ミシェル・ゴンドリーに会ってきた。〈後編〉はたしてゴンドリー監督は、歯をむいたくまを受け取ってくれるか?

〈前回のあらすじ〉
映画監督ミシェル・ゴンドリーの記者会見に
なぜか出席できることになった「ほぼ日」。
記者会見ならば必要だろうとひねり出した質問は、
「撮影現場がつらすぎて、逃げ出す人はいませんか?
 実際のところ、どうなんでしょう?」
というもの。
さらに、どういうわけだかゴンドリー監督に
「誤解されやすいくま」を渡したいと言い出すハリー。
質問とくまを携えて、
われわれは東京都現代美術館へ向かうのであった。


二人は、はしゃいでいた。
濃厚なゴンドリーファン、岡田とハリーのことである。
ちなみにこれを書いているのはモギである。

東京都現代美術館の最寄り駅に着いた時点で、
岡田とハリーのテンションはすでにおかしい状態だった。
こんな感じ。



会場に着くと、こんどは跳んだ。


▲これでも精一杯、跳んでいる。

さらに、全員で跳ぶようにも指示された。


▲これでも精一杯、跳んでいる。

どちらの写真も、撮るようにと
指示をしてきたのは、ハリーである。
とにかく彼が辰年を5回経てきているということだけ
お知らせしておこう‥‥。

実は我々は時間ギリギリに会場についている。
すでに記者会見の会場には
たくさんの雑誌やニュースサイトなどの
記者の方々が到着し、独特の雰囲気に。

ふと、ハリーの方をみると、
さきほどのはしゃぎっぷりはどこへやら、
たいへんな真顔になっている。


▲さっきまでの浮かれたようすは何だったのか。

そして、ゴンドリー監督が登場!


▲司会の方・ゴンドリー監督・通訳の方。


▲ミシェル・ゴンドリー監督。

ゴンドリー監督、すごく真顔だ。
監督がニコリともしないので、
ハリーと岡田は、かなりビビったそうである。

監督は、展覧会の開催趣旨や、
どんな風に楽しんで欲しいかなどについて、
ていねいに語っていく。


▲落ち着いて、しかし熱心に語るゴンドリー監督。


▲いっぽう緊張を(不必要に)高めるふたり。


▲そのいっぽう、監督の心地よいフランス語に
 眠りを誘われるシブヤ。


そして、記者会見は「質疑応答の部」に突入した。
1人目‥‥岡田はまだ手をあげない。
まずは様子見をしたようだが、
いつ質問が打ち切られるとも限らないぞ。
そんなことになったら一大事、ミッションは失敗だ。
そうならないためにも、行け岡田!
いつだってラストチャンスだ!

そして2人目、岡田は行った!
にょきっと手をあげて、マイクを勝ち取った!


▲「わ、当たっちゃった。」すがるような目の岡田。


▲震える手でマイクをつかむ。


▲ちなみに会場のようすは、こうなっている。

以下、岡田の質問を一字一句正確に再現しよう。

「ほぼ日刊イトイ新聞の岡田と申します。
 あなたの作品は、核となるアイデアをもとに、
 ものすごく緻密な設計と撮影によって
 成り立っているものが多いと思います。
 見終わった後、自分もやってみたいな、という
 気持ちが強く喚起される一方で、
 メイキングなどを拝見して実際を想像すると、
 絶望的な気持ちにもなったりもします。

 この記者会見にあわせ、社内で簡単な上映会をしました。
 その時初めてあなたの作品に触れた同僚のデザイナーは、
 特にザ・ホワイト・ストライプスのミュージックビデオ
 『ザ・ハーデスト・ボタン・トゥ・ボタン』を見て、
 深い感銘を受けると同時に、
 『この撮影現場には絶対いきたくない!』と言いました。
 あまりにも大変そうに思えたからのようです。

 そこでお伺いしたかったのは、
 あなたの撮影現場というのは、
 実際どういった雰囲気なのでしょうか?
 また、監督ご自身が『一番大変だった』と思う
 作品があれば、教えてください。」

びっくり。立て板に水。
あんなに緊張してたのに、すごいな、岡田くんって。


▲あっ、岡田の質問に監督、ちょっと微笑んでる!

質問の通訳を聞き終え、監督は誠実に答えてくれた。



「まず、他の監督の作品を見て、
 『とてもこんなことができるわけない』と感じるのは
 私自身も同じで、
 とりわけ『時代物』を見ると圧倒されます。
 これまでもっともそれを強く感じたのは、
 黒沢明監督の『乱』という作品でした。
 黒沢監督は75歳の時にあれを撮っています。
 私はあまりにショックで、三日間鬱状態になって
 ベッドから出ることができませんでした。

 また、これまでもっとも難しかった体験で言うと、
 前作『ムード・インディゴ』の撮影でした。
 その時の私はあまりに野心や理想が強すぎて、
 細部へのこだわり、もっとああしたいこうしたいという
 気持ちがあまりに大きかったのです。
 技術的にも感情的にも、
 ほとんど悪夢のような経験でした。

 いま、ちょうど新作を撮り終えたところですが、
 今回は主にティーンエイジャーを撮っていました。
 彼らはエゴが少なく、雰囲気や話が自然で、
 計算が必要がなく、とても楽しい現場でした。
 前作の現場とのコントラストが非常に強かったことが
 印象に残っています。」


▲質問に答えてもらい、感無量の岡田。

「どうもありがとうございました。」
そう言って岡田はマイクを返した。

でかした! 岡田!
そして、質問を考えた田口よ!
これがゴンドリー監督のお答えだよ。

その後、記者会見はとどこおりなく進み、会見は終了した。
だが、われわれにはまだミッションがある。
ゴンドリー監督に「誤解されやすいくま」を
手渡さないといけないのだ!

