『おひさま』、観てます!  糸井重里とあやちゃんが、 岡田惠和さんのラジオ番組に押しかける。

岡田 糸井さんの日常っていうのは、
いわゆる実務業務みたいなこともあるんですか。
糸井 ありますよ、ありますよ。
会議が多いですけど、原稿もありますし、
お金まわりのことだってありますし、
忙しくしてますよ。
岡田 へぇー。
糸井 プライベートとオフィシャルは
もう重なってますね、完全に。
岡田 ああー、なるほど。
糸井 逆に、重ならないとつらいでしょうね。
その、仕事そのものがたのしくないとね。
岡田 ああ、そうですね。 
いやー、ぼくはもう、まったくの個人なんで、
なんかね、人と共有してる感じが、
あんまり想像できないんですよね。
糸井 わかります、わかります、
大人になってからですよ、このたのしみは。
岡田 ああー。
糸井 若いころは、ひとりでやることのおもしろさを、
ずーっと追求するつもりだったんですけど、
だんだん、チームプレーがいいぞってなってきて。
そうすると、人が育っていくのも
おもしろくなってきたりするし、
自分が出ていくときには、
選手としての動きもできるし。
岡田 うーん、そうですね。
糸井 でも、岡田さんも、ドラマとか抱えてる時期は、
チームがあるじゃないですか。
あれで、チームプレイのおもしろさは
体験できてるかもしれないですね。
岡田 そうですね。
ただ、脚本家っていう仕事は
実際やるのは、ほんとにもう、
机の前でカタカタやる個人作業なんですけど、
ドラマができていくのは
共同作業っていうか、預ける仕事なので。
基本的には、書いたものをお渡しして、
演出家とか、俳優さんたちが、
それに色をつけて、できあがりを見るっていう。
そこの間には、自分は加わらないんですよ。
糸井 ああ、そうですよね。
岡田 だから、最初の視聴者として観るときには、
けっこう不思議な気持ちになって。
あやや そういうもんなんですか。
岡田 はい。
一番最初に観るときにはね。
やっぱり書いたことと、どう違うかが
気になっちゃうんですよ。
どうしても。
あやや あ、違うもんなんですか。
糸井 そりゃそうだろうなぁ。


へぇ、そんなに違うもんなんだ。
ねぇ。おもしろいですよねぇ。


岡田 台本って、やっぱり、実際の長さよりも
ちょっと長い、くらいに書いておいて、
それをテンポよく編集してもらう、
っていうくらいが、ちょうどいいんですね。
でも、ぼくはこの仕事20年ぐらいやってるのに、
いまだに台本が長すぎるんです。
自分でもわかってるんですけど、
どうにもならないんですよ(笑)。
糸井 ああー。
岡田 そんなに長く書いてもね、
テレビは映画と違って、
1秒たりとも、おまけしていただけないので。
糸井 そうか(笑)。
岡田 あと、なんか、自分のバイオリズム的に、
気持ちが乗ってるときは、長いんですよ。
糸井 ああー。じゃあ、もう、今回は。
岡田 そう(笑)、今回とかは、
ものすごいことになっていて。
あやや それはもう、書きながらわかるんですか、
15分で収まらないな、とか。
岡田 はい。
糸井 はははは。
あやや はははは。
岡田 あと、撮る前に、15分のドラマなのに、
「これ、10分オーバーです」
って言われたことがあって。
それはプロとして失格じゃないかな(笑)。
でも、気持ちが乗っちゃうと、
どうしても詰め込んで長くなってしまう。
糸井 でも、そういうときって、
もったいつけて伸ばしてるわけじゃなくて、
入れたいことがはっきりあって
伸ばしてるわけですから。
岡田 そうですねぇ。
糸井 それは、捨てたものも、材料でしょう?
岡田 はい、たぶん、
それがあって捨ててるのと、
最初からないのは‥‥。
糸井 違う。
岡田 たぶん、できあがりは違うんですよ。
当然、それは、編集というプロの方たちの
ものすごい、それこそ、1秒1秒削っていく
みたいなことがあってのことですけど。
削った結果の15分と、
それが最初からない15分は
やっぱり、これが違うんですよね。

