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糸井 |
赤瀬川さんが「お金をばら撒きながら歩いてた」
‥‥って話を、(南)伸坊から聞いたんですよ。
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赤瀬川 |
あれね。
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糸井 |
赤瀬川さんが「こんなもの、こんなもの」って
お金をばら撒きながら歩いてた、
ただ「銀色のお金」は、うまくよけてたって。
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赤瀬川 |
細かいところは、ちょっと忘れたけどなぁ。
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糸井 |
ま、「よけてた」のあたりは
伸坊がネタにしてる可能性が高いんですけど(笑)。
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赤瀬川 |
でも、そのときの感覚はすごく覚えててね。
あの、安部慎一っているでしょ、漫画家の。
それと鈴木翁二と、それから南と‥‥。
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糸井 |
みなさん、当時、
本意か不本意か「貧乏」を売りにしていた
人たちですね(笑)。
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赤瀬川 |
そう、そういう金のない連中が集まって、
阿佐ヶ谷で呑んでたんです。
で、気づいたら、
安部慎一のところで、寝てたんですよ。
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糸井 |
うん、うん。
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赤瀬川 |
前の晩のこと、ぜんぜん覚えてなかったんだけど、
「赤瀬川さん、お金をばら撒きながら
歩いてたんだよ」って言われて、思い出した。
なんか、別のものを探してたんだと思うんだけど
ポケットを探ったら、お金が出てきたんで、
よどみなく、躊躇なく、ポイポイって捨ててたの。
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糸井 |
はぁー‥‥「貧乏」なのに。
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赤瀬川 |
あの感覚は、いまでも覚えてますね。
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糸井 |
なるほど、なるほど‥‥。じつはぼくも、
大学生1年の18歳のとき、1967年ですけど、
同じようなことをやったことがあるんです。
だから、その「お金を捨てる感覚」については、
ぼくもちょっと知ってるんです。
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赤瀬川 |
糸井さんも、やったんだ。
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糸井 |
飯田橋の法政大学の前にお堀があるんですけど、
真冬、そこに氷が張ってたんです。
で、その凍った水面に向けて石を投げると、
「チンチンチンチンチンッ!」って。
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赤瀬川 |
ああ、氷の上をね。
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糸井 |
それが、おもしろくて、おもしろくて‥‥。
でも、えんえんやってたら、
手ごろな石が、なくなっちゃったんですよ。
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赤瀬川 |
それで?
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糸井 |
ぼくは、その遊びを、
もっともっと、やっていたかったんです。
それで‥‥もう「エイッ!」という感じで、
はじめは5円玉だったかな?
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赤瀬川 |
どんな気分でした?
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糸井 |
もう、天からスポットライト当てられてるような。
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赤瀬川 |
わかるな、その感じ。
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糸井 |
でしょう?
お金を投げはじめてからは
その「チンチンチンチンチンッ!」って遊びを
本当にやりたいのかさえ、
わかんなくなってましたね、興奮してて。
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赤瀬川 |
事件。
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糸井 |
事件です。この感覚、オレ、一生覚えてそうだなって。
で、後に、赤瀬川さんのばら撒き事件を聞いたんです。
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赤瀬川 |
糸井さんも、ねぇ‥‥。
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糸井 |
最初は5円、で、次に10円、
最後に50円までいっちゃたところで、
バクチで「すっからかん」になるみたいにして、
やめたんですけど。
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赤瀬川 |
ああ、戻ってこないしね、もうねぇ‥‥(笑)。
でも、気持ちいいでしょうね、うん。
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糸井 |
赤瀬川さんも、酔ってたけど感覚は覚えてたんだ。
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赤瀬川 |
うん、覚えてますよ、あの感じは‥‥。
で、オマケのような話をするとね、
その場にいっしょにいたキョウコちゃんって女性が
ぼくがポイポイばら撒いてたお金を、
あとから、一生懸命、拾ってたんだって。
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糸井 |
あはははは、そうですか(笑)。
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赤瀬川 |
南によるとね。
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糸井 |
赤瀬川さんがばら撒き、キョウコちゃんが拾い。
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赤瀬川 |
その部分については、
覚えてるような、覚えてないような感じだけど。
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糸井 |
でも、その一部始終を「見てた」伸坊っていうのも
「伸坊らしい」ですよねえ。
止めもしないし、すすめるわけでもないという。
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赤瀬川 |
南はね、明治時代の成金がやった話を確かめようと、
風呂場で一万円を燃やしてみたんじゃないかな?
それでも、とくに、なんにも感じなかったと思うよ。
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糸井 |
ああ、お金持ちが、暗いところで明かりをとるために
お札に火をつけた‥‥みたいな話ですね。
でも、たしかにそうかもしれない、伸坊は(笑)。
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赤瀬川 |
だよねぇ(笑)。
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糸井 |
ぼく、あとひとつ、あるんですよ。
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赤瀬川 |
ほう。
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糸井 |
だいぶ、むかしのことなんで
自分からやめたのか、人に止められたのか、
記憶があいまいなんですけど、
「ヤギにお札を食べさせてる写真」を撮って
雑誌の表紙にしようとしたことが。
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赤瀬川 |
ああ‥‥やめたの?
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糸井 |
ええ、結局は、やってない‥‥と思います。
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赤瀬川 |
それって、もう仕事してるころの話?
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糸井 |
そうです、そうです。
つまり、そのときの気持ちも、どこか、その‥‥
「お金を捨ててみたい」
「お札を燃やしてみたい」という気持ちと
同じだと思うんですよ。
そしてそれらは、すごく「性」に似てるんです。
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赤瀬川 |
性‥‥。
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糸井 |
性、セックス。
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赤瀬川 |
うん。
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糸井 |
その「やってみたい」の距離感が。
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赤瀬川 |
それは‥‥わかるなぁ。すごく、感じますね。
だから、ぼくがいろいろ描いたりして、
事件になっちゃったのも、
結局、性の話に似てるんだよなぁ‥‥。
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糸井 |
描いたりして、事件になっちゃって‥‥はい(笑)。
じゃあ、そのお話を、うかがいましょうか。
<つづきます!> |