NANASHI
中卒でいいんじゃない?
名無権兵衛・15歳・デビッドリンチ目指す。

第26回 5月4日。晴れ。気温92F(華氏)。

バカみたいに暑い日です。
頭が痛いのでこの日は
1、2時間目の文法の時間だけ出て帰ることにしました。
電車は1時間に1本という驚異的な少なさなので、
30分以上炎天下の中で待つことになりましたが。
蜂が多いです。ブンブン飛んでます。
蜂は頭悪いです。
普通人間の回りをブンブン飛んでたら殴られるでしょう?
何故挑発しにくるんですか?
そんで殴ったら殴ったで刺してくるし。本当、迷惑です。
とにかく、蜂と太陽と線路です。
当然ホームは屋根無しです。
日射がダイレクトに届きます。
線路は2車線。
ずっと先まで続いてます。
暑い。
それにしても暑いです。
日本よりは湿気は多くは無いですが、
この暑さは許容範囲をゆうに越えています。

とりあえず電車の来る30分前には誰もいません。
なので日射で熱くなった
謎の荷物箱(鉄道の所有物)に座ります。
ベンチが無いので。
一応ウェイティングルームはあるのですが、
そこにもクーラーが無いらしく、
ドアが全開になってます。
あのウェイティングルームにいるよりは
外の荷物箱に座ってた方がまだマシです。
で、座ってたわけですが。
10分くらいたつと、
もう思考能力が止まるくらいに体力が奪われます。
ジーンズが熱くなってます。
スニーカーの中も発火するくらいに
熱くなっているはずです。
上に着ている長袖のYシャツも
袖をまくりあげているとはいえ、うざったい感じです。

20分後。
駅の近くに車が止まりました。
そこから背の高い黒人が出てきて
ホームに向かってきました。
「おーい、ニューヨーク(シティ)行きの電車は
 そっちのホームでいいのかい?」
実際は当然英語ですよ。
「そうっすよ。こっちっすよ」
そして彼は線路の下の地下通路(多分超暑い)をくぐって
こっち側のホームに来ました。
そして案の定話しかけてきます。
「よお!調子はどうだい?」
「上々っすよ」
「しっかし、今日暑いな!」
「うん。92Fらしいですよ」
「92?おいおい、狂ってるな!?」
「ええ、クレイジーですよ。実際」
「ああ、クレイジーだ。
 ・・・・君はどこから来たんだい?」
「日本です。あなたは?」
「俺はアメリカンだよ。俺はジョン。よろしくな」
「よろしく」
握手。
「君はどこに住んでるんだい?」
「フローラルパークです。知ってます?」
「ああ、知ってるとも。
 俺はニューヨーク(シティ)に住んでる」
「マジ?」
「ああ、ハーレムに住んでるんだけど、知ってる?
 ハーレム」
「ええ、もちろん。今おいくつなんですか?」
「36だよ」
「へえ」
「君は?」
「16です」
「マジ? 若いな」
「どうも」
そこから白人女性が同じホームに来ました。
ジョンはその白人女性にも話しかけます。
「よお! 今日は92Fだってさ!」
「マジ? 狂ってるね」
人種や国籍を越えた空間ができてます。
その後も僕とジョンは英語の事や
音楽のことについて話したり。
思いました。
英語でちゃんとコミュニケートできると楽しいです。
まだ喋ってることの全てが
理解できているわけでは無いですが。
というか、ほとんど分かってないですが。
それでもこっちに来て今日、5月4日で丁度2ヶ月目。
少しくらいは喋ったり聞いたりすることが
できている気がします。
こっちに来てからは英語についてはもちろん、
日本語についても考える事が多いです。
何故でしょう?語学の根本に触れているからでしょうか?

結局、電車は2分遅れの12時11分に到着しました。
電車の中も、当然うだるような暑さです。
電車に乗ってからはフローラルパークまで2駅です。
それでも歩くと1時間くらいかかりますが。
というか、こんな日に歩けば確実に命が削れます。
ジョンとはまた少し喋った後、握手をして別れました。

今は家に帰って原稿を書いているわけですが。
ずっと壊れていると思ってたクーラーが
昨日突然動き出したので、今は涼しいです。
窓の外には蜂がまた飛んでます。
ニューヨークはこれからも暑い日が続くのでしょうか?
勘弁してください、プレジデント、ブッシュ。

2001-05-11-FRI

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