ブームとまでは言わないまでも、
本や、雑誌や、テレビなどで取り上げられる機会が、
数年前に比べて、段違いに多くなっています。
そして、SNSなどでも、粘菌の写真を投稿する人が、
決して珍しい存在ではなくなったような気がします。
ぼくは、よく、友人たちに、
「ようやく時代がおれに追いついてきたぜ!」
って、笑いながら言うのですが、
この状況をとても嬉しく思っています。
とりあえず、粘菌ファンのひとりとしては、
ぼくの写真を見ていただいて、
粘菌という生きものがいることを知っていただく、
そして、さらには、
粘菌という生きものって何か面白そう、
と思っていただけたらいいなあ、と思っています。
このたび出版の運びとなりました初の児童書、
『もりの ほうせき ねんきん』は、
写真絵本という位置づけなので、
一応は子ども向けなのですが、大人でも、
粘菌のポートレイトとしてお楽しみいただけるかと。
それと同じく、この短期集中連載も、
とにかく難しいことは抜きにして、
きれいで、かわいくて、ちょっと気持ち悪い、
粘菌という生きものの、外見、いや、肖像を、
しばし楽しんでいただけたらなあ、と思っています。
粘菌の、詳しい生態をもっと知りたい、とか、
もっともっと名前を知りたい、という方は、
専門家の著書や、図鑑をどうぞご覧あれ。
(拙著『粘菌生活のススメ』も、ぜひ!)
さて。
最初にご紹介するのは、
『もりの ほうせき ねんきん』の表紙に登場している、
ホソエノヌカホコリです。
阿寒の森では、初夏から秋にかけて、
倒木から発生するお馴染みの粘菌だと言えます。
我々が目にすることができるのは、
粘菌が胞子をつくるために「変身」した子実体。
きのこと同じく、胞子を散布します。
ただし、きのこの子実体は細胞でできているので、
数日くらい経つとどんどん腐りはじめますが、
粘菌の子実体は変形体(ぬるぬるねばねば状態)の、
分泌液でできているので、条件さえ良ければ、
長い期間胞子をまきつづけます。
それにしても、できたばかりの、
未熟な子実体の美しいこと……。
大きさは頭が直径1mm、柄が2mmほどと、
極めて小さいのですが、オレンジ系の派手な色なので、
森の倒木で発生しているとよく目立ちます。
未熟な子実体は中身が液体ですが、
乾燥していくにつれ、徐々に黒ずみ、
中は粉状(胞子)になります。
やがて表面が割れると、
網状でふわふわの物体(細毛体)が露出して、
胞子を飛ばします。
ホソエノヌカホコリの未熟な子実体は、
まさに、森の宝石だと言えましょう。
ホソエノヌカホコリの未熟な子実体。
小さいけど、とても目立ちます。
ホソエノヌカホコリがどこにいるか、
すぐにお気づきになるでしょう。
惚れ惚れにするほど美しいですよね。
子実体が形成されはじめたところ。
にゅ~っと上に向かって伸びています。
ふわふわのの細毛体だけが残ります。
これはこれでかわいいです。