われわれもはじめて知ったが、
記者会見の終了後には、
フォトセッションというものがある。
カメラマンがゴンドリー監督の前によってきて、
バシャバシャ写真を撮りまくっている。
その写真が、いろんなメディアに載るわけだ。


▲フォトセッション中のゴンドリー監督。
 うしろは今回の展示のひとつである、
 「ホームムービーファクトリー」のためのセット。


だが、いちおう自分たちもメディアの人間のくせに、
フォトセッションには何の関心も示さない二人の男がいた。
岡田とハリーである。
見よ! この無表情を!





彼らは、ゴンドリー監督にどうやって近づくかで
頭がいっぱいになりすぎて、表情を失っていたのである。
アップのほうの写真は、岡田が心配顔の子分に見えるのが、
なんとも可笑しい。

二人はフォトセッションの終了を待った。ひたすら待った。


▲待ちきれず、うとうとしはじめたシブヤ。

やがてフォトセッションが終わり、
二人はじりじりと監督にせまっていく。
はたしてゴンドリー監督は、
歯をむいたくまを受け取ってくれるのか?

‥‥ハリーが行った!


▲姿勢を正し、ゴンドリー監督に説明をするハリー。
 監督は「だれ?」という表情。



▲くまを取り出すハリー。
 あ、監督が笑ってる!



▲くまのマスクに手をかけて‥‥


▲はずす!


▲監督も通訳の方も大きな笑顔に!
 やったー!



▲「誤解されやすいくま」のするどい歯に
 興味しんしんの監督。
 ハリーによると、「Kawaii~(かわいい~)」と
 日本語で言ってくれたそうだ。(ほんとの話)



▲ついでにHOBONICHI PLANNERも渡す。
 監督はフランスの人だけど!
 中身、英語だけど許して!
 ビニールにはいってて、
 中身がいますぐ見れなくてごめんなさい!
 しかし、なごやかな雰囲気は変わらず。


せっかくなので、記念撮影をお願いしたら、
わざわざマスクを外して、
そして、自分も歯をむいてくれた。
ええ人や! ゴンドリー監督!



「質問とくま」という2大ミッションを
クリアしたわれわれ、あとはもう展覧会をたのしむだけだ!

今回の展示の目玉のひとつは、
なんといっても「ホームムービーファクトリー」。
簡単に説明すると、さまざまな映画セットを自由に使って、
来場者が実際に参加できる、
オリジナル映画づくりのワークショップだ。

ちなみにゴンドリー監督は、この日の会見の中で、
ホームムービーファクトリーについて
こんな風に語っている。

「出来上がりは心配する必要は、ありません。
 人々がグループになって、セットを使って、
 ホームムービーをつくる。ただそれだけです。
 恥ずかしがることはなにもない。
 もしかしたら失敗作と思えるものが
 できるかもしれないけれど、
 それもまたひとつのおもしろい結果。
 自由なスピリットでやって欲しいと思います。
 例えるなら、パーティーに行くのと一緒です。
 責任感は必要ありません。とにかく、たのしむこと。」

記者会見のときには、残念ながらワークショップは
開催されていなかったが、
たくさんあるセットを使って遊んできました。
なんだか久しぶりの感覚に、全員おおはしゃぎ。


▲カフェのセット


▲路地裏のセット


▲東京0円生活的なセット


▲オフィスのセット


▲夜景の見える部屋のセット

いやぁ、おもしろかった!
そして、しょうもない写真撮影をやればやるほど、
ホームムービーファクトリーに挑戦してみたくなりました。

この展覧会では他にも、
ゴンドリー監督のミュージックビデオ19作品を
インスタレーション形式で紹介しているエリアや、
監督自身の手による1,000点におよぶ似顔絵、
映画に登場する小道具やガジェットを集めたエリアなど、
盛りだくさんの展示が用意されています。


▲希望者をネットで募集し、それに応えて
 ゴンドリー監督が描いた似顔絵。
 (現在このサービスは休止中です)


みなさんも、冬休みに時間があったら、
ぜひミシェル・ゴンドリー監督の世界を
体験しに行ってみてください。
(整理券はかなりの倍率らしいのでご注意を。
 参加方法については
 現代美術館のご案内ページからどうぞ)

(おわり)

 


ミシェル・ゴンドリーの世界一周

ゴンドリーの世界を満喫できる、またとないチャンス!
路地裏、カフェ、電車などのセットを舞台に、
オリジナル映画作りに挑戦できるワークショップ
「ホームムービー・ファクトリー」は、
とくにおすすめです。

会期:9月27日(土)-2015年1月4日(日)
休館日:12月28日-2015年1月1日
会場:
東京都現代美術館
  (企画展示室3F/ 1F・B室 /ホワイエ)
   135-0022 東京都江東区三好4-1-1
開館時間:10:00-18:00 ※入場は閉館の30分前まで
お問い合わせ:
03-5245-4111(代表)
03-5777-8600(ハローダイヤル)
公式サイト


2014-12-26-FRI