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(第18回の1)
ゲームボーイアドバンス・デザイン座談会
その1 杉野憲一の試行錯誤/液晶の大きさをどうするか? |
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本年3月に発売がアナウンスされている
任天堂の新作ハード「ゲームボーイアドバンス」。
任天堂の杉野さん、キュリオシティのニコラさんら
デザインにかかわったひとびとが
どんなふうに考えて、このデザインを決めたのか、
お聞きしてみましょう。
じつは、この本体デザインを決めるにあたっては、
darlingもちょこっとかかわってきたんですよ。
それでは第一回目、
任天堂の杉野さんの仕事ぶりを中心に。
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■出席者■■■■■■
■グエナエル・ニコラ
フランス出身のデザイナー。デザインスタジオ「キュリオシティ」
http://www.curiosity.co.jp/
代表取締役。
イッセイミヤケの「プリーツプリーズ」のアートディレクションや、
「au」のロゴなども、氏の作品。
ゲームボーイアドバンスは、本体デザインを担当した。
■宮元玲子
デザインスタジオ「キュリオシティ」プロデューサー。
■杉野憲一
任天堂株式会社開発技術部デザイン担当。
ゲームボーイアドバンスの本体デザインの基礎をつくった。
■古庄伸
任天堂株式会社広報室企画部。
■倉恒良彰
任天堂株式会社広報室企画部。
■糸井重里
ほぼ日刊イトイ新聞編集長。
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──:
ゲームボーイアドバンスの本体デザインが
こうして決まるまでには、いろんな紆余曲折が
あったと聞いています。まずは、
デザイナーのニコラさんが登場する前の段階、
杉野さんが担当なさっていたころからの
お話を伺わせてください。
杉野さんは、任天堂の社内で、
どんなお仕事をなさってきたんですか?
倉恒:
とまあ、かたい感じで始めてはいますけれど、
脱線してもいいし、突っ込みを入れてもいい、
という気持ちで進めましょうよ。
糸井:
ざっくばらんにね。
ニコラさん、ざっくばらんてわかる?
ニコラ:
わかりません(笑)。
糸井:
フランクに、ね。
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ニコラ:
あ、あ、はい(笑)。
杉野:
それでは、コホン、簡単な自己紹介をします。
任天堂開発技術部の杉野です。
入社12年目で、デザインを担当しています。
今回もちろんこのゲームボーイアドバンスに
かかわったんですが、
それ以外、今までやったハードでいえば、
ゲームボーイカラー・ポケット・ライト、
それからポケットピカチュウていう
あの万歩計もデザインしました。
64(ニンテンドウ64)関係では、
振動パックとか、音声認識の周辺機器なんかも
やりましたね。
糸井:
いちばん最初にやったのはなに?
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杉野:
スーパースコープ6(スーパーファミコン本体に
接続して遊べる光線銃)ですね。
糸井:
あー、なつかしいね。
杉野:
はい。で、あと、あまり公には
してないんですけど、バーチャルボーイも僕です。
糸井:
おおおおお、
そりゃ懐かしい以上のなにかが!
古庄:
彼は任天堂で一番多くのハードを
つくった人間なんですよ。
杉野:
でも最初はソフトのほうで、
「バルーンファイト」「ワリオランド」の
絵を描いたりしてました。
糸井:
ハードにうつったのは……
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杉野:
ゲームボーイブロスの色をやる時からですね。
僕、その時にはじめて糸井さんと
お会いしたんです。
糸井:
そぉーかぁ。顔見たことありますよねえ(笑)。
あの当時の会議室、部屋の様子まで覚えてる!
