NANASHI
中卒でいいんじゃない?
名無権兵衛・16歳・デビッドリンチ目指す。
ある中学校でたったひとり高校進学しない少年がいた。
それがたまたま友だちの息子だったので、
もうちょっと深く「本人のつもり」を聞いてみた。
映像作家になりたいので、アメリカに行きたいっていう。

この連載は、昔はやった「家出のススメ」みたいな
学歴社会に対しての異議申し立てでもないし、
少年よ高校に行くなと扇動する企画でもない。
どうだっていいんだ、他人の男の子なんだから。

だけど、中学卒業くらいの年齢の人間が、
自分のやりたいことをやっていくために、
どうやって歩いていくのか、どう成功したり失敗したり、
どういい気になったり、どう落ちこんだりするのかを、
少なくともじゃまはしないで見守っていきたいと思った。

本人が、やる気がなくなれば、すぐに連載はストップする。
なにかいいサジェスチョンがあれば、
それを参考にして、旅立つかもしれない。

なんにもやってないうちから有名人になると困るので、
しばらく本名は出さないままで掲載していこうと思う。
『名無権兵衛・15歳・デビッドリンチ目指す』
本気でやれよ! ガキの勇気を大人が見てるぞ。

今回は怒りのボルテージが高めです。

事の発端は、NYへの不信感が
高まってきたことからです。こっちに住んでもう
すぐ二年くらいの時間が経ちますが、
僕の中でNYはもう見限ってきた感じがします。
やや飽きてきた感もありますし、
英語での生活にもどうしても限界がありました。

さすがに日常会話は問題なくこなせる段階まできましたが、
僕が将来やりたいこと・・・
映像、及び脚本書きの段階にまでなってくると、
僕の英語力では100%の力を出し切れません。
日本で学んできた、
日本語独特の間やノリを
僕は愛しているということを知りました。

こっちで映像を学べる学校に行こうと思っていましたが、
どうも、あまり乗り気ではなくなってしまいました。
そこで次の展開を考えました。
こっちでの学校の入学を諦めたとはいえ、
中学時代からずっと引きずっている
映像への情熱はいまだ消えることはありません。
僕は、やはり映像の勉強がしたいです。
そして映像の仕事がしたいです。
だったら母国語で技術を学べばよいと思い、
来年になったら帰国し、
バイトをしながら専門学校にでも通えれば
幸せだなぁと思ったのです。

ただ、僕は日本の教育システムが
よくわかっていなかったのです。
専門学校というものは誰にでも門を開けてくれる
自由な学習の場だと思っていました。
迂闊でした。
真逆、そこでまで高校卒業の資格
もしくは大検を求められるとは思っていませんでした。
大学入学に高校卒業の資格や大検を求めるというのは、
わかります。
昨今の大学生がどういう気持ちで
勉強をしているのかはわかりませんが、
やはり高校卒業程度の学力がないと、
大学に入ってもついていけないという事はわかります。

僕の中では高校というものはその後の人生を
いかに転がすかを考えるための場だと思っています。
やることが見つからないのならば
高校生活の三年間の中で見つけていけば良いですし、
人生においてかなり重要なパートを占めるであろう
15歳〜18歳の時期を集団生活の中で過ごすのは、
その後の人格形成においても有効なことだと思います。
誰もがわかっている通り、
一歩学校を離れて社会に出れば、
因数分解なんてことはしませんし、
年号を暗記していなくてはいけないというわ
けでもありません。専門分野に進みたい人以外に、
高校で習う知識なんて必要の無いものと思います。
では高校生活の意味とは何かというと、
集団生活の中から覚える協調性、勉強を
しながら覚える忍耐力、
そして、その後の人生を考えて視野を広める、
ということではないでしょうか。

そういうことなら僕は高校よりも、
いっそ外国に行きたい、と思いました。
かくして中学校卒業から今まで、
かなりイレギュラーな生活をしてきたわけです。
こっちで独り暮らしをするということは、
僕にとって大きな血肉となっていると思います。
英語が話せるようになったのも勿論、
生きていく上での基礎知識が
かなり叩き込まれた感があります。
人はいとも簡単に他人を裏切れることも学びましたし、
本当の誠意、任侠がいかに美しいかということも
学びました。
通っている語学学校では世界各地の
一癖も二癖もある人たちに出会って、
なんとも気持ちが良くて豪快な精神を学びました。

僕は渡米してから今まで、人道を築き、
視野を広めてきたつもりです。
僕は決して、
高校卒業の資格を持っている人たちよりも
人として劣っているということは無いと思います。
「だったら大検でも受ければいいじゃん」
という事になるかもしれませんが、
僕からしてみれば、
それは僕のように生きてきた人たちの
尊厳を踏みにじる行為です。
それは、僕の今までの人生を否定した考え方です。
僕は学ぶ意思があります。
映像を勉強したい希望があります。
しかし、そのために結局
「高校卒業程度の勉強ができないやつは来んな」
と言われることは、
「所詮、中卒なんてロクなモンじゃない」
と言われていると同じ事と僕は捉えます。

