ぼくが初めて出会った粘菌です。 それもそのはず、阿寒の森を歩いていて、
夏から秋のシーズン中にいちばんよく見つかる粘菌が、
このマメホコリに他なりません。
あるとき、倒木の上に、
珍しい「きのこ」を見つけました。
ピンク色で、すごく小さくて、つぶつぶ!
ホコリタケの仲間など、
傘を持たないまんまるのきのこは、
阿寒湖周辺の森のあちこちで見かけるので、
このピンクのつぶつぶも、疑いもせず、
きのこに違いない、と思ったんです。
ところが、図鑑で調べても出てません。
すわ、新種発見か! と期待に胸を膨らませて、
きのこに詳しい友人に写真を送りました。
「きのこじゃなく、粘菌だよ!」
という返事。
粘菌!
粘菌と言えば、あの南方熊楠が研究していたやつだ!
粘菌という言葉しか知らなかったけど、
まさか実物が拝めるとは!
森はもちろん、街中を歩いていても、
本物のきのこ、あるいは、きのこに形が似たものが、
どんどん目に入ってきてしまう状態を、
きのこファンは「きのこ目」などと言いますが、
ぼくは、この日を境に、
「粘菌目」も併発することになりました(笑)。
いやあ、いるわ、いるわ。
今まで、何故目に入らなかったのか不思議なくらいに、
もう、マメホコリがあちこちにいるんです。
そして、マメホコリが見つかると、
別の多くの粘菌にも気づきはじめ、
ぼくの本格的な粘菌生活がスタートしたのです。
さて。
マメホコリは、阿寒では、
初夏から晩秋までいつでも発生するのですが、
暖かい地方であれば1年中見ることができるようです。
粘菌の子実体としては大きいほうで、
球の直径が15mmくらいになったりします。
未熟な子実体は、ピンク色や朱色系でとても鮮やか。
遠くにあってもすごくよく目立ちます。
外皮には鱗片状のつぶつぶがたくさんついていて、
触るとぷるぷるしています。
木の枝でつっついてみると、外皮が破れ、
ペンキのようなピンク色の液体がぬるりと出てきます。
成熟するにつれて色は暗褐色~黒っぽく変化。
中も乾燥して粉状の胞子になります。
ちなみに、粘菌は、多核単細胞生物。
ひとつの細胞の中で核だけが分裂して、
2倍4倍8倍と、すごい勢いで増えていきます。
直径10mmくらいのマメホコリの中には、
およそ1億個くらいの核があるそうで、
核1個が、ひと粒の胞子になるのだとか。
胞子が風に飛ばされて倒木などに着地し、
いろいろな条件が重なると、やがて胞子の中から、
1匹の粘菌アメーバが生まれます。
なんて不思議な生きもの!
年金生活には不安が多いですが、
粘菌生活には楽しみしかありません。
皆さまも、楽しい粘菌生活をお送りくださいませ。
トドマツの古い倒木からたくさん発生。
ピンク色の小さな粒は見るからにかわいい。
ピンク色の小さな粒は見るからにかわいい。
できたてほやほやの子実体を、超拡大で撮影。
まだしっとりしていてとても生々しい。
まだしっとりしていてとても生々しい。
阿寒川のほとりの倒木で見つけた、
通常のマメホコリよりもややオレンジ色の個体。
通常のマメホコリよりもややオレンジ色の個体。
東京都内で見つけた、別種と言いたくなるような、
思いっきり黄色いマメホコリ。
思いっきり黄色いマメホコリ。
まさに宝石のように光り輝いている、
成熟した子実体。
成熟した子実体。