そもそものきっかけ

栃木県、黒磯(くろいそ)。
東京から新幹線に乗って1時間で着く
「那須塩原駅」から、JR東北本線で1駅の場所にある
自然の多い、気持ちのいい郊外の町です。

こちらの黒磯で、多くの観光客が訪れる
一本の通り‥‥とはいえ
ずいぶん小さな通りではありますが、
そこに「Chus(チャウス)」はあります。

お店のコンセプトは「那須の大きな食卓」。
スタッフのみなさんが、
自分たちの大好きな「那須のおいしいもの」を
たくさんの人たちに
たのしんでもらうきっかけにしてほしい、と
誕生しているお店です。

中に入ってみると、もともと家具屋だった場所を
がらりと改装したスペースは、
ひろびろとした、気持ちのよい場所。
中央にある、那須の産直の野菜が積まれた
トラックが目を引きます。

那須地域を中心としたいろんなおいしい加工品も
たくさん並んでいて、
ほぼ日の「カレーの恩返し」も
その一角に置いてくださっています。

また、建物の奥のスペースは
那須の食材を使ったごはんが食べられる
レストランスペースです。
ほぼ日のカレーチームは打ち合わせで
これまで2度ほど食べさせてもらったのですが、
那須の野菜のおいしさに、2回ともびっくりしました。

こちらのお店で、加工品の仕入れの
担当をしているのが、山川将弘さん。
「カレーの恩返し」をすごく気に入ってくれて、
ほぼ日に「お店で販売させてほしいのですが」と
丁寧なメールをくださったのが、
今回、ほぼ日のカレーチームが朝市に
参加させてもらうことになるきっかけでした。

(中央の黄色い服の男性が、山川さん。
左が農産物や加工品担当の北川さん、右がシェフの中村さん)

山川さんは言います。
「Chusは、自分たちがほんとうに好きなものだけを
厳選して置くお店でありたいんです。
ただ、那須のものだけだとどうしても
置くものの幅が狭くなってしまうので、
全国のおいしいものを置かせてもらっています」

さて、こちらの「Chus」というお店と、
今回、ほぼ日カレーチームが参加させてもらう
那須の「那・須・朝・市」というイベントとが
どうつながるかというと、
じつは、この「Chus」というお店が
「那・須・朝・市」から生まれたお店だから、
というのがその答えです。

「Chus」と「那・須・朝・市」の代表はどちらも
那須街道沿いでハンバーガー屋を経営している
宮本吾一さん。
「那・須・朝・市」は、宮本さんが、
いろんな農家のかたに手伝ってもらいながら
自分のお店の駐車場ではじめた、
トラック数台ではじめた朝市が、そのはじまりです。

(右の帽子の男性が、宮本さん。 Chusのみなさんは、全体にいつもとても
たのしそうな雰囲気があります)

最初は「お店で使う食材のために、
農家さんとのつながりができたら」くらいの
軽い気持ちではじめたものが、
運営していくなかで地域の多くのかたが
どんどん手伝ってくれるようになり、
たくさんのお客さんが来るようになって、
「那須という地域の役に立つ」ことを
すごく強く意識されるようになった、とのこと。

今回10回目を迎える「那・須・朝・市」は、
いまでは、一日に3000人ものかたが訪れる、
人気の恒例イベントになっています。
開催は、春と秋の年2回。

(こちらが会場となる旧室野井小学校。 遠くの山並みが美しい、きれいな景色の場所。
当日はここが出店ブースと駐車場になり、
たくさんのお客さんと出店者のかたでにぎわいます)

とはいえ、ずっと続けているうちに、
新しい課題が見えてきたそうです。
それは「朝市の数が足りない」ということ。

・瞬発的な年2回のイベントだけでは、
地域の農家のかたの根本的な役には立てない。

・いちど来て気に入ってくれたお客さんも、
次が半年後となると足がどうしても遠のく。

・もっと数を増やして欲しい、という声がたくさんある。

とはいえ、

・朝市の実行委員のみなさんは、どのかたも本業をしながら、
ボランティアのようなかたちで朝市のことをしているので、
年2回から回数を増やすのは、すごく難しい。

そういったことから「常設店舗」の必要性を感じ、
朝市の運営メンバーから7人ほどを誘って、
今年、2015年の1月からはじめたのが
「Chus」なのだそうです。

「でも、驚いたのが、まだ1年も経っていなくて、
宣伝もほとんどできていないのに、
いろんなかたからすごく応援してもらっている
感じがあるんです。
情報発信をしているFacebookのほうも
しっかり見てもらえている感覚があります。