なるほど、僕は確かに勉強は苦手ですが。
しかし、こんなロクデナシのクズでも
誠心誠意をもって生きてきたつもりです。
自分を甘やかすことなく、
自ずと進んで現実に存在する
地獄の正体を見極めてきました。
僕には周りが理解しきれないほどの
自信とプライドを持って生きています。
いや、むしろ自信とプライドのみで
生きてきたと言っても良いでしょう。
とにかく、実績というものが何一つ無い僕にとっては、
這い蹲るように生きるほかありません。

そんな中で、あらためて
学歴というものの存在が疑問です。
とくに、専門学校の入学資格に
「高校卒業もしくは大検取得者」
の要項があるのはおかしいと思います。
勉強したいと願う人間の意志を
ボッキリと折る行為です。
勉強をする意思のある人間はたとえ中卒者であろうと、
一度、話くらいは聞いてもらいたいものです。
高校に行かなかった間、僕が何を見て、
何を学んできたかを聞いてもらい。
その上で、僕がクズ野郎かどうかを判断してもらいです。
まあ、それでもどうにもならない
モンなんでしょうが・・・。

高校に行かず、中卒で生きていこうと思った僕は、
今まで一度も自分の人生を恥じてはいません。
むしろ誇りを持って生きてきました。
が、やはり真っ当な社会生活は送れないようです。
世知辛い世の中です。

というわけで、道が断たれてしまいましたが。
今後どうしようかというプランがなくなりました。
とりあえず、来年は帰国しようと思ってますが、
その後どうするか・・・
少し考えなくていけないですね。

ツラツラと負け犬教育論を語ってきましたが、
多分、明日になったらこれを書いたことを
後悔するでしょう。
僕はあまり世間に向かってモノを言いたくないですし。
結局、潰されるのは弱者、
若年である僕の方だということも分かっています。
夜に書いた文章は朝に見直せ、
と言いますが、今回は敢えて、
そのまま送信します。
今の怒りを、
ヤケクソのエネルギーをそのまま送ります。

名無権兵衛くんへの激励や感想などは、
メールの表題に「名無権兵衛くんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2002-09-19-THU

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いままでのタイトル

2000-01-18  第1回 はじめまして。
2000-01-20  第2回 夢の難易度と、今自分にできる最大限の努力。
2000-01-24  第3回 自分のアートは「自分」そのものなんだ。
2000-01-30  第4回 なにかをやらなきゃ、かっこわるいんだ。
2000-02-10  第5回 なにかをやってないと不安なんだ。
2000-02-24  第6回 早朝。
2000-03-05  第7回 3月2日、卒業まであと16日
2000-03-15  第8回 今までありがとう、バリア
2000-03-26  第9回 卒業式で熱くなった。
2000-04-06  第10回 学生でなくなった自分。
2000-04-22 第11回 働かなくては!
2000-05-10 第12回 この感覚は、注射を打つ前と似ている
2000-06-10 第13回 衝撃的な一日
2000-07-01 第14回 バイト探しマシーン
2000-07-14 第15回 時間はいっぱいある
2000-08-06 第16回 あまりの暑さ
2000-08-19 第17回 本当に後悔していないか
2000-09-15 第18回 バイト。
2000-10-17 第19回 へこみ気味なので。
2000-11-03 第20回 予防接種とインフルエンザ
2000-12-10 第21回 渡米時期と持ち逃げと
2000-12-29 第22回 22世紀の話し
2001-02-13 第23回 鏡に写っていたのは
2001-02-23 第24回 直接映像に興味を持った映画
2001-04-23 第25回 ニューヨークに来て1ヶ月
2001-05-11 第26回 5月4日。晴れ。気温92F(華氏)。
2001-06-04 第27回 引っ越しをしました。
2001-06-20 第28回 自信に満ちている。
2001-06-27 第29回 プチ家出しました。
2001-07-26 第30回 少しだけ、ほんの少しだけ
2001-08-13 第31回 年齢や国籍のこと
2001-09-13 第32回 マンハッタン島の事件のこと
2002-02-19 第33回 今はまたマンハッタンにいます。
2002-02-22 第34回 一人ほくそ笑む。
2002-04-03 第35回 スパゲッティしか食べてなくて
    イタリア人になりそうです
2002-04-18 第36回 前に住んでいた幽霊寮。
2002-04-30 第37回 公園。
2002-06-20 第38回 近頃の料理事情など。
2002-09-08 第39回 夏休みの研究。