「山下さんが写真のことで悩みがあるとか」 | |
「そうなんですよ、写真をとったばかりに 息子にきらわれたらしいんです」 |
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「どどどうしましょう‥‥」 |
山下さん、なにがあったんですか。 | |
どうやら、息子の写真を撮っていて、 うっとうしがられたらしいんです(笑)。 |
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ええ‥‥。 | |
くわしいことを聞く前に、なんだけど、 「息子さん」を撮ろうとして、ではなく たんに「写真」を撮ろうとして 関心がないのにカメラを向けたことを 嫌がられたのではないですか。 |
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そ、その通りです。 | |
ぼくから説明しますと、 山下が「50ミリの単焦点レンズ」を あらたに購入したんですよ。 1万円以下でいいものが買えたと喜んで、 家に持って帰ったらしいんですね。 しかし、奥さまからは反応がもらえず、 ちょっといじけながら、 ぱしゃぱしゃ撮っていたらしいんです。 |
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「おお、すごいなこれ、 いいぞ、いいぞ」 なんて言いながら‥‥。 でも無反応で。 |
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勝手に買ったからでしょう。 それで、ならば、一人息子の 成長のすがたを撮りたいと、 息子の部屋に押し掛けたそうなんです。 |
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せがれは、マンガを読んでました。 それではあまりに被写体として さびしいではないですか。 |
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いいじゃん、そのままで。 でも山下さんは、 「いいレンズ買ったんだ、 ちょっと撮らせてくれ」と、 息子にギターを持つように指示、 「えーっ‥‥」と しぶしぶ息子はつきあってくれたと。 |
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▲撮影:山下 「ギターをたのしく弾くせがれ」 |
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「たのしく」じゃないでしょう。 どう見ても「しぶしぶ」じゃないですか。 |
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ええ。ところがですね、 せがれの座ってるのがちょっと暗がりで。 「おい、窓際の明るいところに 座り直してくれ」と。 |
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▲撮影:山下 「あかるい場所でにっこり」 |
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「にっこり」じゃないでしょう。 どう見てもいやがってますよ? そしたらどうなったんですか。 |
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ひとこと 「‥‥うぜぇ」 ですよ。 |
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ふむふむ。 | |
それで逆ギレした山下さんは 「もう、いいっ!」と 後ろ手でドアをしめて 出てっちゃったんですって。 気の毒に。 |
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でしょう? | |
息子がだよ。 | |
だって‥‥。 | |
わかりました。 それはね、山下さんが悪いよ(笑)。 やっぱり「写真」が撮りたいだけで、 「息子さん」を撮りたいわけじゃ、 なかったんでしょう? |
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そのときは、新しいレンズに 興奮しておりまして。 |
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ギターを弾くのが好きな息子さんなんですよね。 だったら「こいつ、どの程度、 できるようになったのかな」 とかっていうことのほうが、 写真を撮ることより、 本当は彼にとっても こちらにとっても興味の対象で、 優先のはずなんですよ。 |
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そうですよねえ。 いま冷静になってみれば、よくわかります。 |
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だからね、レンズを買った興奮は ちょっと隠してね、 「ちょっと聴かせてくれよ」って、 そのときにカシャって撮れば、 たぶん問題は起きなかったでしょうね。 「お、お前うまくなったじゃん、けっこう」 ってカシャ、みたいのがOKだと思うんですけど、 「写真撮らせろよ」っていうとね。 |
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いや、もうレンズ買ったことで あたまがいっぱいで。 |
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(笑) | |
どっちが子供かわかんないじゃないですか。 『ちびまる子ちゃん』の たまちゃんのお父さんみたいですね。 娘のたまちゃんを撮りたいのか カメラが好きなだけなのか わからなくなってるお父さん。 |
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マニアの人たちが陥る落とし穴です。 そうして撮った写真には 「本当のこと」が、 たぶん出ちゃうんですよ。 やっぱり一曲聴かせてもらって、 「お、お前うまくなったじゃん」みたいな感じで 「ちょっと撮っといてあげるか、記念に」 みたいなぐらいのほうが、 たぶん向こうも嫌がらないですよね。 |
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カメラはたまたまそこにあったように さりげな〜く、なんとな〜く、 置いておく、っていうことですか。 |
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いや、そこまでは、 演出しないほうがいいですよね。 |
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(笑) | |
つまりこれは、 買いたてゆえの失敗ですね。 ふだんそういうことしてないんだもんね。 |
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してないです。 家のなかでカメラ持って歩くなんてことは まったくありませんでしたから、 せがれにしてみれば、 異様だったのかもしれないですね、それ。 |
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それでも「新しいレンズを買ったんだ」 ということが、 息子さんにちゃんと伝わっていて、 撮られることが面白そうだと 興味を持ってくれていれば、 「撮って、撮って」ってなるけど、 たぶん彼は興味なかったんですね。 新しいレンズに。 |
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ないんですね。なかった。 妻も、なかったですし。 「レンズ買ったんだ」って言ったら、 「‥‥」と無言でして。 |
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(笑) | |
その状況で、何とかこう、 よさをアピールしたかったんです。 「こういうのが撮れるんだよ」っていうのを 妻に見せたい、と。 |
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ああ、なるほどね。 それはやっぱり、 一人で解決したほうがいいですね。 |
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(爆笑) | |
人を巻き込まないで、 一人でこのレンズのよさを、 散歩しながら堪能してくるべきですね。 |
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山下にとって大事なのは家族なので、 撮りたかったんですよね。 きっとね。 それを「うぜぇ」と言われて 傷ついちゃったんですね。 |
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家を飛び出してやりました。 | |
(笑) | |
今の中学生にとってはたぶん 普通の言葉なんで、 必要以上に傷つく必要ないと思いますが。 |
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それは言えている。 でも、山下さんはね、 単焦点買ってよかったと思いますよ。 それはまちがってないからね(笑)。 |
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ありがとうございます。 ちなみにこのゴールデンウィーク、 いっしょに琵琶湖に釣りに行きまして、 こんな写真を撮りました。 |
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▲撮影:山下 「釣り、サイコー!」 |
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‥‥「サイコー!」って 表情には見えませんが。 |
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きっと眠かっただけです。 朝4時にたたきおこして連れて行ったので。 |
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なんか、まだまだ壁が厚そうですね……。 | |
ではこちらはいかがですか。 |
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▲撮影:山下 「たのしいさんぽ」 |
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「撮るなよー」って言ってません? | |
いえ、これは照れているだけです。 せがれは、照れ屋なのです。 |
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そ、そうですか。 じつは、「こどもをじょうずに撮るには?」 という質問は、多数寄せられております。 きょうのこの教訓を胸に、 こんどぜひ「ほぼ日」のパパ部で、 こどもを撮る写真ワークショップを ひらくのはどうでしょうか。 まだちいさいこどものいるものが なんにんか、おりますので。 |
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もちろんです、やりましょう。 | |
うちは、もうちいさくはありませんが、 ぜひ参加させてください。 |
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(ということで、パパ編の取材を待ちながら、 次回は「おいしそう」はどうやって写す? の更新です。 おたのしみに!) |