杉野:
あの仕事が最初でしたね。
あれは結局1週間か2週間ずっと塗装室にこもって、
あの色を作ったんです。
でそのあと4日間僕入院しましたけど(笑)。
糸井:
シンナー中毒で(笑)。
杉野:
ええ、まあ、風邪と、シンナーですけどね。
そこからずっとハードですね。
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糸井:
じゃあそれ総計したら
ものすごい量のものを作ってますね。
6千万個くらいのものをつくってますね(笑)。
古庄:
世界で売ったのも足したら。
杉野:
はい。
糸井:
世界一のゲーム・ハード・デザイナー
かもしれないね。
杉野:
そうかもしれないですね(笑)。
いろいろ失敗もしてるんですけれど。
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杉野:
で、本題のアドバンスになるんですが、
一番最初にアドバンスの話が来た時に、
やっぱり「売り」はっていうと、大画面ですね。
このワイドスクリーン。
プラス、LR(左・右)をつける。
この2点。で32ビット。
糸井:
うん。
杉野:
外形デザインをするっていうよりも、
まずは大画面の液晶のサイズを決めるところから
始まったんですよ。
液晶を正方形で大きくしたものっていうのも
作りましたし、あの、ちょっと縦長っていうのも
いろいろやってみたんですけど、
まあ、コストと、それとこれぐらい、
一番大きく見えるサイズ、
ゲームが作りやすいサイズ、
ということが必要条件だった。
それから、われわれの頭にあるのは
当然ゲームボーイの今までのソフトを生かす
ってこともあるんですけど、
家庭用のゲームを持って来れる
っていうのも必要でした。
特に、今までのゲームって左右が短いですから、
テレビゲームをそのまま持って来ると、
どうしてもね、敵が出現するときに、
テレビよりも、すごく手前で
ぽっと出てくる感じになってしまう。
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糸井:
うん。
杉野:
スーパーマリオのゲームボーイ版を
作った時も、あまりゲームを作らない
スタッフの上の方の人達は、
「8ビット同士やねんし、
カラーあるねんから、
そのままプログラムこっち持って来たら
ええんちゃうんか!」
というような考えになるんですけど、
それをすると、障害物とか、敵とかの出現が
予測できなくなっちゃう。左右幅が短いんで。
そういうのも横長にするとできるようになるねとか。
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糸井:
ちょうどさあ、あの、昔の特撮映画で、その、
船に爆弾がどんどん投下されてるシーンとか
プールで撮るんだけど、
その、水飛沫がパンてすぐ終わっちゃう
じゃないですか。
そのー、おっきい船だったらドーンていって
水がばーっと上がった時に、
そのディティールがこう全部見えますけど、
模型だとぱちゃってなるだけだから、
その差をどうつけていくかっていうの
ものすごく苦労したらしいんですよね。
と、同じですよね。
杉野:
そうですね。だからスーパーマリオを移植する時に、
制作者はそんな短い時間じゃできないと主張する。
経営のほうは移植だからこれぐらいで
できるやろ、と言う。
でもゲームバランスを全部直さないといけない、
っていうところから、こんな時間ではできないって
主張して、それだけの時間をかけて、つくったわけです。
それが、横長になればスムーズにできるだろう、
っていうことを、
ゲームボーアドバンスでは考えたんです。
糸井:
なあるほど。
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杉野:
それに、われわれスタッフの中で見て、
これが一番インパクトあるかなという感覚。
今までのゲームボーイの画面を見て、
見比べたらやっぱりこれが大きいって
言えるんじゃないか。
同じドット数で正方形にするよりも、
インパクトが大きいっていうことですね。
そこからまず、この液晶のサイズが
決まったんです。
じゃあ、ここから、外側をつけていこう。
で、必要なものが十字ボタン、AB、START、
SELECT、電源、このへんは、
いつもどおりですね。
で、LRをつけると。で、そうする時に、
じゃあ、まずみなさん思ったと思うんですけど、
縦型にするか横型にするか。
糸井:
はいはいはい。
杉野:
ここが一番最初に来たポイントでしたね。
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糸井:
最初に縦型だったこと自体が、
思えば不思議な感じがするんですよ、これ見ると。
ゲームボーイがね。
杉野:
そうですねえ。
糸井:
あれ、電池入れるせいですか?
なんでゲームボーイって
もともと縦型だったんだろう?
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う〜ん、ハードをデザインするって、
思っていたよりずっとたいへんなことだったんだ。
次回は「なぜGBが縦型になったのか?」から
任天堂のゲームへのアイデンティティへと
話は深くなっていきますよ。お楽しみに!
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2001-01-09
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