第95回 陰謀説の渦巻くカンボジアから。
ニュースのご近所にいる人は、
持っている情報も、考える道すじも、
そこにいるからこそ、もしかしたら、
一般的なメディアの報道に接したのとは
違う考えを持っているかもしれません……。
そんな仮説をもとにはじめられた、
このコーナーでは、
なるべく、いろんな場所からのメールを、
ご紹介していきたいと、考えています。
現在、暴動でたいへんなことになっている
カンボジアからの、続報がやってきましたので、
今日は、そのメールを、ご紹介したいと思います。
現地が、いろんな意味で混乱におちいっていることと、
その中でも比較的客観視できる外国人(日本人)たちの
とまどいや不安や情報の錯綜さが、
とてもよく伝わってくるなぁと感じて読みました。
イラク問題について、アメリカ在住の方から、
先日北米からメールをくださった人とは違う考えを
いただきましたので、そちらも、あわせてご紹介します。
それでは、どうぞ。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
・ご近所ばなし、カンボジア編続報です。
タイはカンボジアとの国交断絶状態です。
ビジネスも、援助も全て凍結。
カンボジアにとって、経済的な面だけでも
10億ドルを越える損失になりそうです。
暴動の理由ですが、最初に言われた
タイ女優が言ったカンボジアの悪口とか、
カンボジア人がバンコクで殺害されたとかの
噂(というより、デマでした)とかではなく、
与党が7月に行われる総選挙の
道ならしをしようとしたのが真相だ、
というのが、多くの外国人の見解です。
より公正な選挙を求める学生運動家や、
野党の有力者を暴動の首謀者として逮捕してしまおう!
というのがもともとのシナリオだったとか。
デモを始めたのは、国粋主義的な学生達ですが、
彼らは同時に反与党的立場をとっていましたし
野党の指導者も、
クリーンな人物というイメージが強いので、
選挙前には特に邪魔な人間達です。
実際、今日までに主だった「邪魔者」は
思い通りにうまく逮捕できた模様です。
暴動が大使館焼打ちや、大規模な略奪に
発展してしまったのは計算外だったようですが。
国際的な信用はがた落ちだし、
タイには謝罪と補償をしなければいけないし
タイからの援助も資本投下も完全凍結で、
現政府にとってずいぶん高くついた
お買い物になってしまいました。
首相は今回の事件を
「反政府の人間が扇動した」と断言しました。
それならもっと
さっさと軍でも出動させればよかったのに。
軍も警察も動きが異常にのろかったのは、
静観を命じられていたからとしか思えません。
いくら暴徒が千人以上で暴れてるからって、
殆ど丸腰の相手を制圧できないほど
カンボジア軍は腰抜け役立たずだって言うんでしょうか?
もう一つ疑問が。暴動略奪に加わったのは、
知識階級ではなくむしろ貧困層の人間達なのに
きっちりタイ資本のホテルや工場を襲えたのは何故?
タイの国旗がはためいている訳でなし、
誰かが指示したとしか思えません。
タイ国籍の大物(マフィア?)がもってるホテルは
一指も触れられず無事でしたし。
与党大物と密な関係があるといわれている人物ですから、
彼のホテルなんか襲ったら
命があぶないのは確かですけど、
暴徒がどうしてそんなこと知ってるんでしょうね?
与党がしくんだ、という説が
今のところ一番整合性がありそうですが
なににしろ、こんな茶番に人を巻き込まないでよね!
とまた今日も怒っているところです。
(Mari)
・米国中西部の片田舎に住んでいる者です。
先日、米国のイラク攻撃について
DCの人達の意向で事が動いているという
指摘がありましたが、
私の見方とちょっと違っていましたので、
こんな考えもあるということを
お伝えしたくて電子メールを送ります。
私は政治は常に
国民の深層心理を反映していると思っています。
今回のイラク攻撃についても、米国民の心の奥底で、
「イラクはまだ武器を持っているから
懲らしめにゃいかん」と思っている人の数が
多数派を占めているんだと思います。
この国はどこにでも星条旗があるように
愛国心の固まりで、
「アメリカが世界でNo.1の国なのだ」
と思っている人が大多数だと思います。
No.1の国だと誇ること自体は非常に大事なことですが、
これは両刃の剣で、意に添わない国が出れば
懲らしめねばという思想に走りかねません。
「この国の一部の人が独走している」
と言って中央の意志決定機関のせいにすることは
簡単ですが、
彼らだけが独走して何か事が進んでしまう、
ということはあり得ないと思います。
それがあり得るのは他国から侵略されて
傀儡政権に牛耳られてしまったときくらいでしょう。
Naziが台頭してきた奥底には、
戦後の賠償に苦しむドイツ国民の
多数の不平不満があったように、
日本の社会体制の改革がなかなか進まない奥底に、
国に借金があろうがなかろうが
今のままで生活が出来ているのだから、
とりあえずいいじゃないかと思っている人が
多数存在するように、
国政と国民の互いの意思は
底辺でつながっているものだと思います。
それをさも
「自分とは無関係に、どうしようもなく
大変なことが勝手に動いている」
かのごとく扱うのは、何かに
責任転嫁をしようとしているのではないか、
とすら思えてきます。
(新)
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
「デマ」とか、「シナリオ」とか、
健康的な時にはあまりあらわれない政治の言葉が、
いまのカンボジアを、象徴しているのかなぁと
思って、メールを拝読しました。
現地の外国人たちの息づかいが聞こえるかのような
メールを、どうも、ありがとうございました。
それでは、次回のこのコーナーで、またお会いしましょう。
「ほぼ日」スタッフの木村でした。
さまざまな、日本国内や海外からの
ニュースのご近所のおたよりは、
件名を「ご近所ばなし」として、
postman@1101.comまで、ぜひどうぞー!!!
|