、哀しき名前。
本日は、ブタクサがお送りいたしました。

（つぎなる嘆きへつづく）