第96回 イラク問題、イギリスでは……。
「土曜の夜、
TV50周年・特別生番組でのdarling発言を
共感して聞いていたグランド・フィナーレの最中の、
『シャトル帰還途中連絡断つ』
の速報に、現実を突きつけられた感じです。
楽しいとこも悲しいことも映すTV、これからも見ます」
「テキサスにいるのですが、
今日は一日中シャトル墜落事故のニュースで、
街中の旗は半旗になっており、
私自身も、とてもショックを受けています」
‥‥このように、土曜日の夜中から、
テキサスでのシャトル墜落事故についてのメールが、
いくつか届いています。
そんななかで、先日のイラク問題への特集と絡めた、
アメリカからのおたよりを、ご紹介いたしましょう。
その後2通、イギリスからのメールも続けてお送りします。
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・こんにちは。
この間、アメリカのイラクに対する
戦争についてメイルしました。
米国中西部に住んでいる人の意見を読んで、
やっぱりアメリカは広いんだなぁと思いました。
住んでる場所によっても意見が分かれると思うし
つるんでいる人達によっても意見は色々だと思います。
特にボストンは移民の人が多いので
それでも意見が違うと思います。
今はボストンに住んでいますが
多分私がかつて居た場所、西部の田舎町にいたら
戦争しようって言う人が沢山いたかも知れません。
かつての場所は白人天国で
有色人種は仲間外れが当たり前だったので。
ここでは本当に色々な国の人がいるので
また違った意見があるんだと思います。
お友達のお宅にお邪魔した時も
マサチューセッツは違うかもなんて話も出ていたので…
ただ、アメリカにも戦争が嫌だと思っている人も
居ない訳ではないんだとちょっと言いたかったんです。
今日はスペースシャトルが墜落したのを
朝のニュースで知り、テレビの中で映っていた映像が
なんだか飛行機雲みたいだったのが
印象に残ってます。
テキサスに住んでいる、シャトルが爆発した場所あたりに
住んでいた人がテレビの電話インタビューで
『ものすごい音がして外に出てみたら…』
なんてインタビューを受けてるのを見て
その音の瞬間に宇宙飛行士の人達が
亡くなったのかなぁと何となく思いました。
夜のニュースもその話題で持ちきりです。
NASAのこのスペースシャトルのプログラムの
マネージャーの人が記者会見で少し泣きながら
私たちの見逃したこと、私の見逃したことが
この事故を引き起こした(引き起こすことを許した)
と言っているのを聞いて
なんだか切ない気分になりました。
「それでもこの事故があったからと言って
もう2度とやらないと言うことはない、
夢に挑戦し続けることが彼らを報うことだ」
のような事を言っていて
ちょっと元気になりました。
American Dreamみたいなものを
垣間見た気分です。
宇宙飛行士の人達の冥福を祈ります。
(匿名のかた)
・ロンドンで大学生をしています。
9月に友達とロンドン北部に家を借りて
シェアして住んでいます。
私の大学自体、治安の悪いところにあるのですが、
このあいだリシン(致死性の有毒物質)が見つかったのは
私の家のとってもとっても近くです。
何週間が警察が、ワラワラいました。
そのころフラットメイトの体調がかなり悪く、
起き上がれない程だったので
みんなでとても心配したのをおぼえています。
銃なんかが見つかったモスクも近いし、
どうもアメリカとイギリスが戦争をすることに決めてから
そういう事件が絶えません。怖いですよねー。
(y)
・イラク攻撃に関する
アメリカの現地のムードが紹介されていましたが、
アメリカとともにイラク出兵準備が
着々と進められているここイギリスでも、
似たような状況です。
世論調査では
「国民の8割が国連決議なしの攻撃には反対している」
という数字が出ています。
イギリス人はどちらかというと
「正義のためなら戦わなくっちゃ」
という発想をする人たちで、
アフガニスタン侵攻や数年前のコソボ攻撃、
それに前回の湾岸戦争では、
世論は概して武力行使支持の傾向が強かったんです。
強硬派ブッシュのアドバイザーとして
いさめ役に回ってくれるのではないかと
期待されていたブレア首相ですが、
ここ一連の発言を聞いていると、
ブレアが実はブッシュも顔負けの
強硬派なのではという気がしてきます。
特に今週の国会発言にはびっくりしました。
水曜日の国会でイラク問題について答弁したブレア首相、
議場からの「次はどこだ」という野次に答えて
「イラクの件が片付いたら、
次は北朝鮮と対峙しなくてはならない」
と答えたというのです。
夫がニュースで見て教えてくれたのですが、
とても信じられなくて国会のホームページで
議事録を確認したら確かに出ていました。
これを見て一気に不安が増してしまいました。
日本のマスコミではこの発言、報道されていますか?
