2021年から2022年にかけて、
株式会社ほぼ日は「デザイナー」を6名採用しました。
当社比でみれば、過去に例のない極端な採用です。
ほぼ日デザインチームにとっても、
メンバーの数が倍近くになるおおきな変革です。
そんななか、デザインチーム最年長者の廣瀬正木が、
ある日、急に、こんなことを言いました。
「6人の新人デザイナーぜんいんに、
ほぼ日ハラマキのデザインを考えてもらいます」
廣瀬はどういうおもわくで
この企画を思いついたのでしょう?
新人たちのデザインはほんとうに商品になる?
などと気になることもありますが、
そういうあれこれを吹き飛ばして、
ワクワクする企画だと思いました。
新人たち6人のデザインを見てみたい。
6人が悩み、試行錯誤を繰り返し、
商品化される(かもしれない)までの流れを、
ここで追いかけます。
さあ、カモン、6人の新人たち。
自由にのびのびやっちゃってください。
6人のデザインの途中経過をすべて見せてもらった数日後、
この企画のプロデューサー・廣瀬が言いました。
「まだまだいけると思うんですよね。
先輩のメンターたちはやさしいから、
6人とも、ある意味で自信を持ったと思うんです。
自信を持つのはそれはそれでいいんだけど、
そこで安心しすぎちゃうと、そこから先にいけない。
せっかくのこういう機会なんだから、
‥‥ここでちょっとみんなにはっぱをかけようと思って」
同日、廣瀬から新人たちに
一通のメールが送信されました。
廣瀬がかけた「はっぱ」の内容は?
受け取った6人の心境は?
その両方をここに記します。
廣瀬が6人の新人に送ったメールです。
──『広辞苑』(岩波書店)より
「発破」は爆薬のことです。
土木工事などで爆破で作業を進めることを
語源にした慣用句なんですね。
お読みいただいたように、
廣瀬のメールにはダイナマイトのような激しさはありません。
むしろやさしい文面と言えるでしょう。
ただこれを、仮に新人である私(あなた)が、
ある日、受信して読んだとしたらどうでしょう?
なかなか「効く」メールではないでしょうか。
けっこうな「発破」ではないでしょうか。
受け取った新人たちは、どんなことを思ったのか。
それぞれに短く聞いてきました。
6人の心境をお読みください。
メールの最後に「むずかしいね」と書いてあって‥‥。
ほんとうにそのまま難しかったです。
頭を抱えて、うう~っと悩みました。
でもよくよく考えると、
自分は上手なものなんてできないんです。
かわいいものを単につくっても薄くなりそうだし。
だからむしろ「おおっ!!」っていうものは、
そんな今だからこそ自然に出せるかも、と。
未熟な今、出せるものはなんだろう? と考えて、
わたしがいちばん大事にしているのは
「背景のストーリー」みたいなものだと思い至りました。
ひとつの柄がうまれるまでのエピソードを
しっかりと妄想して、考えて、構成して
デザインに落とし込んでいこうと、
廣瀬さんのメールを読んで再確認することができました。
メールを読んで思ったのは、「やばい」です。
ぜんぜん足りてなかったんだと。
求められているものはもっとレベルが高いというか、
廣瀬さんが驚くくらいのおもしろさは
もっと先の方にあるんだということを
あらためて気づかされました。
焦りました。
でもあのメールがなかったら
「やばい」と思わなかったわけで。
きっとこのまま甘いところで
デザインをまとめていたと思います。
廣瀬さんのメールを思い出しながら、
「自分がほしいものをデザインする」ことを
もっと突き詰めていきます。
廣瀬さんからメールがきたときに、
実はちょっと、あ、まずいなと思いました。
「もっといろいろなアイディアを出してほしい、
今よりも新しいアイディアを出してほしい」
という内容だったので、
ああ、もっとがんばらないとダメなんだ‥‥
という気持ちになりました。
途中経過で見せたデザインを
どうブラッシュアップしていこうか考えてたんですが、
アイデアの量を増やさなくては、と。
でも、いただいたメールを読んで
実際にいくつかのアイデアが出てきたので、
送っていただいてよかったと思っています。
ありがたいです。
途中経過を見ていただいた時点で、
ぼくはほんとうにまだ途中だったんです。
メンターの杉本さんからアドバイスをいただいて
なんとなく方向性は見えつつも、まだまだの段階で。
廣瀬さんのはっぱをかけるメールを読むまでは、
ハラマキの四角い枠で考えていた気がします。
それをもっとこう、枠にとらわれず、
種類を増やすとか、機能面で考えてみるとか、
メールのおかげで考える幅が広がりました。
正直、次のステップにどう進もうか
わからない感じでしたので、
ぼくにとってあのはっぱをかけるメールは
とても助けになりました。
なんとなくそれまでわたしは、ふんわりと、
「新入社員でハラマキのデザインを考えるんだな」
みたいな感じだったんです。
それが廣瀬さんのメールを見て、
シャキッとしたというか、目が覚めました。
「これは商品化に向けてのプロジェクトなんだ」
というあたりまえのことがふわふわしてたんです。
だめですよね。
自分がデザインしたハラマキを手にした人たちが
ちゃんとうれしくなるものをつくらなくては!
と強く気づき直した感じです。
わたしの場合はそうですね、
もっともっとアイデアを増やしていこうと思います。
「えーっ!」って、声に出しました。
まず、かっこいいメールだったんですよメール自体が。
「むずかしいね。
さあ、どうぞよろしくお願いいたします」
って締められてて。
実際、むずかしい‥‥。
廣瀬さんがおっしゃることを
追い続ける気持ちを忘れてはだめなんだ
っていう気持ちになりました。
その一方で、実現させなくてはという焦りもあって。
自分の時間的な制約も考えていました。
理想と現実というか‥‥
ちょっといやな言い方ですが正直に言うと、
「ちょうどいいところを見つけなきゃ」
ということをメールを読んですぐに思いました。
焦って自分がやりたいことがブレないようにしたいです。
その上で、廣瀬さんのアドバイスに挑戦したいです。
メールが届いて、みんながザワザワしたんですよ。
それまではお互いにこのハラマキのデザインについて
あんまり話してなかったんです。
それがメールが来たらザワザワして、
「みんなどうしてる? どんな感じ?」
「どれくらいつくるの?」
「あのメールのあと、どうするつもり?」
みたいな話をみんなでしました。
すごい効果のあるメールだと思います。
廣瀬のメールでも述べていたように、
このプロジェクトのひとつの節目、
「6人の発表会」は
1月末に「展示形式」で行われました。
会場に展示された6人のデザインを
糸井重里が観にきます。
廣瀬にはっぱをかけられた6人の新人は、
当日、会場に、
どんなデザインのハラマキを並べるのでしょうか。
そして、糸井の反応は?
Chapter4「6人のデザイン発表会」へと続きます。
どうぞ、おたのしみに。