ニュースのご近所。
あの出来事、近くで見るとこんな感じ。

第51回 おもしろバス話、ほか。


みなさん、こんにちは!

さまざまなバスでのエピソードを、
折に触れてお伝えしてきましたが、
今日はひさしぶりに、バス話を2通お届けすることから、
「ニュースのご近所」を、はじめますね。







・バスで思い出した話を書きます。
 日頃、住宅地と駅までを結ぶ
 巡回バスを利用しているのですが、
 ある日の夕方、駅から家へ戻るバスにいちばん乗りし、
 お気に入りの最後部の座席へ歩いていくと、
 1つ手前のシートに、すやすやと眠る
 1歳ぐらいの赤ちゃんがいたんです。
 たった一人で。

 あわてて運転手席まで戻り、
 「あの、赤ちゃんが忘れられてます!」
 と言うと、普段よく顔を見かける
 茶色のサングラスにパンチパーマをかけた
 無愛想な運転手さんは、
 サングラスの奥で目を丸くして立ち上がり、
 泡をくったように現場へ急行。
 赤ちゃんを確認したものの、
 バスは運行しなければいけないし、
 子供も放っておけないしで、
 「参ったなぁ」を連発していました。


 この頃、車内にいるほかのお客さんも
 赤ちゃんに気づきはじめていたのですが、
 そこで見事だったのは、
 それまでただの「オバチャン」にしか
 見えなかった年配のご婦人方が、いっせいに集まり、
 いっせいに「お母さん」になったことです。

 運転手さんとともにオロオロしていた
 わたしの横からスゥーっと手を伸ばし、
 起こさないように抱きかかえると
 静かに身体を揺らしながら、
 「1歳ぐらいかしらねぇ…」
 「あらぁ、寝汗いっぱいかいちゃって…」
 などと口々に言いながら、
 眠っている赤ちゃんに微笑みかける姿は
 とてもたのもしく、なんだか目の前でパァーっと
 母性の花が咲いていく瞬間を見た気がしました。

 結局、赤ちゃんはその中の一人が
 見ていて下さることになり、バスは出発。
 たまたまバス停がある交番前で停まり、
 おまわりさんに引き渡されました。
 あれから2年ぐらい経つけれど、
 赤ちゃんが無事にお母さんの元に
 戻っているといいなぁ、
 ただの「忘れ物」だったらいいなぁと
 ときどき思い出します。

 交番をふり返りふり返り、
 心配そうにバスに戻っていった
 強面の運転手さんも印象的でした。
 (ユ吉)



・バスの運転手さんの話で、
 新婚旅行のことを思い出しました。
 イタリア国内でツアーバス移動中、
 お土産屋さんでの自由時間がありました。
 集合時間となり、さあ出発、とバスが動いた途端、
 「バリバリバリ・・・」と大きくて不吉な音が。
 なんと、隣りに停車していた
 バスと、接触事故を起こしてました。
 たまたま相手のバスも同じ会社の車で、
 これから帰るところだったらしく、
 比較的損傷の軽い相手バスに私達が乗り換えることで、
 無事出発することができました。
 それにしても、事故の原因が、
 私達ツアー客が買い物してる間、
 相手バスの運転手さんとワインを一杯引っかけて
 いい気分になっちゃってたからとは・・・

 さすがイタリア。こんなところにも
 お国柄が出るのでしょうか。
 あの時とっても申し訳なさそうに運転してた
 ステファノさん、元気かな〜。
 (ごんごん)






「赤ちゃんの忘れもの」「観光バスの事故」
という、ミニニュースをお伝えいたしました。
どちらのメールからも、運転手さんの人となりがわかる!

では、次はシリアスなメールをお届けいたします。
1か月前に、日本と外国との違い、みたいなことを
特集したことがあったのですが、
それに対するご意見をいただいたのです。
貴重な声ですので、ご紹介いたしますね。







※ここには、9月20日のしばらくのあいだ、
 被差別部落についてのメールが掲載されていました。
 「誰にも知られたくないんです。
  私たちにとって何がこわいって、
  それを知られることが本当にこわいんです」
 というような内容でしたが、
 さきほど、匿名希望のそのご本人から
 「書きすぎたと今あらためて読んで後悔しています。
  冷静ではないような気がします。
  世の中に『差別』というのはたくさんあり、
  私が書いたことは、星の数ほどある中のほんの一例です。
  私のメールの掲載は見送っていただきたいのです」
 という、とても丁寧なメールをいただきました。
 そこで、掲載されていたメールを、削除いたしました。
 ここでは、かわりに、
 そのメールを読んだ感想メールのうち、
 1通を、ご紹介させていただきますね。
 (9月20日午後6時半 ほぼ日・木村俊介より)


・「ご近所」読みました。胸がキュっとなりました。
 知っていました、その言葉。
 そういった差別があったこと、
 私も母から聞いていました。
 私の住むここ浜松市にも、
 差別を受けていた土地がありました。

 私が通った中学校の学区にはいくつもの小学校があり、
 その中の一つが、差別されている地域の学校でした。
 そこは道路の整備も遅れていて、
 質素な家が並んでいました。
 母からその地域へは遊びに行かないように言われ、
 「差別」のことを聞きました。

 話を聞く前は何も思わなかったのに、
 聞いてから、同級生たちを
 特別な目で見てしまう自分がいました。
 そんな自分がすごくイヤでした。
 その地域から通う一人の男の子を好きになり、
 両想いだとわかったときにも、
 どこかコワイような気持ちが抜けず
 付合うことはできませんでした。

 現在その地域はとてもきれいに整備され、
 新しい町名で呼ばれています。
 清々しい爽やかな名前になりました。良かった。
 新興住宅地として人気もあり、
 新しい人達がどんどん入居しています。

 母から聞いた「差別」の話を、
 私の子供たちに話す気はありません。
 主人も同じ気持ちです。
 何も口にしない。いつか忘れてしまえばいい。
 優しかった同級生たちに対する、
 私の心の裏切りのお詫びです。
 (サラ)






ご本人の要望がありましたので、
源になるメールを削除いたしましたが、
差別についてのメールは、
「歴史」ということを考えさせられる最近の日々の中で、
今回、ぜひご紹介をしたかったメールでした。

では、次回のこのコーナーで、お会いしましょう!!


さまざまな、日本国内や海外からの
ニュースのご近所のおたよりは、
件名を「ご近所ばなし」として、
postman@1101.comまで、どうぞーー!!

2002-09-20-FRI

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