美しく、愛らしく、ときにやや気持ち悪い、
この魅力的で不思議な生物の名前を、
「粘菌」と呼ぶ人と「変形菌」と呼ぶ人です。
ちなみに、
この連載タイトルからもわかるように、
ぼくは、粘菌と呼んでいます。
何故か?
単に粘菌という言葉の方が好きだからです(笑)。
(あの知の巨人・南方熊楠も粘菌派です!)
学術的にはどちらを使っても間違いではなく、
ゆえに、おそらく、使われている割合も、
半々くらいではないかと思われます。
粘菌を最近の分類学的に考えてみると、
真核生物(細胞の中に核を持つ)の中の、
アメーバ動物界に属していて、さらに、
原生粘菌、変形菌、細胞性粘菌の3つに分かれています。
ぼくが、通常、粘菌と呼んでいる生きものは、
分類で言うところの変形菌なのですが、
粘菌という言葉の意味としては、
原生粘菌、変形菌、細胞性粘菌の3つを含むんです。
つまり、変形菌と呼ぶ人たちは、
原生粘菌と細胞性粘菌を除外しているわけで。
なぜ、原生粘菌、細胞性粘菌を避けるかというと、
ほとんど、目には見えないくらい小さいんです。
しかも、生物学的に粘菌と言うと、
通常は細胞性粘菌のことを指す場合が多い!
う〜む、粘菌派は、やや分が悪いかも(笑)。
ところが。
原生粘菌の中には、ツノホコリの仲間ってのがいて、
そいつらは変形菌と同じく目に見えるくらい大きく、
しかも野外で頻繁に見ることができるんです。
DNA情報を使った分子生物学的な分類では、
ツノホコリの仲間は他の原生粘菌にくらべて、
変形菌に近縁なグループであることがわかりました。
と、なると、
変形菌に加えて原生粘菌も含む粘菌という言葉の方が、
現状に近いのではないかとも言えるわけで。
粘菌派は、ここでやや勢いを回復(笑)。
じゃあ、変形菌と原生粘菌とでは、
何が同じで、何が違うかというと……。
胞子から粘菌アメーバが生まれること、
変形体を形成して子実体に変化することなど、
そのライフサイクルはほとんど一緒なんです。
しかし、
ツノホコリの仲間は、他の原生粘菌と同じく、
子実体に子嚢(胞子が入ったふくろ)を持たず、
胞子を子実体の外側につくるんです。
そして、変形菌は、子実体をつくるとき、
余計な水分を外に排出して乾燥状態になりますが、
ツノホコリの仲間の子実体(担子体とも言います)は、
水分を含むゼラチン状なんです。
それはそうと、フィールドではおなじみ、
ツノホコリの仲間は、群落をつくることが多いので、
見つけたら、ぞわぞわすること間違いなし!
そして、これが素晴らしく精緻な形状なんです。
ルーペなどで拡大して細部を見ると、
子実体(担子体)の先っぽに胞子をつけているのが、
よくわかります。
今回は、ツノホコリの仲間の中でも、
素晴らしい造形美を誇るタマツノホコリをご紹介します。
どうぞ、ご堪能あれ。
倒木に群生するキイロタマツノホコリ
別の倒木の下側には、タマツノホコリがたくさん
タマツノホコリとキイロタマツノホコリの攻防
キイロタマツノホコリの、若い子実体(上)と成熟した子実体(下)
変形体から形成されつつある、
キイロタマツノホコリの子実体(担子体)
キイロタマツノホコリの子実体(担子体)
拡大してみると、子実体(担子体)の外側に胞子がびっしり