第1回おもしろいチームをつくらなきゃ。
中畑 じゃ、球場のなかを歩きますか?
それとも、先にしゃべる?
写真、撮る? どこで撮る?
糸井 まぁ、しゃべったりしながら。
監督、慌てないように。
一同 (笑)
中畑 もう、だいたい、こうなんだ。
自分で仕切り出しちゃうから。
糸井 ははははは、
もう、選手のときと心がまったくおんなじだね。
中畑 そうそうそう。
そのまんま大人になったタイプだから。
糸井 だけど、そういう監督でいられるっていう、
そのチームがまたおもしろいですね。
中畑 まあ、こういう私を選んだ以上は
このオリジナリティで我慢しなさいよ、と。
糸井 そうですね。
中畑 私のやりたいとおりにやらしてくださいよ
ということはもう、最初に宣言してる。
糸井 もう、就任当初から、
オリジナリティあったもんね。
中畑 ええ。
糸井 インフルエンザにかかってみせたりしてね。
中畑 だははははは。

(2012年2月1日、中畑さんは
 親会社の変わったDeNAの初代監督として
 沖縄で行われた初のキャンプに臨んだ。
 新監督のキャンプインをマスコミも歓迎し、
 「熱いぜ、キヨシ!」といった見出しで
 多くのスポーツ新聞の一面を飾る。
 が、その翌日、なんとインフルエンザを発症。
 選手をインフルエンザから守るため、
 報道陣にマスクが配られたりするなかでの
 まさかの監督発症。リタイア第1号。
 「選手にうつすと迷惑をかけてしまうので
  勇気ある撤退をさせていただきます」
 とコメントし、4日間、宿舎に隔離された。
 当然、その話題もスポーツ新聞の一面に)

糸井 おかしかったな、あれは(笑)。
中畑 あれも演出ですよ。
なーんてね、なんてな。
ほーんと、あの2ヵ月はね、普通じゃなかった。
毎日、注目されっぱなしですもん。
糸井 ああー。
中畑 つねにカメラがあって、ずっと撮られてて、
2ヵ月間、毎日、そうでしたよ。
糸井 たぶん、
プロ野球の監督ならではのストレスが‥‥。
中畑 たのしくてしょうがなかったね!
糸井 あ、そうですか(笑)。
中畑 初日、ユニフォーム着た瞬間、
めっちゃたのしくてね。
もう半端じゃないんだよ、カメラの数が。
俺、ここまで注目されるんだなぁと思ってね。
糸井 選手時代、さんざん注目されてるじゃないですか。
中畑 いやいや、あの比じゃない。
たとえていうなら、
引退するときの感じが毎日ですよ。
糸井 ああー。
中畑 だから、キャンプの初日なんて、
行動が監視されてるのかって思うぐらい、
報道陣が集まっちゃってさ。
糸井 だって、インフルエンザになって、
宿舎の窓から顔出してなんか言ったのも
ニュースになってたもんね。
中畑 それも一面になったんだよ。
スポニチなんか、5日連続中畑が一面、
っていう記録もつくったみたい。
糸井 そもそも、中畑さん、
体調崩すことなんてあんまりなかったでしょ?
中畑 野球を風邪で休んだっていうのが
人生で初めてなんですよ、ぼく。
糸井 わはははは。
中畑 風邪で休んだって、
小学校のころにだってないんじゃないかな?
糸井 それが、よりによって。
中畑 そう、それだけ注目されてる中で、
キャンプ2日目に監督がインフルエンザ。
星野監督なんか怒っちゃって
「おまえが全国に菌をばらまいてるんだよ、
 コノヤロー」って言われちゃった。
ほら、俺を取材した記者が
ほかのチームに行く可能性があるからさ。
糸井 それは、言いたくなるかもねぇ(笑)。
中畑 まぁ、インフルエンザになることが
仕事だとは絶対言えませんけど、
そうやって取りあげてもらうことだって
監督の仕事の領域にはあると思うんですよ。
糸井 うん、うん。
中畑 やっぱりスポーツ新聞の一面に
芸能ニュースがあるよりは、
野球がそこにあってほしいという気持ちは
正直、あるから。
なんでもいいってわけじゃないけどね。
でも、おもしろかったでしょ?
糸井 おもしろかったですけどね(笑)。
しかし、独自の道を行く監督だなぁ。
中畑 ぼくね。
もう、マイウェイ。
糸井 マイウェイですよね。
中畑 はっはっはっは。
「♪ふなでがーー」
糸井 だけど、そういうことしつつ、
けっこう気づかいもしてますよね。
中畑 はい。
だって、周りがたのしくなかったら
自分もたのしくないから。
糸井 あ、自分もつまんないからね。
周りをたのしくさせるのも、
マイウェイなんだ。
中畑 そうそう。
で、こんな監督のチームが強かったら
おもしろいじゃないですか。
糸井 それはそうですね。
(つづきます)
2013-12-17-TUE