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(第18回の2)
ゲームボーイアドバンス・デザイン座談会
その2 任天堂社内で、横型のプロトタイプができるまで。 |
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新作ハードウエア「ゲームボーイアドバンス」の
デザインにかかわった、任天堂の杉野さん、
キュリオシティのニコラさん、そしてdarlingと、
デザインにかかわったメンバーによる座談会、第2回です。
第1回は、杉野さんの仕事を中心にお聞きして、
「なぜ(初代)ゲームボーイは縦型デザインになったのか」
という疑問が提示されたところで、終わりました。
今回はその答えから入り、
「ではなぜゲームボーイアドバンス」は横型になったのか、
そのあたりもお聞きしています。
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■出席者■■■■■■
■グエナエル・ニコラ
フランス出身のデザイナー。デザインスタジオ「キュリオシティ」
http://www.curiosity.co.jp/
代表取締役。
イッセイミヤケの「プリーツプリーズ」のアートディレクションや、
「au」のロゴなども、氏の作品。
ゲームボーイアドバンスは、本体デザインを担当した。
■宮元玲子
デザインスタジオ「キュリオシティ」プロデューサー。
■杉野憲一
任天堂株式会社開発技術部デザイン担当。
ゲームボーイアドバンスの本体デザインの基礎をつくった。
■古庄伸
任天堂株式会社広報室企画部。
■倉恒良彰
任天堂株式会社広報室企画部。
■糸井重里
ほぼ日刊イトイ新聞編集長。
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糸井:
どうしてゲームボーイって
縦型になったんですか?
古庄:
設計上の、電池も含めての基盤などのレイアウト、
あとその重量バランスとかを考えたら、
あの時は、あの縦型が一番バランスが
よかったんですよ。しかも電池4本とかだったし。
糸井:
そうだよね。
古庄:
まあ横でもデザインは可能だったんでしょうけれど……
ニコラ:
でも、縦型であることが
アイデンティティになるからね。
糸井:
うん、そうそうそう。
だから今思うと、「思い切ったな」って
思えるんだけど……
古庄:
やっぱり実は機能的に、
縦型がいちばんという結論だったんです。
ニコラ:
そうですよね。
だから、今回ゲームボーイアドバンスが
(任天堂社内のデザインで)横型になった、というのが
最初は一番ビックリしたんです。どうして?
糸井:
縦のゲームボーイは知ってたんだ。ニコラさんは。
ニコラ:
知ってる、知ってる。
任天堂といったら、縦型のイメージです。
古庄:
たしかに縦のシルエットのゲーム機っていうのは
もう完全に任天堂の“顔”ですよね。
だから簡単に線でイラストをぱっぱって描いても、
縦型の筐体、というだけでゲームボーイって
わかるじゃないですか。
単純に誰でも。それが横型になると、
イラストで描いてもこれゲームボーイって、
わからへん。
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糸井:
アイデンティティがなくなるんだよね、
今までの。
杉野:
それです。その意見、ものすごく多かったです。
「ゲームボーイのアイデンティティは縦型だろう!?」
っていう意見は、すごく多かった。
ニコラ:
縦型のいいところって、
ちっちゃい(狭い)ところでも、できることですよね。
混んでるところ、電車でも。
杉野:
そう、実際に縦型って使いやすかったですし、
任天堂はゲームボーイカラーまで
ずうっと縦型で来てる。
よそのメーカーはほとんどが横型ですよね。
あのー、PCエンジンGT、あれ以外は横型。
ゲームボーイアドバンスをなぜ縦型にしないんだ、
というのは、ものすごく言われましたね。
で、もちろん、
僕も縦型のスケッチたくさん描きました。
糸井:
うん。
杉野:
でも、どうやっても、縦型に、
大きな液晶をつけようとすると、
全体のサイズが、でかくなるんです。
ニコラ:
これ(LRの操作)もできないよね。
宮元:
そうねー。
杉野:
縦型のままLRのボタンをつける位置を変えようとか、
後ろにつけるっていうことも考えました。
真ん中をぶった切って、
あの、電池ボックスとカートリッジの入る間とか。
宮元:
モニター下とか?(笑)
ニコラ:
それいいじゃない!