イギリス政府の強硬な態度を反映して、
イギリスでの
アラブ系テロ活動が活発化しているようです。
リシンをつくっていたというテロ容疑者が
実は亡命者を騙ってイギリスに入国していた、
という報道の後、イギリスでは難民や亡命者への
風当たりが強くなっており、ひいては
「白人でないなら悪人と思え」といわんばかりの
人種差別へと広がりつつあります。
そうした風潮を受けて、
最近の地方議会の補欠選挙では
ネオナチ政党の候補者が当選。
イギリスはどうなっていくんだろうと
不安が強まるばかりの毎日です。
(Scotty)<
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「私たちの見逃したこと、
私の見逃したことが、この事故を引き起こした」
このプログラムのマネージャーさんの言葉が印象的でした。
イギリスからのメールは、先日ご紹介した
フランスの方のものとはかなり違っていますね。
ネオナチ政党の候補者が当選というところも、
日本人にとっては、リアルに危機を感じるんだろうなぁ。
今日はもうひとつ、
「7年ほど前のニュースのご近所です」
という方からのメールを、お送りいたします。
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・「カナ式ラテン生活」で、
ガリシア沖での重油流出事故の件を読ませていただいて、
7年くらい前に起きた、
私の地元での事故のことを思い出し、
メールを送らせていただきました。
私の地元は福井県です。
地元で起きた事故とはナホトカ号のことなんです。
事故が起こったのは、12月末のことだったと思います。
日本海、越前海岸から
何十キロも離れたところで沈没した
ロシア船タンカーナホトカ号は、
日本海の上を吹きすさぶ季節風に乗って、
一週間くらいかけて雪といっしょに
新潟から鳥取に及ぶ広大な範囲の海岸に
重油を撒き散らしました。
私の地元の福井県には、たくさんの重油といっしょに、
たくさんの重油を抱えたまま
ちぎれたナホトカ号の船首が流れ着きました。
タンカー事故が起こったときは、
あまり意識してなかったのですが、
1日いちにちと越前海岸に向かって
まっすぐ近づいてくる重油の帯に、
地元の漁師さんたちだけでなく、
福井県民全体がぞっとする危機感を覚えたのを
記憶しています。
私は福井県の中でもわりと山間のほうに住んでいて、
越前海岸には毎年夏に海に行くくらいにしか
縁がなかったのですが、それでも、
美しい岩場の海岸がどろどろの重油にまみれた
映像を見たときは、言いようのない
重いショックを受けたのをはっきりと覚えています。
自分でも意識していない、深層の部分で
誇りに思っていた心のよりどころを、
理由もなく土足で踏みにじられた気分でした。
腹が立ったのは、重油事故の場合、
だいたいが漂着されたほうが
ほとんどの負担を強いられます。
船の所有者は作業にかかった費用を
すべて負担することができません。
重油が流れ着いて、さざえ、あわび、うにといった
名産品は全滅、観光業も打撃を受けます。
でも、事故の張本人である船の所有者には、
そこまで責任を追及することができません。
そんななか、どこか外国の環境学の学者が視察にきて、
「重油の回収作業が終わったら、
二、三週間で海の状態は回復するだろう」
とテキトーなことを抜かしやがったのには腹が立ちました。
んなわきゃねえだろ!!
回収作業だってただじゃないんだ!!
カナさんがコラムでかかれていたとおり、
大量の重油は分解させることが困難で、
重油回収船も期待することができません。
おまけに時期が真冬で寒く、重油は粘度を増し、
油というより冷えかけの飴のように硬いので、
県外や、県内全体から集まってきた
ボランティアによる人海戦術が主力になります。
ひしゃくやバケツを使って、ドラム缶何万本分という
重油を回収する作業は、灰色の日本海をバックに、
雪が降る中、2ヶ月3ヶ月と続きました。
人の手で回収できないところまできたら、
バクテリアをまいて、
細かい重油の粒子を分解してもらいます。
そこでやっと回収作業が終わりました。
もうすぐ春になるという時期だったと思います。
事実、地元の新聞にバクテリアが
重油の粒子にとりついて分解している顕微鏡写真が
載ったときは、正直泣きそうになりました。
私たちの心の中に宿る、
美しい海岸がやっと戻ってくると・・・・
あれから数年、
ナホトカ号の船首はまだ越前海岸にあります。
タンカー事故の記念碑として、
警告と祈りををこめて置かれることになったのです。
私たちの生活が、ああいったタンカーに
支えられてることは承知してます。
だからこそ、せめて
事故がなくなるようにと祈らずにはいられません。
タンカー事故と聞いて、ナホトカのことを思い出し、
長々と書いてしまいました。
でも、思い出してほしかったんです。
日本で起こった海の事故のことを。
(だーやま)
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事故から直に学んだことを、
大切に捉え直し続けている人って、
たくさんいらっしゃるんだろうなぁと拝読しました。
とてもリアルだったので、思わずご紹介したんです。
また、次回のこのコーナーで、お会いしましょう!
「ほぼ日」スタッフの木村でした。
さまざまな、日本国内や海外からの
ニュースのご近所のおたよりは、
件名を「ご近所ばなし」として、
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