バフンウニの嘆き。  Nageki Of Bahun-uni


正式名称 御御御付(おみおつけ)
英名 miso soup
意味 味噌汁の丁寧語。
御味御付、御御御汁、
御実御汁食などと
書かれる場合も。
嘆きその46 御御御付

私、この椀の中で頭(ヘッド)をつとめる、
味噌と申します。
この度は「御御御付」というチーム名について、
ちいとばかり嘆きに参上しやした。
‥‥なぜ、脇役の俺達を甘やかすんですかい。
「みそ汁」で十分なのに。
「御御御付」たぁ、
あまりにもご大層じゃあねぇでしょうか。
え? なんですって?
「御御御と、御を3つも重ねるくらい、
 愛情を込めて丁寧に作ったんだよ」
って、いやいやいや!
だからそれが大袈裟だって言ってるんでさぁ!
俺達には、その「愛情」が重荷なんですよ‥‥。
それは、過保護ってもんでしょう。
過保護ってやつぁ、ひとを反抗的にします。
重すぎる愛情に反発して、
出汁(だし)の野郎は
夜の校舎の窓ガラスを壊してまわりやした。
具(ぐ)の野郎は、
盗んだバイクで走り出す始末。
名前のせいで、みんながグレちまった‥‥。
気のいい奴らなのに、かわいそうに‥‥。
だから、ここはひとつ、
「御御御付」というこの名前を、
二度と呼ばないと約束してはくれませんか?
‥‥そうですかい、「それは無理」ですかい。
‥‥わかりやした。
無理なものは仕方がねえ。
とはいえ、脇役の仁義だけは通させてもらいやす。
野郎ども、いくぜ! 夜露死苦!

出汁「嗚呼‥‥
   たった一度の青春だから
   愛羅武御飯の この想い
   咲いて散らすが 我が人生
   親衛隊長・出汁、見参!
   魂武(こんぶ)、入ります!」

 具「暴食魂 胸に抱き
   汁物街道 突き進む
   七色の食材 特攻み(ぶっこみ)ます
   特攻隊長・具、参上!
   闘怖(とうふ)、入ります!
   倭華滅(わかめ)も、入ります!」

味噌「さぁて どん尻に控ぇしは
   しがねぇ愚連隊の 大総長
   日本の誇る 発酵食品
   赤と白とが こんにちは
   泣く子も食べる
   合わせ味噌たぁ 俺のことさ!」

三人「点火、加熱で、熱々な汁の出来上がり」

味噌「猫舌上等!
   天上天下御飯独占!
   我等 御飯と 走死走愛!
   人呼んで‥‥」

三人「御御御付と発しやす!」

味噌「身の丈を超えた名前で恐縮至極。
   食卓の隅で、以後お見知り置きを」

出汁「‥‥わわわ、総長! てえへんだ!」

 具「俺達、た、食べられてます!」

味噌「取り乱すんじゃねえ、運命だ」

出汁「あ‥‥美味いって言ってくれてる。
   この御御御付おいしいって‥‥」

 具「おふくろの味だ、って‥‥」

味噌「そうかい‥‥おふくろの味かい‥‥。
   ‥‥ありがてぇなあ」

出汁「へい(泣)」

 具「ありがてぇ(泣)」

味噌「‥‥俺達、もっと素直になれば
   よかったのかもしれねぇな‥‥すまねぇ」

出汁「総長! 謝らねぇでください!」

 具「そもそも俺がグレたのがいけねぇんだ!」

味噌「なあ‥‥生まれ変わってよ、
   もしもまた同じお椀で出合ったら、今度は、
   御御御付の名に恥ねぇ汁になろうじゃねえか。
   主役上等だ」

出汁「俺ぁ、活悪武士(かつおぶし)でいくよ!」

 具「俺ぁ、死威汰化(しいたけ)と、
   悪武羅悪下(あぶらあげ)と、それから‥‥」

味噌「すまなかったなぁ、妙な嘆きになっちまって、
   ほんとにすまなかったなぁ‥‥」
(すべてが美味しく飲みほされる)

(つぎなる嘆きへつづく)

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2010-11-16-TUE