第1回おもしろいチームをつくらなきゃ。
糸井 まぁ、はじまりはたのしくても、
やっぱりシーズン中の監督は、
笑ってばかりいられませんよね。
中畑 そうですねぇ。
なんか、試合中はぼく、怖い顔してるみたいね。
糸井 あ、怖いですよ。
だいぶ怖いっすよ(笑)。
怖いし、なんていうか、
血色が悪いというと変だけど、
ぐっと息を止めているような感じに見える。
中畑 無呼吸。
糸井 無呼吸みたいになってますね。
中畑 ああー、熱中しちゃってるんだね。
糸井 だからもう、ずっと考えてるから、
血が頭に集中してる、みたいな。
中畑 ああー。
糸井 ご自分では観ないんですか、
テレビの中継なんかを、録画して。
中畑 あ、観ない。ぜんぜん観ない。
糸井 一回観たらおもしろいかもしれない。
怖い顔してますよー(笑)。
中畑 ほんとですか(笑)。
糸井 それは、でも、
「監督の顔をしている」
っていうことだと思いますけど。
中畑 そうなんですかねぇ。
糸井 チームは今年、最終的には5位。
ぎりぎりまで3位争いしてはいましたが‥‥。
中畑 はい。
糸井 でも、順位がひとつ上がったことを、
ファンはすごく喜んでましたよね。
(※横浜DeNAベイスターズは
 昨年まで5年連続最下位だった)
中畑 ははは。
糸井 いや、すばらしいと思いますよ、それは。
ひとつ上がっただけだろ、って
冷たく言う人はいるかもしれないけど、
でも「上がったんだよ」って言えると思う。
中畑 ほんとは、許されないですけどね。
ぼくは、シーズン前に
「CSに行きます。
(※CS:クライマックスシリーズ。
 ペナントレース終了後、
 日本シリーズ進出をかけて
 上位3チームで争うポストシーズンゲーム)

 行けなかったらクビです」
って宣言してたわけだから。
その気持ちはいまでも変わらないですけど。
糸井 ファンも、チームも、
ほんとに行きたかったんですよね。
中畑 いや、行きたかったですよ。
糸井 どんだけ行きたかったか、って感じですよね。
中畑 はい。でも、その一方で、
まだ、時期尚早だというのは、
ぼくのなかにはありましたけど。
糸井 ああーー、そうですか。
つまり、チームとしての力が、
まだちょっと足りてないっていう実感が。
中畑 だって、今年のヤクルトなんて、
序盤からピッチャーがそろわなくて、
怪我人も多くて、本来の実力が
ぜんぜん出せてなかったじゃないですか。
ほかのチームも含めて、ほんとの力でいうと、
今年もうちは最下位だったと思いますよ。
糸井 ああー。
中畑 それは悲観的に言ってるんじゃなくてね。
そういうところからスタートしてると思ってるから。
糸井 なるほど。
でも、事実としては、
終盤まで3位争いに絡みながら、5位。
最下位からは浮上しました。
これ、選手たちはどのくらいの感じで
受け止めてるんですかね。
ひとつ順位を上げたうれしさはあるんですかね。
それとも、やっぱり悔しいんですか。
中畑 悔しいと思います。
糸井 ああー。
中畑 とくに、CSっていうのが見えてたから。
やっぱり、悔しい。
と同時に、手応えもあったと思う。
終盤に9連敗した後でも、
まだチャンスがあったしね。
そういう環境にいることそのものが
多くの選手にとって初体験じゃないですか。
糸井 うん。ファンも久しぶり。
中畑 ええ、ファンも。
その、勝負に対する集中が続く感じ。
1試合1試合の、ひとつひとつのプレーに感じる
ひりひりした空気っていうのは、
新鮮だったと思いますよ。
最後の最後までそのチャンスがあったんですから。
糸井 お客さんも、最後まで期待してましたね。
中畑 そうそうそう、
奇跡が起きるんじゃないかな、って、
起こしてくれるんじゃないかな、って。
そういう期待を持ちながら、我々もやってた。
でも、最終的には‥‥無理だったね。
糸井 中畑さんには、その実力という部分も、
見えてはいて。
中畑 やってる最中は、そんなこと言わないよ。
勝つんだと思ってやってる。
糸井 うん。
つまり、そのときの力の配分というか、
どのくらい余裕があるのか、みたいなことが
自分ではわかってるってことですよね。
中畑 それはわかってます。
まだ、ダメです。
てっぺんにのぼりつめるには、
やっぱり決め手が足りない、うちは。
糸井 自分のところの選手のことは、
誰よりもよく見てるだけに、
わかっちゃうところがあるんですね。
中畑 客観的に比べちゃうとね。
でも、比べたときに、たとえ差があるとしても、
それをなんとかして覆すことが、
俺の仕事なんだよね。
糸井 そうですね。
中畑 だから、差は気にしちゃいけないことだし、
可能性っていうのは、絶対あるんだから、
やる以上は、選手がやる以上は、
可能性があるんだから、
後ろ向きのことは絶対言わない。
糸井 うん。そういうシーズンでしたね。
中畑 うん。悔しいですね。
(つづきます)
2013-12-18-WED