ほぼにちわ、武井です。
この土日、京都の上賀茂神社で行なわれる
「二葉葵展(ふたばあおいてん)」に行ってきます。
「二葉葵展」といわれても、
「聞いたこと、ないよー」
というかたがほとんどだと思います。
そう、京都の「葵祭(あおいまつり)は知っていても、
そのすぐあとに行われるこの展覧会は、
まだまだ有名とはいえません。
「二葉葵展」は、京都に暮らす、
伝統産業にたずさわる若い職人さんたちが、
じぶんたちの物づくりを、年に一度、発表する場です。
核となっているメンバーは、
左官、表具師、畳職人、植木屋、家具屋、
建築業、大工、電気工事士、建築デザイナーと、
「京都」らしい物づくりをしている人がほとんど。
彼らは「景アート」というグループをつくり、
京都の物づくりの歴史を継承しながら、
「100年後に続く、新しい伝統産業を!」
と、活動をつづけています。
伝統産業の盛んな京都で、たくさんの仕事をしながら、
それでもなお、いまあらためて
「物づくりの発表の場」を、と
彼らが考えているのには、理由があります。
京都だからこそ、たくさんある、仕事。
けれども、それはもしかしたら
「京都ブランドに頼り切っているだけなのかもしれない」
と、彼らは、危機感をいだいているのです。
「過去の人らが作ってくれはった『京都ブランド』に
ぼくら、おんぶにだっこなんですよ」
と、植木屋の小笠原哲さんは言います。
「京都って、じゃあ、なんなん? って言われた時に、
答えをもてずにいる人もおる。
仕事は、あるんですよ。
でも、本当に叱ってくれはるおせっさん
(御施主様)らも減ってきました。
それは、ぼくらの技術やったり、知識やったり、
経験もかなぁ、ていうのが
下がってきてるからです」
そんな思いを抱いている仲間が集まっているのが、
二葉葵展を主催している「景アート」のメンバーです。
さて、では、二葉葵展で、
彼らのどんな「物づくり」が見られるのでしょうか。
「そうですね、たとえば『川床」をつくりますよ。
そこでお茶席をもうけます」
(中島さん)
えっ。川床って、夏の京都で、鴨川べりに出る、
あのすずしげな「ゆか」(納涼床)のことですか。
「そうそう。ぼくら、大工もいますし、
畳職人もいますし!」(田中さん)
たった、一日だけのために‥‥?
「はい。ぼくらの仕事や技術って、
ことばで説明をしても伝わらないんです。
実物を見ていただき、
それを使って楽しんでいただくのが
いちばんいいんですよ」(籏さん)
なるほど。しかも、それを作った職人さんたち
本人に、その場で会えて、話ができるかもしれない。
そういうことって、たとえば東京のような場所で
集合住宅暮らしをしている自分にとっては、
めったにない機会です。
あるいは、古い日本家屋に住んでいるけれど、
それを維持していく術がわからない、
むしろ住みづらいなあと感じているような人にも、
こういった機会は
とても貴重なもののように思えます。
「もちろん、ただ、遊びにいらしてくださるのも
大歓迎なんですよ。
たとえば金魚すくいのイベントがあるんですが、
水槽が、職人が杉でつくった舟の形だったりします。
遊びながら、伝統の技術に触れてもらうことができます」
(村松さん)
「そうそう、ネマキの頒布もしますよ」(小笠原さん)
ネマキ?
「あ、ネマキいうのはね、
植木屋が、庭づくりのとき、
木の根を土で覆い、
縄でしばって丸くしたもののことです。
この展覧会では『二葉葵』を、ネマキにして、
配っているんですよ」
このネマキは、そのままうつわに入れて
観葉植物として育てることができます。
じつは「景アート」のメンバーは、
「葵祭」で使われる「二葉葵の葉」を育てることも、
活動のひとつとして行なっています。
葵祭では、下鴨神社から上賀茂神社への行列のさい、
御簾、御所車、勅使、供奉者の衣冠、
牛馬にいたるまで、すべて葵の葉で飾られるのだそう。
意外なほどたくさんの葉っぱが必要になるのですが、
その葉は年々少なくなってきているのです。
ですからネマキの二葉葵が成長したら、
寄贈して、翌年の「葵祭」に
使ってもらうこともできるわけです。
▲これが二葉葵です。
さらに、鏡職人、蝋燭職人、建具職人、仏絵師、
陶芸家、漆職人、指物師、木工職人、
染織家、彫金職人など、
いろんなタイプの職人さんたちが
二葉葵をテーマにした作品を出展。
ほかにも、京都ならではの小物を販売するコーナーや、
「陶芸体験」「唐紙体験」などのイベントも。
日本画家の前田有加里さんのアートパフォーマンス、
音楽家の真依子さんによる
箏の弾き語りも予定されています。
うれしいのは、食べ物まわりの充実!
祇園や先斗町にお店をかまえる
「侘家古暦堂」の鶏カツ弁当や、
「鍵善良房」の和菓子などの販売もあるそう。
いちにち、のんびり楽しめそうです。
この二葉葵展、おじゃまして、
前日の設営の様子から、見せていただこうと思っています。
その様子は、テキスト中継をする予定ですので
どうぞ、ごらんくださいませ!
【二葉葵展】 |