この地域だけだと人口も少ないですし、
いろんなかたが『巻き込む』ようにしているので、
ほんとに多くのかたが関わっているというのは
あるかもしれないですけど、
Chusにも、朝市にも、なんだか地域のたくさんの人が
期待してくれているのを感じるんですよね」

たしかに「Chus」というお店には全体に、
なにかがはじまりそうな空気があり、
これからの動きがついつい知りたくなるような
気になる雰囲気があります。

さらに、宮本さんは続けます。

「あと、ぼくらが自分たちでいいなと思っているのが、
『那・須・朝・市』にしても、Chusにしても、
地域の役に立ちたいと思いながらやっていますけど、
行政からの補助金などはまったくもらっていない、
ということなんです。

補助金をもらわずに、頭を使って
ちゃんと赤字にしない仕組みを考えて、
試行錯誤しながら運営しています。

ぼくらが、朝市やChusをしている理由って
やっぱりおもしろいことをやりたい、ということに
尽きるんですね。
おもしろいから、やっている。

補助金などをもらってはじめると、
その一番大事なところがぶれかねないと思うんです。
だから、そこはもらわずにやりたい。

完全に遊びという感覚ですし、
問題が出てきたら、それを解決するのが
ゲーム感覚だったりするんですよ。

あとメンバーみんな、それぞれに本業もあるから、
みんな運営に対して覚悟があるんですよね。
だから、そういうこともあって
うまくいっているという気がします」

そして、こちらは山川さん。
「あと、ぼくが思うのが、那須はすごくいいところだし、
ぼくら、那須で暮らすのが好きだし、
『こういう暮らしができるんだぞ』みたいなのを
なんだか他の地域の人たちに見せたい、
みたいな気持ちもたぶんあるんです(笑)。

だから地方に住むために障害になりやすい、
仕事が少ないこととか、地域のしがらみとかを
朝市みたいなことを引き金に解決していけたら、それは
『こんなふうにやったら、
こんなたのしい暮らしができるんだよ』
といった自分たちの表現にもできると思うんです。
そういうこと、やれたらいいですよね」

「那・須・朝・市」は、地方の町のイベントですが、
1日につき2500人くらいのかたが早起きして参加する、
とても勢いのあるイベントです。

「なんだか出店している人たちも
本気でおいしいものを出すぞ、という気概があるし、
お客さんもすごく期待してやってきてくれるし、
会場にすごくエネルギーがあるんですよ」
と、宮本さん。

「おいしいお店ばかりが集まっているから、
ぼくらも食べたくて、つい、いろんなブースで買っちゃう。
だから、気づくとすごくお腹がいっぱいに
なっているんです(笑)」
と、山川さん。

ちなみに今回、「Chus」とほぼ日の合同ブースで
出店することになったのは、
「カレーの恩返し」で仕上げる、特製カレーうどん。
那須の食材をふんだんに使った、
那須のおいしさをしっかり味わえてあったまる、
ほっとする味のカレーうどんです。

(こちらは試作のもの。実際に販売するものは、 ここからさらにおいしく進化しています!)

また、みなさんと打ち合わせをしているうちに
「那・須・朝・市」の名物のミルクプリンに
「おらがジャム」をプラスしたものも
販売することになりました。

わいわい話している途中で、
「これのせたら、どうなる?」
「うわー、おいしい!」「販売したい!」
と全員で盛り上がり、一気に販売が決まった、
スペシャル・コラボレーションです。

「那・須・朝・市」の開催は、
2015年10月24日(土)、25日(日)の2日間。
朝7時から午後1時まで、おこなわれます。

地域のイベントということで、
他の地域からいらっしゃる場合のアクセスは
少々たいへんではありますが、
とにかくみなさんのお話を聞いているだけで、
わくわくしてくるようなイベント。
興味を持たれたかた、ぜひお越しください。

※ちなみに「Chus」のお店がある那須・黒磯地域には
とにかくすてきなお店がたくさんあります。
「那・須・朝・市」のタイミングに限らず、
ぜひ、お立ち寄りになってみてください。

(c) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN