こんにちは、「ほぼ日」の奥野です。
とつぜんですけど
「NHK」といえば「渋谷」というイメージが
あると思うんですが
「世田谷のNHK」って‥‥ごぞんじですか?
ぼくは、知りませんでした。
でも、そのあたりに住んでいるという
「ほぼ日」西本が
ある日、ものすごい勢いで教えてくれたんです。
「うちのちかくにNHKがあってさ、
そこに
ものすごいテレビが置いてあるんだよ!
いま話題の4Kどころじゃなく、
8Kらしい!
つまり、ハイビジョンの16倍!
ほかにも
ものすごいスローモーションを撮れる
カメラとか!」
‥‥たしかに最近「4Kテレビ」という単語を
よく聞きますね。
つまりその、専門的なことはわかりませんけど
今のハイビジョンより
何かといろいろ、すごいテレビのことですよね。
でも、それよりさらにすごい「8K」のテレビ?
「なんでも、立体メガネをかけてないのに
映像が『立体に見える』らしい」
‥‥どういうことなんでしょうか。
ものすごーく気になったので
さっそく、その「NHK放送技術研究所」を
取材させていただきました。
ビックリその1
200万分の1秒が撮れるカメラ
はじめに見せてもらったのは
「200万分の1秒が撮れるカメラ」です。
ええと、それって、ようするに
「い〜ち」と数えるあいだに
「200万コマ撮れる」という意味‥‥ですよね?
ふつうのスローモーションは
「1000分の1秒」くらいらしいので
そんなスローで、いったい何を撮るんでしょうか。
ともあれ、こちらをごらんください。
「水の入った風船に、針を刺す」瞬間の映像です。
これ、ビックリしつつも、かなり意外でした。
だって、水が落下する前に、
割れたゴム風船があんなにも縮んじゃうとは。
で、風船が縮み切るあいだは、水はそのまま。
そのあと下に落ちるんです。‥‥へぇ!
この映像は「1万6000分の1」で
撮られたらしいんですが、
こんな高性能、
いったい、どういう場面で使うんでしょうか?
「スローモーションといえばスポーツですけど
ここまでの性能になると
スポーツなどでは、あまり用途がないですね。
稲妻を撮影するなど
自然現象を研究するときに、使われています」
(浜口さん)
はー‥‥。
「これまで、防弾チョッキが
どうやって弾丸を防いでいるのかについては
誰も見たことありませんでした。
でも、このすごいスローモーションによって
そのようすが、わかったりとか」
はー‥‥。
ビックリその2
3Dメガネをかけてないのに
立体に見えるテレビ
続きまして、こちらが
西本が盛んに言ってた「8Kテレビ」ですね。
正確には「スーパーハイビジョン」と言って
「3300万画素」つまり
「ハイビジョンの16倍」の超高精細映像と
「22.2マルチチャンネル」という
「5.1チャンネルの何倍?」というような音響が
組み合わさった、すんごいシステム。
ここNHK放送技術研究所が中心となって
研究を進めている次世代技術ですが、
とにかくさっそく、
「3Dメガネをかけてないのに
立体的に見えるテレビ」におどろくさまを
とくと、ごらんください。
こうして
「ビデオカメラで撮った間接的な映像」でも
ちょっと立体的に見える‥‥。
実際、この大きなテレビの前に立って
本物の映像を見ていると
なにかこう‥‥覆い被さられるような感じで
ちょっとすごい臨場感でした。
でも、どうして立体的に見えるんですか?
画素が多くなると、そうなるものですか?
「いや、それがよくわかってないんです」
え、浜口さん、わかっていないんですか?
「わかってないんです。
こうやって画面が大きいからなのか、
解像度が細かいからなのか、
あるいは、その両方なのか‥‥。
いま、その理由を調べてるところです」
立体的に見える理由がわかってないとは、
なんたるミステリアス。
「2016年の実用化試験放送を
目標にしている、最新の放送技術です」
ビックリその3
音が響かない部屋
最後に、映画『キューブ』みたいな部屋に
案内していただきました。
ここは「音響無響室」と言って
特殊な素材・特殊な構造で床と壁をつくり、
「いっさい音が響かない」んです。
針金のアミの上を歩くことになるので
下が「まるみえ」で、
ちょっとコワイねなんて話していると。
‥‥たしかに、声が響かない。
壁と床にこういう「板」のようなものを
たがいちがいに配置することで
音が反響しないなんて‥‥ふしぎだなあ。
‥‥‥‥‥‥‥‥。
だれも声を出さず、
「衣ずれ」の音も立てないようにしていると
なんだか、
どこかに取り残されたような気分になって、
それもまた、コワイ。
「この部屋の壁や床は、
音をよく吸うグラスウールという素材で
できています。
それだけでも充分に吸音するんですけど、
どうしても
わずかに音を反射してしまうんです。
そこで、壁と床を
このようなクサビ状の構造にすることで
低い周波数から高い周波数まで
きちんと吸音してくれるようになります」
(担当の方)
あの、そもそもの質問ですみません、
なんで、こういう部屋が必要なんですか?
「放送のための
マイクロホンやスピーカーを開発するとき、
性能そのものを測るには
やはり、できるかぎり音の響かない環境を
つくる必要があるので」
‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥。
いや、発した音が響かないって、
思った以上に、ドキドキするものですね。
わたし、ど田舎で育ったのですが、
かくれんぼしていて
なかなか見つけてもらえないときみたいな、
あの、心細くなる感じに似てたり‥‥。
なので、部屋から出ると
なんだかちょっと、安心したのでした。
「世田谷のNHK」に興味を持ったら
「技研公開2013」がありますよ!
さてさて、このように
いろいろとビックリ&おもしろかった
「世田谷のNHK」ですが
「放送」を専門にしてる研究所というのは、
世界でも珍しいそうです。
この話を聞いて、すごく驚いたのですが‥‥。
現在、放映されているハイビジョンって
15年ほど前にはじまったのですが
その研究は
なんと「東京オリンピックのころ」から
開始されていたんですって。
つまり、それは「1960年代」です。
テレビの「カラー放送」がはじまるやいなや
現在の「ハイビジョン」への構想が
スタートしていたなんて。
そのことを聞いて、やはりすごいところだと
妙な納得をしたのでした。
さて、NHK放送技術研究所では
まいとし、研究中の最新技術を体験できる
無料のイベントを開いています。
それが「NHK技研公開」です。
ことしは
5月30日(木)〜6月2日(日)が
開催期間で
技研公開のホームページを見ると
上で紹介した
スーパーハイビジョンの映像を見られる
シアターもあるみたい。
放映内容は
「ロンドン五輪ダイジェスト&リオのカーニバル」
だそうです。
ご興味を持たれましたら、
ぜひ行ってみては、いかがでしょうか。
きっと楽しいと思いますよ。
だって、あの建物、歩いていると
こんな「おじさんの後頭部」みたいな物体が
急に、現れるようなところなので‥‥。
(お察しのとおり、マイクだそうです)
<おしまい>