#016 「おいしそう」はどうやって写す? その3

講師

菅原 「おいしそう! って思うことで
 おいしそうな写真になるんですよ」

司会

シェフ 「まずそう〜、って思うと
 まずそうな写真になるのかも」
山下 「ぼくが“カワイイもの”にたいして
 もっている視線に
 ちかいのかもしれないですね」
シェフ ‥‥あっ!
山下 どうしました。
シェフ いや、「そうか!」と思ったことがあって。
このあいだ、ともだちとごはんを食べたとき
借り物のカメラで撮ってみたんですよ。
そしたら、ぜんぜんおいしそうに
撮れなかったんです。
その理由がわかった気がします。
山下 おいしそうだって思わなかったんですか。
シェフ そんなこともないんですが、
いろんな反省が渦巻きます。
まず、ちゃんとお店の人に
「写真撮ってもいいですか」って聞かずに
一眼レフを出してしまいました。
だめですねぇ〜。
シェフ すみません‥‥!
それが気になっていたので、
思いを込めるも込めないも
関係なく、ぱしゃって
瞬間的に撮りました。
山下 あぁ‥‥。
シェフ しかも、そのとき持っていたのが、
ズームレンズだったんですよ。
菅原 なるほど(笑)。
でもめずらしいね、
いつも単焦点レンズでしょう。
山下 えっ、ふだんは
ズームを使わないんですか?
シェフ はい。ぼくはもともと、
フイルムの一眼レフのときから
単焦点レンズを使っていたので、
体をうごかして寄ったり引いたりして
撮影するクセがついているんです。
でもそのときは
新しいズームレンズを借してもらって、
「あ、便利ー」って思って、
しかもそんな状況でしょう、
テーブルのむこうがわにあるお皿を
ズームで寄って撮ったんですね。
山下 いつもなら、お皿にがぶりよって、
目の前で撮るところを‥‥。
シェフ はい。そうしたら、結果、
ぜんっぜんおいしそうじゃないんです。


▲撮影:シェフ「ほんとうはおいしいアスパラガス」


▲撮影:シェフ「ほんとはおいしいソーセージ」
山下 あぁ‥‥これは‥‥。
シェフ ほんとうはおいしかったのです!
なのに‥‥ああ。
これは、撮るべきではなかったです。
撮らないと決めて、
おいしい印象を思い出にするほうが
ずっとよかったのです。
菅原 (笑)でもまあ、
たしかに難しいですよね。
盛りつけも素朴だから、
こういう料理は、
料理だけを撮ろうとせず、
テーブル全体であるとか、
まわりの雰囲気ごと
写すほうがいいかもしれないですね。
お店の人に許可をもらって、
再挑戦してみてください。
シェフ はい、わかりました‥‥。
さて菅原さん、
読者部員のみなさんの質問をおさらいしつつ、
具体的なアドバイスをもうすこし
いただけたらと思います。
菅原 どうぞ、どうぞ。
シェフ まいります。
「コンパクトデジタルカメラで、
 ほかのお客さんのじゃまにならないよう
 目立たずすばやく
 しかもフラッシュを使わずに撮るのに
 いいカメラは?」
‥‥「目立たずすばやく」のためには、
レンズから対象までの撮影距離が
遠すぎるカメラだと、
立ち上がったりしないといけないから、
マクロ機能がついていれば大丈夫ですよね。
さらに、やや暗めのところでも
撮れるほうがいいわけだから‥‥
菅原 以前お話しした「FinePix」
「ナチュラルモード」で撮るのが
いいかもしれませんね。
シェフ 「フラッシュが使えないときや
 その場の雰囲気を活かした撮影」
ができる機能ですね。
あとは、手ブレをしないように
しっかりホールドして撮るという
とっても基本的なことですけど、
それを練習するといいかもしれないですね。
山下 あ、基本的なことですけど
たしかにそうですね。
シェフ ぼくは暗いところで撮るときは
いっしゅん、息をとめますよ。
手持ちでシャッタースピードが
30分の1秒くらいまでなら
手持ちで撮っちゃいますが、
息をするとちょっと上下しちゃうでしょ。
だから、肘を突いて固定して
脇をしめて、息をとめて、
カメラを顔に押し付けて、
揺れないようにして撮ります。
山下 すごい気迫です。
シェフ 食べものには、つい、ねえ。
次の質問にまいりましょう。
「自然光じゃないところで
 料理をそのままの色で
 かつ美味しそうに撮るのには
 “曇りマーク”がいいんでしょうか」
というものです。
これはホワイトバランスの設定モードに
「曇り」というのがあるんですね。
菅原 うーん、料理を自然に撮るのに
「曇りマーク」というのはちがいますね。
最近のデジタルカメラの上位機種は
ホワイトバランスを
マニュアルで調整することができますから
モニターで確認しながら撮るのがよいでしょうね。
ちょっと時間をかけてもね。
あるいはパソコンに取り込んでから
色味を調整してはいかがでしょうか。
シェフ カメラによって色味にくせがありますからね。
ではもう一問です。
「つくったお菓子を
 生地のメがわかるように
 ぐっと寄って撮りたいのですが
 一眼レフは接写に向いてますか?」
菅原 「マクロレンズ」という
接写の得意なレンズがあって
それを一眼レフに組み合わせると、
かなり寄った写真が撮れますよ。
でも最近はマクロモードがついた
コンパクトデジタルカメラも多いので
そういうものを試してみてもいいでしょうね。
さっき例に出した富士フイルムだと
「FinePix F100fd」という機種は
5センチまで寄ることができます。
シェフ 5センチ! それはいいなあ。じゃあ、
「お料理やお菓子をおいしそうに撮るのに
 向いたカメラがあれば、
 ぜひ教えてください!」
という質問も、
同じ答えになるかもしれませんね。
料理をおいしそうに撮るためのカメラは、
ぼくも知りたくて
いろいろ調べてるんですが
結論が出ないんですよ。
菅原 メーカーによって
色づくりの方向性の違いがありますからね。
シェフ ぼくもいろいろ調べてみて、
また御報告しますー。
山下 ありがとうございました。
(「おいしい写真」編はこれでおしまい。
次回をおたのしみに〜!)
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2008-05-16-FRI