うーん、おもしろい。
おもしろいですよねぇ、この話。

岡田 でも、脚本家はやっぱりその
自分が書いたっていう記憶があるから(笑)、
最初は‥‥。
糸井 「なんであれがないんだ」と(笑)。
岡田 そう、「あれ?」っていう感じが(笑)。
そういうところが心配になるから
なかなかほんとに視聴者と
同じ気持ちにはなれないかもしれません。
2回目、3回目と観ていくうちに、
やっと慣れてくるというか。
糸井 「あの部分がないのに、
 それは通じるんだろうか?」
みたいな心配ってありますよね、きっと。
岡田 あります。
でも、それはたぶん、なくても大丈夫なんですよ。
糸井 それは、役者さんもいるし、演出もあるし。
岡田 はい。だから、なくても大丈夫なんですよ。
‥‥っていう経験を、朝ドラの場合には、
ほんとに、半年間、することになる(笑)。
あやや なんか、私は、毎日拝見していて、
このドラマって脚本家のかたと、
出演者のキャストのかたと、
あと、演出されるかた、編集のかたとかが、
みんな同じ風景を完成形としてイメージしてて
そこになにか、ブレがないような、
そういう印象を受けていたので、
お話しをうかがって、驚きました。
そういう感じなんですねぇ。
岡田 そうですねぇ。
だから、最初の違和感がすごく、
逆に言うと、好きでやってるところはありますね。
糸井 ご本人だけがそれを感じられるんですね。
岡田 そうです。
それはある意味、贅沢な違和感。
糸井 特別席ですね。
岡田 はい。
だから、あのー、
これはまだまだ放送は続くわけですけど、
なんていうか、たぶん、脚本家としては、
すごく贅沢な仕事なんだなぁという感じがします。
糸井 なるほどね。
岡田 なんか、個人の癖として、
言うべきテーマがそのシーンにあるときに、
野球で言うと、ツースリーまで投げたいんですよ。
糸井 ああ、いっぱい投げたいのね。
岡田 そうなんです。
ツースリーまで投げられるんだから、
3球勝負じゃなくて、
ボールは3つ使いたいし、
できれば1、2球ファール打ってくんないかな、
ぐらいの気持ちなんです。


はいはいはいはい、そういうことね。
しまった、野球ネタだ‥‥。
ツースリーになっちゃうのと、
ツースリーにするのは
もう、ぜんぜん違うからね。
あやちゃん、わかってる?
ああ、ええ、はいはい。


糸井 それは、もう天性の脚本家だね。
岡田 そうなんですかね。
糸井 あの、ほら、松坂大輔投手が
甲子園で延長17回を投げて‥‥。
岡田 ああ、ありましたね。


いいたとえだね、糸井さん!
1998年夏の甲子園、準々決勝、
横浜高校対PL学園!
うるさい、うるさい。


糸井 あの試合のあとに、
彼が何を言ったかっていうと、
「終わらなければいいと思った」。
岡田 ああー、それはすごいわかります。
あやや すごいですね。
糸井 ほんとうにそう思ってるんですよね。
そうなったときっていうのが、
やっぱり一番たのしいですよね。
岡田 そうですね。
だから、ほんとに、あるシーンを書いてて、
「いくらでもいけるんだけどなぁ‥‥」
っていう感じのときは、あります。
あやや うわー。
糸井 たまんねっす(笑)。
岡田 そういう、いい感じのときが、
今回すごく多くて。
糸井 ああー。


うーん、そりゃあ、
いいドラマになるわけだね。
そうなんですよ、ほんと、いいんです。
いまからでも、ぜひ、観てください。


岡田 あとは、ほんとに、
奥様(樋口可南子さん)の
おかげもございまして(笑)。
糸井 奥様、たのしそうですよ(笑)。
岡田 ほんとですか。
糸井 ちょっとくたびれてますけど、
あんなにたのしそうにしてるっていうのは、
なかなかないですよ。
前のめりに行ってますよ。スタジオに。
岡田 ああ、ほんとですか。
いやー、ありがたいことです。
糸井 だから、『おひさま』はすごいです。
あの人に火を点けたんですから。
岡田 ああそうですか。
糸井 うん。
岡田 いやいやありがたいです。
ドラマはまだまだ続きますので、
これからも、ぜひたのしんでいただけたらと
思っております。
糸井 観ますよー。
あやや 観ます!
糸井 いつまでやるんだっけ。
朝ドラって何月まで?
岡田 9月いっぱいですけど
10月1日が最終回になります。
糸井 おおー。
あやや 終わらないでほしいなー。
岡田 さて、そろそろ、
お別れの時間が近づいてきました。
糸井さん、なんか、お知らせとか告知とか‥‥。
糸井 ‥‥とくには。
岡田 松本さん、今日の感想などは。
あやや あははははは。
いやもう、あっという間で、もう、ほんとに。
あははははは!


お、最後に緊張がとけて
テンションがおかしくなってる。
そりゃそうですよ!
あははははは!


岡田 というわけで。
糸井 どうもありがとうございました。
あやや ありがとうございましたー。
あははははは!
(おしまい)





2011-08-22-MON