倉恒:
いいじゃないって!?(笑)
糸井:
今ごろ!(笑)。
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杉野:
あとね、いまだによく言われるんですが、
ゲームボーイで例えば、
ミサイルを発射するじゃないですか。
糸井:
うん。
杉野:
液晶が上で、筐体の下を持つから、
(ミサイルが)下から上に来るっていうイメージが
取れるけど、ボタンが横にあったら、横を押したのに、
じっさいは下からミサイルが出てくるっていうのは
違和感がある、って。
でも、まあそういういろんなことも
あったんですけど、実際に縦型や、
正方形みたいなデザインを描いてみて、
結局、横型になった。
なぜかって言ったら、
それが一番小さく収まったから。
糸井:
うーん。
杉野:
で、ゲームボーイのアイデンティティは
どこにあるかっていうのを考えた時に、
やっぱり、小さくて薄い、携帯型の
ゲーム機だっていうところが、
やっぱり一番重要だろうと。
なら、縦型っていうことに
こだわるんじゃなくて、
携帯ゲーム機にするために、
小さく軽くするためには、
縦型であることを捨ててでも、
横型にしよう、というとこに
落ちつきましたね。
糸井:
おんなじ歴史がさ、
トランジスタラジオにありましたね。
あの、僕らはポケットトランジスタラジオが
発売された時に縦のイメージだったんですよ。
スピーカーが下にあって、
上にチューナーのメモリがあって、
で、ソニーが出したこんな小さいのが、
ポケットに入るよ、
ていうので売り出して
そのうちだんだん横になっていったんですよね。
だからスタートの時って
案外、縦、多いのかもしれないね。
杉野:
そうなんですよね。
古庄:
思い出しました。
任天堂の携帯ゲームの歴史で、
一番最初は、横ですね。
ゲームウォッチが。
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糸井:
あー! そうだ。
倉恒:
そうだそうだ。
糸井:
あれが横だ。
古庄:
その時ね、僕も当然横のスケッチも
描いてたんですよ。
でも、当時の上司が、
これはゲームウォッチとは違う、
もっとすごいもんやろこれは、
というんで、縦のほうへ行った、
ということもあります。
今思い出しましたけど。
糸井:
何年前?
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杉野:
13年ぐらい前ですよね。
今回は、縦型、縦型にするか横型にするか
ってもめてる時に、うちの部長は、
「もう、ちっさくするんだから横型だ」
って決めたんです。
しかも、それを決めた部長は、
縦型のゲームボーイ、つまり
“携帯ゲームで縦型”っていうのの
特許だか実用新案登録をした本人なんですよ。
その人が「横型でええ」って言うてんねんから、
もうええやないか(笑)って。
糸井:
すごい説得力だね。
杉野:
すごい説得力でした。
僕その瞬間に、もう、迷わん、
と思いましたね(笑)。
糸井:
それで、最初のプロトタイプが
できたわけですね。
杉野:
そうですね。
いまから1年か2年前……丸々2年になるかもしれません。
そのプロトタイプの時には
まだ電池がここ(後ろの横)にありました。
糸井:
うん。
杉野:
この、一番横に。
つまりゲームボーイカラーを
そのまま横にしたタイプです。
基盤レイアウトと電池レイアウトを考えると、
それが一番よかったんですよ。
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糸井:
うんうん。でも、持ちにくいですよね。
杉野:
そうなんです。
それで、次に問題となったのがカートリッジです。
電池をここ(後ろの下)に持ってくると
カートリッジが短くなってしまう。
倉恒:
ええ。
杉野:
当然、今までのソフトを挿すと、
飛び出すんですよね。
実は、それをちゃんと収めようと思うと、
電池部分を下げなきゃいけなくなったんです。
で、どうしようかって悩んだんですけど、
うちの技術の人間が、すごくて、
カートリッジも
「いや、半分にできる」
って。
糸井:
半分!?
杉野:
そう言ってくれたんですよ。
ゲームボーイというのは
13年前に設計されたものですよね。
でも、大容量で小さなチップが
どんどんできてるから、これぐらいまでいける。
それと、あと基盤レイアウトとか、
設計してくれる人間が、
「小さく抑えられる」
って言うてくれたんですよ。
糸井:
うれしかったねぇ。
杉野:
ええ。
僕はあの、これぐらいにしないとだめですよ、
って自分で言っていたくせに、
実際にあのあがってきたものを見て、
一番最初に出た言葉が、
「ようやったなぁ〜」
でしたもん(笑)。
こんなちっちゃい中に。
ゲームボーイカラーよりかなり小さいんですよね。
ものすごく基盤が小さくなってます。
よくこの上に、必要な部品が全部載ったなあ、
このサイズで抑えてくれた、って、感動したんです。
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こんなふうにしてゲーム機のデザインって
決められていくんだ。デザイナーだけではなく、
いろんな技術の人が協力して
つくられたものなんだなあ、って、わかってきました。
次回は、いよいよニコラさんが登場。
フランス出身のデザイナー・ニコラさんが
いかにして任天堂の新しいゲーム機を
つくることになったのか、
そのあたりをお聞きしていきますよ。お楽しみに!
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2001-01-19
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